あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

いつくしむ日々

名もわからぬピンクの花を買った。旅先で手に入れた、真新しい花瓶に似合いそうだと思って。自分では黒や茶色のアイテムしか身につけない反動なのか、ピンクやオレンジの、明るくかわいらしい花が好き。似たような花で迷って、蕾のついた茎がぴょんと伸びたほうを選んだ。かたく閉じていた蕾は日を追うごとにひらいていき、慈しむような気持ちが同時に芽生える。花を飾るの、久しぶりかも。働いていたころは、職場近くの花屋に寄っては季節の花をいけるようにしていたけれど、主婦になってそういえばその習慣もなくなった。花を飾るとこんなあたたかい気持ちになれること、忘れていた。

 

コーヒーのハンドドリップを覚えた。自分好みの味に淹れるコツを掴んだ、気がする。まぐれかも。わからないけど、空気を含んでぽこぽこと膨らむ粉の表面を眺めながら蒸らす時間が、楽しい。実家ではコーヒーを淹れて飲む習慣がなかったから、私にとってのコーヒーの香りはドアを横に引いたときの職員室の匂いで、おばあちゃんちの朝の匂い。

 

3分以内に淹れきること、と教わり、そのようにしている。じっくり時間をかけるほど苦くなる(気がする)ので、思い切って大胆に淹れる。ハンドドリップを始める前はものすごく敷居が高いように感じていたけれど、用意もそんなに大変じゃないし3分もせずにできるのだ。コーヒーを淹れるあいだ、なんだか、心がゆったり凪ぐ感覚がある。焚き火を見つめたり、お香を焚くときと同じ、じんわりとした癒しがある。

 

 

たとえば花をいけること、コーヒーを淹れること。つまり生活を大事にすること。結婚式と新婚旅行の準備を慌ただしくこなして、この1年、あまりそれができていなかった。日々に揉まれて、自分をいたわることを疎かにしていたのだなと思う。生活を愛して、素敵な大人でありたいな。