あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

ハイウ_イオアシス

猛暑をくぐり抜けて飛び込む図書館は、さながら砂漠にこんこんと湧く泉みたい。暑すぎも寒すぎもしないちょうどいい冷房、宿題をこなす学生、雑誌をめくる老人、絵本を選ぶ夏休みの子どもとその親。約束された安寧。

「文にあたる」に出てきた「すべて真夜中の恋人たち」を読もうとしたら貸出中で、近くにあった「夏物語」を借りた。前々から気になっていた。夏の真っ盛りに読むにはいいだろう。キリスト教についてわかりやすく噛み砕いて解説してくれる本が読みたいと思い、その手のものも適当に選ぶ。学生時代、キリスト教の講義を受けてはいたけれど、いきなり聖書を読んだりするばかりで、肝心のキリスト教とはなんぞやという大枠の部分は大して理解していなかった。ラインナップがヘビーすぎるかと思い、エッセイを追加してバランスをとる。ぶ厚かったり、考える必要のあるヘビーな本を読むときは、チェイサーとして軽めのエッセイか短編集を同時に読み進めるのが好き。

 

こないだ義実家に1泊した。私は義実家のことがめちゃくちゃ好きである。自分の実家に帰省するときの、楽しみだけれど気が重いような憂鬱はどこにもない。ひねくれにひねくれた夫がここで生まれ育ったとは信じがたいほど、絵に描いたように暖かい。善良でやさしく、うれしいお節介は焼いてくれるけれど、これ以上踏み込まないというポイントはきちんとわかっている。

夫に似て明るくおしゃべり好きな義母とは、センスがとんでもなく合う。食卓を囲めば私の大好きな色合いをしたブルーグレーの皿が並び、非常に好みの質感をした白い小皿が出てきて、ココナッツミルクのカレーやパクチーのサラダが登場する。義母が使っていたマリメッコのマグカップなんて、私が愛用している化粧ポーチと全く同じパターン(わりとマイナーな色味)だった。香りつきのミーファの日焼け止めを買おうか迷っていたら、よかったら使ってと言って私が最も気になっていたマグノリアのをくれた。ミーファのミの字も出していないのに。来年フェスに行く約束もした。

止まらない義母のおしゃべりをニコニコ受け止める穏やかな義父は、どこか私に性格が似ている。ふたりきりになると会話が持たなくてお互いソワソワするけれど、いたずらっぽくアイスやポテチを勧めてくれたりする。仲良くなりたい後輩にこっそりお菓子をあげる私と同じ手法の使い手だ。夫がトイレに行った隙にパルムをふたりで食べていたら驚かれた。

 

そういえば高速道路で、看板に印字された「ハイウェイオアシス」の「ェ」が消えかかり、「_(アンダーバー)」のようになっていた。ハイウ_イオアシス。なにかのIDに使えそうな文字列が気に入り、胸の中で反芻しながら外の景色を見ていた。