あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

カニが死んでいる

通勤途中、どこからかやってきたサワガニがアスファルトの上で死んでいた。土地柄、小さなカニが干からびたり潰れたりして道で野垂れ死んでいるところをたまに見かけるけれど、故郷の海を離れてアスファルトで死ぬカニはどんな気持ちだったろうと妙にはてしない気分になる。

 

 

 

金髪をなびかせ、ニットのワンピースと赤いヒールを綺麗に着こなしたお客様を接客した。すらりと背が高いその人を、遠目ではヨーロッパ系の女性だろうかと思ったが、私に質問を投げかける声は日本人男性のそれだった。綺麗なお姉さんかと思ったら綺麗なお兄さんだったんだ、と思ってしまって、そんな自分がものすごく嫌になった。どっちでもいいじゃんそんなの。ただ「綺麗な人」でいいはずなのになんでそんなことを思ってしまったんだろう。猛烈に恥ずかしくなった。

 

そもそもお客様がヨーロッパ系の女性だったところで日本人男性だったところで、私には何の関係もないのに。元々はどうだったとか、本当はどうだとか、どうでもいいのに。国籍とか性別とか、興味本位で推し量ってしまおうとするのはやめようと思った。

 

目の前のその人がどうありたいか、というのをきちんと見たい。SNSで見せたい綺麗な部分しか見せないように、見ている人からは本人の発信したものが全てであるように。バックグラウンドを邪推せず、その人がこう見せたいと思っている姿だけを受け止めたい。そう思った。

 

 

 

インスタの広告に出てきた「自転車屋さんの高橋くん」を何気なく読んで、どハマりして初めて電子書籍の漫画を買った。単なる胸キュンの恋愛ものではなくて、もっと本質的な深いところを描いている気がする。ヤンキーっぽい見た目の遼平くん(=高橋くん)が話してみると優しくて惹かれていく、というところもキュンとして堪らないのだけど、それよりも周りに迷惑をかけないようにひたすら我慢して生きてきたともちゃんの姿が自分に重なりすぎて、心の奥深くまで突き刺さった。

 

親に怒られたくなくて、職場で迷惑をかけたくなくて、気に入って好いてもらえるいい子になりたくて、我慢して我慢して何も言いたいことを言えなくなっているともちゃんの根深いかなしさと、それを優しく解きほぐしてくれる遼平くんの無骨な優しさ。気付いたらべしょべしょに泣きながら最新刊まで購入していた。親にうまく愛されずに育ったともちゃんもそうだし、ほかにもいろんな形で親とうまくいっていない人たちやLGBTQの人たちが出てきて、どれもわかって苦しくなると同時に、登場人物たちが幸せに向かっていくにつれて自分まで救われた気になる。

 

久々にすごくよいものを見た。ヤリチンのくだりも共感できすぎてつらかった。何度も読み返しているけどそこだけちょっとつらくて読めない。

 

 

 

そんな雑然とした近況報告。

 

結婚準備記

25歳、第一次結婚ラッシュの波が静かに押し寄せてくるのを感じている。かくいう私も結婚準備をすすめている真っ最中。

まだ同い年で結婚した友達がひとりしかおらず、婚約してから何をすればいいのかのロールモデルが身近にいない。ゼクシィとネットに頼りながら手探りで結婚準備を進めているが、まだ序の口だというのにあまりにも大変で、自分の備忘録とだれかの参考になればと思って書き留めておく。

 

気が向けば続きも書くかもしれない。ひとまず今回はプロポーズについて、指輪について、式場見学および両家顔合わせ(このふたつはまだ実施していない)の準備について、それから花嫁美容なるものについて。

 

 

 

 

プロポーズ

婚約をしたのは8月半ば。結婚の話はかなり前から進めていて、「プロポーズ時の婚約指輪の有無」についても話し合った。ここからしてまず大変だった。

指輪を差し出してのプロポーズにふたりとも憧れはあったものの、実際サプライズで指輪を渡すのはどうなのか。指輪の納期は間に合うのか。サイズはどうするのか。デザインが気に入らなかったらどうするのか。指輪はあとで買うとすると、代わりの記念品は何にするか、などなど。私たちはロマンよりも現実派なので、どうすれば最も満足することができるのかをとことん議論した。

最終的には「指輪はプロポーズ後に一緒に買いに行く。プロポーズのときは代わりに花束を贈り、それをプリザーブドフラワーにする」という意見でまとまった。私はサプライズも好きだが、それ以上に気に入らないものを身につけたくないというこだわりが強く、ここはロマンを差し置いても譲れないポイントだと話すうちにわかった。

 

プロポーズは、友達の結婚式のために帰省していた北海道で受けた。結婚式帰りの私と、ショッピング(このときに花束を買っていた)をしていた彼氏とで合流する。彼氏はデカい紙袋を提げていて、もしかして?と一瞬思ったが「いいズボン買った!」と嬉しそうにしていて(もちろん嘘)あっさり騙された。

