あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

わたしの結婚前夜

明日、結婚する。

 

まさか私の人生に「結婚」というイベントが起こるとは思っていなくて、いまだに現実味がない。

 

 

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結婚願望は昔から強かった。結婚しないなら一生しなくて構わないが、するならなるべく早いうちがよかった。ひ弱な私の身体が高齢出産やその後の育児に耐えうるとは思えない、という現実的な理由で。恋愛体質ではない私の人生に結婚が必須だとは思わないけど、自分よりも大切にしたいと思える人と家族になってみたいから、いちど結婚というものをしてみたかった。

 

寿退社とか、専業主婦とか、私の人生からは最も程遠いできごとだと思っていた。狭いマンションを買い、趣味を謳歌しながら灰色の猫とともに暮らし、偏屈なおばあちゃんになって死んでいくものと思っていたのだ。彼と付き合うまで。

 

 

 

彼と付き合って1週間で、この人と結婚するんだろうな、と思った。くっきりと。ずっとこんなふうに愛されてみたかった、の、「こんなふう」を煮詰めてジャムにでもしたみたいな愛情を受けて、家族になるならこの人がいいと思った。私はとんでもなく一途で愛情が重たいうえ、充分に愛されたこともないからどうやって愛すればいいのかわからなくて、いろんなことを駄目にしてしまった。初めてここまで大切にされて、私はやっと、愛し愛されるということを知った。

 

長女だからとたくさんのことを我慢してきた。親に甘えたことも、たぶん、3歳で弟が生まれてからは無い。かつて、僕には/私には甘えてもいいんだよと言われたこともあるが、全くどうすればいいのかわからなかった。私の本心に触れられなくて歯痒いことも理解はできたが、できなくて苦しかった。こういう時にはこう言えばいいんだよ、そしたらこうやって助けるからね、というのを彼はひとつひとつ教えてくれて、1年以上もかけて人に甘えるということを学んだ。頼る、甘える、愛し愛される、普通の人間ならば物心ついた時には身につけていることを私はすべて彼と付き合って知った。

 

ここまで読むと私ばかりが親代わりを求めているようだが、私もまた彼にいろんなことを教えた。本人は自覚のなかった致命的なデリカシーの無さに気づかせ、不機嫌を周りに押しつけないことや、違う意見を持っていたとしてもまず一旦は受け止めることを教え、近寄り難かったほど尖っていた彼も相当に丸くなった。私と同じくらい一途なのに、与えたほどの愛情を返してもらえていなかった彼もまた、愛し愛されることで成長した。ひとりでも充分に幸せに過ごすことができる私たちは、ひとりでいてもふたりでいても幸せにいられるようになってきた。

 

私たちは性格も正反対だし、趣味もそこまで合わない。だけど違うことを面白いと思っているし、相手の好きなことを尊重している。何にお金をかけて何を節約するか、という金銭感覚も近い。食の好みやデートで行きたい場所も似ている。子どもに対する考えなんてほとんど一緒だ。子どもは育てたいが、叶わなければふたりで海外旅行に行ったりして仲良く過ごしたい。子どもに積極的に受験などはさせたくないけれど、望むなら医大にも留学にも行かせてやりたい。庭の広い一軒家を建てたい。あたたかい家庭を築いて、最終的にはふたりで手を繋いで美術館に行くような、粋で仲のいいおじいちゃんとおばあちゃんになりたい。私たちは性格が正反対だけど、人生設計が驚くほどぴったりと合う。

 

愛情に飢え、甘えることもできず、さみしい日々を送ってきた。実家にいたあのとき、私はさみしかったんだと、さみしくなくなってから初めて気がついた。つらかったこと、悲しかったこと、忘れはしないしそれでいいんだと思うけど、彼といれば昔そんなこともあったよねと笑い飛ばして生きていける気がしている。

 

 

こないだリリースされたばかりの大好きなバンドの新曲が、あまりにも今の心情にぴったりで、結婚式で流せたらいいなと思う。

 

どんな過去があって汚れたって

離れたって君となら

こんな世界だって人生だって

変えれるような気がした

 

 

 

 

 

 

明日、結婚する。

 

付き合って間もない頃「心配でしょうがないから早く結婚して面倒をみたい」と言われたことがあって、『のび太結婚前夜』を思い出した。しずかちゃんがのび太に贈ったプロポーズの言葉は「のび太さんと結婚するわ。そばについててあげないとあぶなくて見てられないから」である。そういう彼は、しずかちゃんのパパが言うところの「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」であり、同じのび太マインドなのになんかかっこよくてずるい。

 

結婚しても、いきなり劇的に日々が変わることはないだろう。夢みたいな幸せが待ち受けているわけではなく、生活が果てしなく続いていくだけだ。何も変わらない。もし子どもが産まれたらまた別だけど、数年はふたりで楽しく仲良く過ごしていたい。ふたりで選んだお気に入りの指輪がしわくちゃの指に嵌らなくなっても、相手の存在を忘れてしまうほどぼけてしまっても、最後の日には隣にいて、バカみたいなことを言って手を握っていてほしいなと思う。