しばらく普通に過ごしたあと、かつて私が告白の返事をした場所でプロポーズされた。ここでプロポーズをしたくてわざわざ遠方でおこなったということだった。持ち歩いて弱っていた花束を復活させるため、2リットルの水とカッターを買う。ホテルに帰ってすぐ、半分に切ったペットボトルに、ラッピングを解いて茎を斜めにカットした花を生けた。

翌朝すぐに花屋へ行く。花の販売に加えてプリザーブドフラワーの受注も請け負っている花屋を事前に調べ、そこで花束を買ったらしい。包み直した花束を持ち込んでプリザーブドフラワーにしてもらうよう注文する。花に合うフレームを選び、プラスする花などを追加で選んで、自宅に郵送を頼んだ。納期は2、3ヶ月らしく、現在はまだ届いていない。

 

プロポーズひとつとってもサプライズされたい/されたくない、指輪がほしい/あとで買いたい/全くいらない、などの意思確認をおこない、段取りも考える必要がある。私は完璧にすり合わせができてこの方式で大満足だけど、サプライズで進めてほしい人は「そんなのそっちが決めてよ!」と思いそうだし、これは完全に人による。私たちのケースは少し特殊だと思うが、同じように合理的を好む人の参考になればいい。

 

 

 

指輪

私たちは北海道で出会って付き合い始めていて、共通の友人も多い。現在住んでいるところは仕事の都合で来た特に縁のない土地だから、式を挙げるなら北海道がよかった。ゼクシィにはその地域ごとのバージョンが売っており、北海道版なら北海道の式場が掲載されていると知って、空港の本屋でゼクシィを入手した(ネットでも買えるが早くほしかった)。

ゼクシィを読み、とりあえず指輪を入手するところから着手するべきだとわかった。たくさん載っていた指輪の写真をふたりで見て、こういうデザインが好きだとか、これは嫌いだとかのすり合わせをする。シンプルで王道だけど遊び心もある指輪がいいと方向性を決め、さらに予算で絞って見学したいショップを挙げていった。

この段階で、絶対にここで買いたい!という店は決まっていたのだが、試着したらなんか違うとなるのを避けるために2、3店舗巡ることにした。ゼクシィで事前にキャンペーンにエントリーしておくと商品券や特典を受けられるのでこれも大事。しかしゼクシィ経由で資料請求をするとブライダル関連の勧誘電話が止まらなくなるらしく、本命のショップにはホームページの問い合わせフォームから連絡してカタログを送ってもらった。

 

スケジュールの都合上、1日に2店舗の見学予約をした。ダイヤモンドを売りにしている店舗を最初に、本命を最後に見学したのはものすごくよかった。

最初に見学したダイヤモンドが売りの店舗では、カラット数の違いや、黄みの多いダイヤと白が強いダイヤとの違い、傷のより少ないダイヤとやや傷のあるダイヤの違いをとても丁寧に比較して見せてもらえた。

傷の少なさでランクが変わり、伴って値段も変わるのだけど、これは正直肉眼では見分けがつかない。見えないとしても質の高いダイヤを選ぶ人もいるだろうが、私は肉眼でわからないなら安いほうでいいやと思った。あとは黄みのないほうが好みで、日常使いをするなら台座が低くてカラットはあまり大きくないほうがいいかな、と考える。

 

指輪本体のデザインはS字やV字にカーブしたものがかわいいと思っていたのだが、試着するとあまり似合わず、私の指にはストレートタイプがいいと判明する。パーソナルハンド診断をしてくれるショップもあるので、そういうところに行ってもよかったかもしれない。

大体イメージは固まったものの、これ!という指輪は見つからなくて、本命の店に賭けることにした。

 

見学時間は1時間程度が目安だとネットで見て、1時間後に次の店舗を予約していたけれど、1時間では終わりそうになくてかなり巻いてもらったし、次の店には遅れる旨を連絡して遅刻して行った。あと1店舗目では飲み物が出てきて、直前にカフェでたらふくジュースを飲んだことをちょっと後悔した。

 

 

本命の2軒目。やはりドンピシャに好みで、ここで買おうとすぐ決めた。指輪の色をプラチナかホワイトゴールドのどちらにするかで悩んだぐらい。

ダイヤのランクを決めるとき、特にサンプルや写真の提示などはなく、ランクごとの値段表のみを見せられてどれにするかを問われた。さっきの店で比較して見ていたから躊躇なく選べたが、何も知らなかったらよくわからず適当に買わざるを得なかったと思う。だから絶対最初にダイヤモンドが売りの店舗を見た方がいい。絶対。

注文時に刻印も決めるので、凝った文章を刻みたい人は事前に考えておいたほうがいい。私は婚約指輪にプロポーズの日付、結婚指輪に入籍の年月日を入れると決めていた。今って結婚何年目だっけ?というのを忘れる自信があるから……。

9月頭に購入し、届くのは12月の予定である。楽しみ。

 

 

 

式場見学&両家顔合わせの準備

リアルタイムで準備中。式場見学(ブライダルフェアともいう)は今月と来月に1軒ずつ予約した。

指輪は私が主導でほぼすべて決めたためサクサク進んだが、彼氏と互いの両親の意見も必要になってくるこのあたりから揉め始めた。意見をすり合わせて妥協点を探る作業が最も大変だった。

 

式場は主に4種類ある。費用が高いとされる順に、ゲストハウス、ホテル、専門式場、レストラン。ゲストハウスは貸切ができるけど高すぎるので却下。格式の高さよりもカジュアルさを重視したかったからホテルも却下。専門式場とレストランの2つに絞り、とりあえずイメージを掴むために近場の式場を見てみようとなった。

私も彼氏も結婚式にそれぞれ1回しか出席したことがなく、イメージも好みも固まっていない。雰囲気はナチュラル系がいいのかスタイリッシュ系がいいのか、料理のランクは重視するか、どのくらいの規模の式を挙げると見積もりはいくらになるのか。タイプの違う式場を比較してそのあたりを見ておきたい。

 

彼氏はホワイトとグリーンを基調としたナチュラルでシンプルな感じが好きで、私はシックでスタイリッシュな系統が好き。ナチュラルな雰囲気の専門式場と、スタイリッシュなレストランをそれぞれ予約することに決めたはいいものの、1ヶ月以内の土日の試食会つきのフェアは全然予約が取れない。当たり前だけどつらい。

ウェブ予約をしたあと、折り返しの電話がかかってくるのが苦痛だった。私は吃音もちで、初対面の人と電話をするときは恐ろしくどもってしまう。自分の名前すらどもってまともに言えないのでものすごく不審がられる。だから本当に仕方ないんだけど電話がめちゃくちゃ嫌だった。仕方ないんだけど!メールがいい!

折り返しの電話でストレートに予約が取れることはなくて、大抵はその日は満席だからと別日程を打診された。直近の人気の日程で申し込んでいたからこれは当たり前だけど、最初は丁寧だったのに私たちが見学を特に急いでいないとわかると高圧的にキャンセルしてくる人に当たったりもした。

仕事中で電話に出られなかったとき、あとで折り返さなきゃ…嫌だな……と思っていたらメールで連絡をくれた式場があり、すごく助かった。ぜんぶメールでやり取りしたい。担当のかたが丁寧だったのでレストランはそこを見学することにした。

 

 

式場のことを考えつつ、両家顔合わせの予定も組む。お互いの実家に挨拶したときに前もって開催場所と、結納の希望についても聞いておいていた。結納はなし。式を私の地元で行う兼ね合いで、両家顔合わせは彼氏の地元。食事会の費用は私たち持ちで、交通費は各自。ここまではトントン拍子に決まった。

入籍から逆算した日程を打診したけれど、土日祝しか休めない人たちと、シフト制で土日祝は忙しくて休みを取りづらい人たちで綺麗に分かれていて、ここだ!という日程はひとつしかなかった。

しかし単身赴任をしている私の父が、飛行機の便がなさすぎて物理的に来られない事態が発生した。母だけ出席して父はオンラインにするパターンなども考えたけれど、最終的には別の空港で降りてそこから新幹線で来てもらうことにした。

私の父は言葉足らずすぎて母相手じゃないとコミュニケーションが成り立たないので、母に翻訳してもらわなければならず(そんなことある?)このへんの調整がほんとうに大変だった。彼氏のすばらしいご両親とこんな会話が通じないうちの親を会わせていいのか……?とマリッジブルーが顔を出しかける。

 

でもまだ日程を決めただけで、ここから店の手配、互いの両親の服装のすり合わせや手土産の有無の確認、当日の流れを決めたり、必要ならば顔合わせのしおりや婚姻届や記念品も用意しなければならない。

指輪やお返しの品の披露などもあるかと思う。指輪のお返しとしてよい包丁がほしいと言われたけど、もちろん包丁を持ち歩くわけにはいかない。だとしたら写真でも見せる?包丁の写真を……?と現在進行形で苦悩している。

 

 

 

花嫁美容について

花嫁美容なるものがある。式の前にシェービングをしたりエステに通ったり、つまりはウエディングドレスを綺麗に着るために理想の自分になっておこうという趣旨だと私は解釈した。

式までまだ1年はある。今から始めれば間に合うかなと思って、筋トレ、脱毛、肌質と髪質の改善に取り組んでいる。既にサボってるけど。

 

胃下垂ゆえに腹筋をしないと下腹が出てしまうし、加齢で代謝が悪くなって肉がついてきた。体重を落とすダイエットとしてではなく、体を引き締める意味合いで筋トレをすることにした。YouTubeで初心者向けの二の腕、腹筋、胸筋に効くトレーニングをしている。がんばったら二の腕も腹も引き締まったけど、サボってたら戻った。継続を目標にがんばる。姿勢をよくするために巻き肩トレーニングも取り入れたい。

 

脱毛用にケノンを買った。田舎で近くに店舗がないから。それと剛毛で生えるスピードも早くて、店じゃ間に合わない。1度脇に照射しただけで生えるスピードが明らかに遅くなったが、これも三日坊主である。ドレス映えするツルツルの背中を手に入れるためにがんばる。

 

ツルツルの背中になるためには背中ニキビも消さねばならない。オルビスでボディ用のニキビケアができるボディソープと化粧水を買った。心なしか背中ニキビのできる頻度が減ってきたように思う。

顔のニキビにもオルビスのクリアシリーズを使っているが、まだできることにはできるので、肌荒れがひどい時用にETVOSのクリアスポッツとオルフェスのセンシティブマスクを用意した。頑固なクマとできかけのほうれい線にはなめらか本舗のアイクリームを塗っている。

 

前撮りなんかで手元を撮ることもあるかと思う。指輪屋さんでもらった来店特典のネイルオイルと、エイジングケアに効くというアベンヌの薬用ハンドクリームも塗ってマッサージをしている。年齢は手元に出ると言うし。

 

現段階で既に効果が出ているのは髪質の改善である。髪をきれいに伸ばすために、いまいちだったシャンプーを変えたら別人のようにサラッとした。ドライヤーもパナソニックのものに買い替え、AVEDAのパドルブラシとオルビスのヘアミルクを導入した。もはや何が効いてるのかわからないけど、史上最高に髪の調子がいい。

 

 

 

このように色々と結婚準備をしており、とても大変ではあるのだけど、こんなの本当にまだ序の口だということは知っている。式場やドレスや招待客を決め、ペーパーアイテムやムービーや引き出物を用意し……となってからのほうが格段に大変だと思う。そうなったらまたここで泣きつかせてください。

 

3万円の羽を買う

くすんだパステルブルーの自転車を買った。こういう色の自転車があればいいな、と思っていたドンピシャの色合いに巡り会って、即決で連れ帰ることにする。自転車通学をしていた高校生の頃、まったく趣味ではないおさがりの赤黒いチャリに乗っていたけれど、3年間ついに愛着が湧くことはなかった。ほんとうは水色がいいのに、なんだって全然好みじゃない赤黒いチャリに……とずっと憂いていた高校生の私に、自分で買ったすばらしい水色の自転車を見せびらかしたい。これで休日に喫茶店へ行くハードルがぐっと下がるし、行動範囲も広がる。引っ越してきて1年半も経っているのに今さら自転車を導入したのは、こないだ不審者に遭ったから。助手席に乗れと言われただけで無事に逃げ切れたけど、もし力ずくで乗せられて誘拐されていたらと思うとおそろしく、ひとりで外を歩くのがたまらなく怖くなった。金もないのに自転車なんか買って、せっかくの可愛いバッグに無機質な防犯ブザーなんかぶら下げなきゃいけなくなって腹が立ってしょうがないけど、クソジジイのために金はたいたなんて思いたくないから、休みのたびに文庫本を載せて少し遠くの喫茶店まで漕いでいこう。くすみパステルブルーの私の羽。

青いストロー

私にとっては大きな仕事の区切りがようやくついて、ご褒美にコメダへ行くことにする。このところ、仕事中はパソコンにかぶりつき、帰ってからは22時に寝支度を終えられるように計画的に家事をこなす日々で、充実はしても疲れは溜まる一方であった。私は自分のご機嫌の取り方をきちんと心得ている。好きな音楽を聴く、たくさん寝る、湯船に浸かる、本を読む、映画を観る、それでもだめなら喫茶店にゆっくり腰を落ち着けてぼーっと過ごす。仕事が終わる時間にはこのあたりの喫茶店は閉まっているから、それと飲み物のうえに乗っかっているあのソフトクリームを食べたかったから、コメダをめざす。いつもはソフトクリーム目当てでクリームソーダジェリコ、あるいはミニシロノワールを頼む。今回は注文したことがなく、かつソフトクリームが乗っかったものを吟味して、クリームオーレに決めた。タイトルに惹かれてなんとなく買った、吉本ばななの「白河夜船」が思いのほか好みどストライクで、一瞬自分がコメダの赤い椅子に座っていることを忘れた。私は文章が淀みなく美しく、少し寂しいような、天気でいえば曇り空か小雨みたいな雰囲気の小説が好き。いま取り組んでいたのも、少なかれ文章を扱う仕事で、もっとこんなふうに丁寧に言葉を操りたいと思って心を引き締めた。表題作に、若くして自死を選んだ主人公の友人が出てきて、大切な友達のことを思い出した。30歳までには死にたいとずっと言い続けている彼女が、風が吹くようにいついなくなってしまうともわからなくて、怖くて、でも止める術がないし止めるべきでもないのだと思って、苦しい。そんなことを、もやもやと。笑っちゃうぐらいソフトクリームがたっぷり載ったクリームオーレはやっぱり美味しくて、豆菓子の塩味とこのうえなく合った。マックの月見パイをお土産に持ち帰るつもりで、何か食べたいものがあるか彼氏に聞いたらてりやきバーガーをリクエストされ、結局夕飯ごとマックになった。19時頃、薄暗くなりはじめた帰り道の空気は湿っていて、大量の高校生たちとすれ違う。なにか熱唱しながらゆったり自転車を漕ぐ男子高校生、壁ドンについて否定的に話し合う男子高校生たち、仲睦まじい女子高生三人組が焼肉屋さんにおそるおそる入っていく瞬間を目の当たりにして、なんかいいなあ、と思った。仕事終わりの彼氏と駅で合流して、小ぶりなピンクのバラを買って帰った。左手に握りしめていたマックの紙袋はまだ少しあたたかい。

引力

うわっ、この人、私のこと好きになりそう。

今の彼氏と初めて会った瞬間、ほんとうにそう思った。「私、この人のこと好きになるかも♡」ではなくて。「この人みたいな系列の顔の男、大抵私のこと好きになるんだよな……」と一ミリも好かれてないのにげんなりすらしてしまった。ごめん。でも実際そうなったから許してほしい。

 

新しく入ったバイト先の先輩だった彼は、某大王バンドのベーシストにものすごく似ていた。私は当時、なぜか決まって某ベーシストに似た男にばかり好かれることが続き、相当げんなりしていた。中肉中背だがややガッシリした体つきをしており、一重で、賢くてプライドも高い。そういう人ばかりを引き寄せる星の元に生まれた私は、その全てに当てはまる先輩のことを勝手に警戒していた。

しかし当時はお互い相手がいたりいなかったりしたので、何か発展するわけでもなく、そんなことはすぐに忘れた。なーんだ、さすがに違うよね!ガハハ!!と余裕ぶっこいてたら、二年後、突然サシ飲みに誘われた。

 

大人数ですら遊んだことのない私を、なぜいきなりサシ飲みに誘ったのか。そんなのもう、そういうことなんじゃないの?なんとも思ってない後輩と飲むのに、わざわざ小洒落たバルみたいなところ予約するか?喫煙席でも平気かどうか聞くか??

とは思ったが、会っても恋愛にまつわる話は一切せず、「いつから彼氏いないの?笑」みたいな探りを入れられることもなかった。ほんとうにただ小洒落た店で雑談をしただけで、なーんにもなかった。また誘われて飲みに出掛けたり、喫茶店でパフェを食べたりしたが、何もなかった。特に仲良しというわけでもなく、ただご飯に行くだけの先輩と後輩、という感じ。

 

この時点で冬。もうすぐで私は学部を、先輩は院を卒業する予定で、かつ先輩は遠方への就職が既に決まっていた。もし仮に先輩が私のことを好きだったとして、付き合うつもりはないのかもな、と思った。引っ越す前に気になる後輩と記念にデートしたいだけなのかも。もしくは、付き合うつもりはないけど最後にワンチャン狙ってるのかもしれない。あるいは好意すらなくて、フットワークが軽いから飲みたい時にちょうどよく呼び出せる後輩ポジションなのかも。

 

ちなみに私は先輩のこと、人として好きだった。愛くるしい人だと思っていたし、引っ越してもう会えなくなるのもちょっと寂しい。でも恋愛感情があるかというとピンとこない。ぐるぐる悩むのはやめて、ただ記念にデートしたいだけならそれでいいし、ワンチャン打診されたらきっぱり断るし、もし万が一にも告白されることがあったらそれはその時考えればいいじゃんと思うことにした。

 

忘れもしない二月のこと、私たちはクラフトビールを飲みに出掛けた。いつもはそんなことなかったのに、私がトイレへ行っている隙に先輩が会計を済ませていて、あ、今日なんかある、と思った。告白なのかワンチャンなのか。わかんないけど仮に告白されたとして、遠距離恋愛をする強い覚悟がないようならきっぱり断ろう。そう決めた。

 

帰り道、大粒の雪が降りしきるなかで、付き合ってほしいと先輩は言った。遠距離恋愛についてどう考えてますか、てか私のどこが好きなんですか、そもそもいつから好きだったんですか、と矢継ぎ早に圧迫面接ばりの質問を浴びせた。返答に少しでも引っかかったら断ろうと思っていたけれど、すべてにしっかりと返されて面食らってしまった。クラフトビールでくらくら酔った頭の芯がすうっと冷める、どころか、ぐらぐらと煮え立つのを感じた。

 

お互いに失敗したことのある遠距離恋愛をうまくいかせる自信もなく、先輩のことを恋愛対象として好きになれるかどうかもわからなくて、散々悩んだ。悩んで悩んで悩み抜いて、考えたところでわからなかったけど、こんなにまっすぐ愛してくれそうな人は地球上にそう何人もいないだろうと思った。先輩だってかつて深く傷ついて、リスクも山ほどあるのに、それでも差し伸べてくれた手を無下に突き放していいのか。距離が大きな壁だと思っていたけど、距離なんてもののために簡単に諦めてしまっていい縁じゃないと気付いたら、心が決まった。

 

私は先輩と付き合うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、この人と結婚するな、と思ったときには、付き合ってまだ一週間しか経っていなかった。

 

休日の朝早くにかかってきた電話に応じながら、「この人と結婚したい」という願望じゃなくて、「きっと結婚するだろうな」と他人事のように思った。

 

世間では新型コロナウイルスが流行りだしたばかりで、運悪く体調を崩した彼は、自分が保菌者ではないかとたいそう怯えたらしい。

なのに自分の体調なんてそっちのけで、うつってたらごめん、たくさん食べて寝て健康に過ごしてほしいって泣きながら真剣に懇願されて、笑い事じゃないけど笑ってしまった。本当に全然笑い事じゃないのに。自分を差し置いて朝いちばんに私を心配してきたこと、愛と呼ばないでなんと呼ぶんだろう。

ずっと、ずっとこんなふうに誰かに大切にされてみたいと思って生きてきたっけなあと思って、胸がいっぱいになって、通話を切ってからちょっとだけ泣いた。

 

 

 

 

 

それからまた二年後。二度目の予感も的中して、先日、私たちは婚約した。

 

こうやって端折って書くとまるで運命にでも引き寄せられたようだけど、私たちの道のりは泥臭くて険しくて、全然ドラマチックでも順風満帆でもなかった。辛く苦しい遠距離恋愛を乗り越えても、念願だったはずの同棲生活がうまくいかないことも多々あった。もう別れるしかないのかなと大晦日にふたりで泣いたこともあった。家を飛び出したこともあったし、トイレにこもって泣くこともしょっちゅうだった。

 

それでも、衝突するたびにとことん話し合って、長い時間をかけてすり合わせてここまできた。隣り合ったパズルのピースのように初めから噛み合ったわけじゃない。お互いに向きを変えて、時には自分を削ったり磨いたりして、どうにかこうにか合うように努力をした。初めから運命だったわけじゃなくて、どうにかこうにか運命にしたのだ。

 

 

これはゴールじゃなくてスタートだから、立ち止まるつもりは毛頭ないのだけど、少しだけ振り向いてみようと思った次第。驕らずに頑張ります。

 

 

 

伊勢志摩めぐり

コロナ禍にあって、旅行エッセイやブログを読み漁ることが増えた。旅行に出かけたくてたまらない気持ちを、文章で疑似体験することでやり込めている。私みたいな人もいるだろうと思うので、こないだ初めて行った三重でのできごとを書く。

 

伊勢神宮は5時から参拝できる、と知ったのは最近のこと。行ってみたいけど人多そうだしこの状況じゃ無理だよね~なんて勝手に諦めていたのだけど、早朝だと人の入りも少ないらしい。それでは夜明け前に家を出て、早朝参拝して、早めに引き上げられるならいけるのでは?ということで三重への小旅行が決まった。せっかくなので伊勢志摩エリアを巡ることにする。

 

なんでも伊勢神宮の内宮には、日本の総氏神である天照大御神が祀られているという。かなり噛み砕いて言うと、総司令官・天照大御神にいきなり会いにいくのは失礼にあたるので、まずは別の神社から徐々に段階を踏む、挨拶回りみたいなことをするのがマナーらしい。いかにも日本的である。

 

二見興玉神社伊勢神宮外宮→伊勢神宮内宮、の順に行くのがベスト。同じ伊勢神宮といえども外宮と内宮ではそれぞれ祀られている神様も違い、行き来するのにも車で片道10分ほどかかる。本当はすべて回りたかったが、二見興玉神社が朝7時オープン(※2022年7月現在)だったため、人が増える前に帰ることを考えて泣く泣く外宮を飛ばすことにした。片参りといってあんまりよろしくないんだけど、時勢柄大目にみていただきたい。

 

 

 

出発は4時のつもりだったけど、4時までに高速道路に乗ると割引になるというのを当日の支度中に知り、3時50分に大急ぎで家を出た。マンションの階段を静かに降りきり、外に出た瞬間めいっぱい車めがけて走った。なんか青春っぽくて楽しかった。この日のドライブ用に作ったプレイリスト1曲目が「夜に駆ける」だったの、我ながら天才的だと思う。

夜に駆ける

夜に駆ける

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255

 

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サービスエリアから見た空、よすぎる

 

休憩を挟み、二見興玉神社に到着したのは7時半頃。二見浦がとても綺麗に澄んでいて心躍った。朝の時点でもう30度近くあったのだけど、頬に受ける風が気持ちいい。

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水辺、サイコ~

 

朝のわりに意外と人はいた。でもみんな日傘を差していて、自然とソーシャルディスタンスが取れる。道は狭く、立ち止まってじっくり見るようなメチャ映えスポットがたくさんある訳でもないので、回転よく混まずに参拝ができた。

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私が最も見たかった夫婦岩夫婦岩って日本中にたくさんない?と思うだろうけど、伊勢の夫婦岩を見たかったのには理由がある。江戸時代に空前のおかげ参り(=伊勢神宮に集団参詣すること)ブームが巻き起こったため、伊勢は当時の激アツスポットだった。そういうわけで二見興玉神社から見える夫婦岩はしばしば浮世絵に描かれていた。浮世絵好きとしては、ひとめ見ておきたい。


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鳥居の形になっている看板、こういうの大好き


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かの夫婦岩。男岩と女岩を大注連縄が結んでいるところと、男岩の上に鳥居が設置されているのがポイント。この写真を撮ったあと、鳥居のそばにカラスがとまっているのを見て、この鳥居はカラスがちょうど下をくぐれるぐらいの大きさだということがわかった。

 

 

カエルのモチーフが至るところにあり、どういう関係があるのだろうと思ってあとから調べたら「無事に帰る」と掛けているらしい。これは私が勝手に思ったことだからそういう意味かはわからないが、江戸時代に大流行していたおかげ参りは、確かに行くのもだけど帰るのも大変だったろうなと思う。

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カエルの口から出る水で手を清めるストロングスタイル

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たくさんのカエル

 

 

二見興玉神社をあとにし、伊勢神宮内宮へ向かう(本当は外宮にも行きたかった)。やはり朝だからか、休日のわりに人は少ない。境内がだだっ広いこともあり、ここでもしっかりソーシャルディスタンスを取って参拝することができた。

 

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8時半時点。

 

もうかなり暑かったが、立ち並ぶ樹木によって木陰ができ、境内は心なしか涼しい。入口には五十鈴川が流れ、そこに架かる宇治橋を渡っていく。日常の世界と、神聖な世界とを結ぶ架け橋であるらしい。千と千尋の神隠しをなんとなく思い出した。五十鈴川には手を浸して清めることもできた。ひんやり冷たくて気持ちいい。

 

内宮は落ち着いた色味の建物が多かった。朱塗り!豪華!派手!みたいな神社を今まで見ることが多かったから、ここまで素朴な色合いかつシンプルな造りなのに、ここまで圧倒されるのはなぜだろう……としみじみ不思議に思った。風格が違った。

 

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朝10時頃のおはらい町。混みはじめる前に、すいている店をササッと巡って食べ歩きをする。

 

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赤福本店はなんと5時から開いている。できたての赤福と、赤福氷。氷にまるごと赤福が突っ込んであるわけではなく、ふわふわの抹茶かき氷の中に餡と餅とが別々に入っている。甘いものをたくさん食べられなくなってきたアラサーカップルには、ふたりでひとつでちょうど良かった。

 

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伊勢うどん。スタンダードなのにしようと思ったのにとろろが載ったものを頼んでしまった。とろろに目がないので。コシがなく餅のような麺と、甘みのあるたまり醤油ベースであることが特徴。


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でっっかい牡蠣!今まで食べてきた厚岸の牡蠣をはるかに凌ぐ美味しさだった。生臭くなくてプリプリ。生と焼きと蒸しが選べて、これはだし醤油のかかった焼き牡蠣。すごい端っこのほうにある「魚福」というお店、人目につかないからすいてるしものすごく穴場です。おすすめ。サザエもおいしかった。

 

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混んでる土産屋を極限まで避け続けた結果、自分用に買ったお土産が酒しかない。ビール2種とゆずにごり酒、「作」という日本酒の伊勢神宮限定版。左のビールは春菊の香りでしっかりと苦い。右はスッキリ爽やかで飲みやすい。右の「ヒメホワイト」、サッポロクラシック並に飲みやすいビールだと思う。

 

「豚捨」のコロッケとミンチカツも食べた。前者はじゃがいもの甘みが、後者は牛肉の旨みが効いていてどちらもおいしい。固く成形して揚げられており、食べ歩きをしても崩れづらくするための工夫なのかなと思った。揚げ物ボロボロこぼす民としては非常にありがたい。

 

 

 

 

次は近場にある横山展望台でリアス式海岸を眺める予定だったけれど、暑くてバテてきたので飛ばすことに。臨機応変も旅のコツ。40分ほど車を走らせ、エアコンで充分にクールダウンしてから志摩地中海村へ。

 

スペインを模した地中海ふうの街並みが楽しめる宿泊施設で、日帰りで見て回ることもできる。ちなみに志摩スペイン村とはまったく別の施設(スペイン村は遊園地)である。

 

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ヨーロッパに来たみたい!!!!!


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建物はもちろん、この石畳とか植物の感じが!ヨーロッパ!!!!すてき!!!!!

 

 

映えることで有名になったスポットでもあり、スペインっぽい街並みの中を歩いて楽しむだけではあるので、彼氏はかなり退屈そうだった。旅情に飢えていてふんわりと異国の雰囲気を楽しみたい私のような人や、写真大好きな人にはおすすめ。お土産屋さんがかなり海外っぽくてよかった。かつてイタリアやイギリスで買ったお菓子が売られていて、ヨーロッパフリーク女はひとりで興奮していた。

 


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行ったことないけどかなり想像の中の地中海っぽい


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ライオンの噴水、よかった

 

 

 

 

次の目的地、VISON(ヴィソン)へは車で1時間。マルシェがあって新鮮な野菜や手作りのアクセサリーを売っていたり、ミナペルホネンのミュージアムがあったり、味噌や醤油や出汁の専門店がずらりと軒を連ねていたり、温泉があったり、宿泊することもできたりして、つまるところ大人の好きそうなものはなんでもある。大人のテーマパークって感じ。

 

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め~っちゃ広い!東京ドーム24個分、ディズニーランドとシーを合わせてもまだ広い。

 

近いから寄ってみよ~という軽い気持ちで入ったのだが、素敵な良いものがたくさんあって、ここが一番楽しかった。夕方に駆け込むんじゃなくて朝からじっくり時間をとって回りたかった。

 

日本全国のあらゆる味噌が売られている店で、3種類の味噌を買った。グラム数も指定できて、とりあえずそれぞれ200グラムずつ。ジェラートのようなディスプレイで米味噌やら麹味噌やらがずらりと並んでいて、見ているだけでわくわくした。味噌汁飲み比べパーティーでもしようと思う。

 

お目当ては本草湯。天然の温泉ではなく、薬草湯らしい。炎天下を歩き回ったあとに浸かる温泉はとんでもなく沁みた。足を伸ばして座ったり寝転がれる休憩スペースや、ゆったりした一人用の椅子が並び、本を読んだりクラフトコーラを買って飲んだりできるコーナーもある。何気なく頼んだソフトクリームがすごくおいしかった。本草湯のシャンプーが髪質に合っていたと帰ったあとで気付いて、通販で買おうか現在かなり悩んでいる。

 

 

 

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ヴィソンをあとにし、居酒屋で海鮮をたらふく食べて帰路へ。これはデカすぎたサワラ。

 

 

朝の3時50分に家を出て、帰り着いたのは夜の12時半。トータル8時間以上運転した彼氏も、前日&翌日普通にめちゃくちゃ仕事だった私も、相当よくやった。大人の小旅行、すごく楽しかった。今度は内宮もヴィソンも、もっとゆっくり見たいな。

 

 

 

 

 

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最後に二見興玉神社で引いた「愛」のおみくじを見せてあげます

大雨のあとで

川が程近いせいか、大雨が降ったあとの街は、駅に着いた瞬間から硫黄のような匂いがした。電車で数駅のこの街へは数ヶ月に一度、婦人科へ漢方薬をもらいに行くときだけ降り立つ。私の住んでいるところよりもほんの少しだけ栄えていて、道行く高校生も心なしか洗練された出で立ちにみえる。田舎に似つかわしくないフラペチーノなんか携えている。

婦人科は曜日ごとに先生が違って、どうやら受付や看護師さんのシフトもやや曜日で固定されているような気がする。院長は腕がいいけれど、なぜか院長のいる日に行くと不要なたらい回しに遭う確率が多い。火曜と木曜は、先生は少し横柄だけど受付と看護師さんの連携がてきぱき取れていて、比較的スムーズに診てもらえることがわかってきた。三連休の翌日だからか、待合室は笑っちゃうぐらいにガラガラで、すんなり薬をもらうことができた。

茶店に寄る。常連のマダムたちがころころと笑いながら井戸端会議をしており、時折お洒落な洋楽を上回って笑い声が響いていた。とても幸せそうで和んだ。アイスコーヒーをのみながら「坊っちゃん」を40ページほど読み進める。文豪の作品はもっと読みづらいイメージがあったけれど、流れるようにテンポの良い文章でするする読めた。当時用いていた漢字などを読みやすいよう平仮名にひらいてあるような気がする。アイスコーヒーにはシロップではなく黒蜜のようなものがついてきた。ところで私は1時間にきっかり100ページくらいのペースで本を読むのだけど、これって人より少し早いかもしれない、ということに最近気づいてきた。どうなんだろう。

次の電車まで少し時間があったから、ミスドでお土産を買うことにした。私の好きなチョコファッションと、彼氏の好きなゴールデンチョコレートハニーチュロを1個ずつ。ミスドのなかで1番と言っていいほど私はハニーチュロが好きなのだが、好きなドーナツ談義をしたとき彼氏も全く同じことを言っていたのがなんか嬉しくて、ミスドに寄るといそいそとハニーチュロを選んでしまう。私にはそういう可愛い一面がある。いつの間にか、ドーナツをトレーに取るスタイルじゃなく、持ち帰りたい人は自分でテイクアウト用の袋に詰める方式になっていて、すごくいいなと思った。店員さんが袋に詰める従来のやり方だと、「お土産にしたいからこれとこれは同じ袋で!こっちは別でお願い!」みたいな注文に対応する必要もないし、時間削減になるだろう。良い。

外に出ると、文章が泉のようにこんこんと湧いてくる。頭のなかで、小説の地の文みたいに、あるいは洋画の字幕みたいに、完成した文章がすらすらと流れてくる。昔からこうだけど、これって特殊なことなのかもしれない。ブログにおいてはそれをそのまま書きつけて、どんどん調整して読めるものにしていくことが多い。小説もそうやって最初から最後まで湧いてきたらいいのにな。出てくるのはブログの文章ばかりである。