こないだ結婚した。のんびり過ごした入籍日のことをゆるゆる書く。
ちなみに「婚姻届を提出した」という意味で「入籍した」という言葉を使うのは誤用である。初婚同士の場合、夫の既存の籍に妻が入るのではなく、全く新しい戸籍をふたりで作ることになるため、「入籍(既存の籍に入ること)」とは呼ばない。厳密に「入籍」とは、再婚や養子縁組で既存の籍に入る場合を指す。
でも「結婚した日」と呼ぶのもなんだか締まりが悪いし「結婚記念日」は初年度に使っていいものかピンとこない。誤用ではあるけど、ここではわかりやすく「入籍日」と呼ぶことにする。
婚姻届を提出したあと、晴れて名古屋の地へ繰り出す。2月の風はまだ冷たい。ワンピースと黒タイツとが静電気で張り付いていたが、不思議と気にならなかった。既に2年も同棲しており、結婚して家族になった実感はまだ薄かったけれども、お互いの薬指にきらめく指輪を見ると、ああこれは現実に起きていることなんだ、と思えた。
金山駅の目と鼻の先、ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋にチェックインする。フロントにとてもいい匂いが立ち込めていて、よいホテルは香りまで素敵なのか……と思った。カウンターでアロマディフューザーも販売していた。売ってるんだ。
(ホテルロビーの香り ホテルオリジナルリードディフューザー /ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋 オンラインショップ)
部屋、広い!!!!!!うちのリビングより広い
洗面台がすごく広い。独立洗面台の左手にガラス張りのシャワールームと磨りガラス張りのトイレ、右手に大きなバスタブがあり、ヒノキ系の入浴剤が置いてあった。良質な睡眠のために、ホットアイマスク、低カフェインな夜用ほうじ玄米茶、しゃきっと目覚められそうな朝用抹茶入りミント緑茶までもがアメニティとして用意されている。ホスピタリティ。
ハイフロア宿泊者限定のラウンジを利用してみたくて、夜景に興味ないくせに高層階に泊まったのだけど、この高さから見る夕焼けには感動した。窓もすごく大きい。
夕食前に、名古屋のビル群を望むラウンジへ。ウエルカムドリンクでモエ・エ・シャンドンと、オードブルが運ばれてくる。夜景を前にシャンパンを嗜むなんてムーディなことは普段全くしないので、歳相応の "大人" をやっている、という感じがした。非日常に浸かってふわふわしていたら、食べ放題のおつまみのラインナップの中にじゃがりこが置いてあって笑った。こんないいホテルに宿泊する人たちもじゃがりことか食べるんだ。
程よくほろ酔いになったところで、予約していたイタリアンへ向かう。歩いて13分ほど。少し熱くなった肌に夜風が心地いい。疫病や円安で海外への新婚旅行は諦めていたのだが、来年ならもしかしたら行けるかもしれないという話で道中盛り上がった。スペインが第一候補だけど、初めて自分で手配する海外旅行がヨーロッパってけっこう大変じゃないか?言語とか治安とか、どうなんだろうか。
住宅街にこじんまりと佇む「ヴィネリア・カッシーニ」というお店、ほんとうに素敵だった。何かの折に通いたい。アットホームでややカジュアルなお店の雰囲気と、王道できちんとしている料理。そのバランスが絶妙でよかった。
コースの最初に出てきたトマトの冷製スープみたいなやつ、美味しすぎて時が止まった。リモナータ(レモネード)の瓶がかわいい。
やわらかい牛肉と菜の花の組み合わせもよかった。アスパラガスの前菜も魚のカルパッチョも、ほっぺたがとろけてバターになりそうなぐらい美味しかったし、ゴルゴンゾーラのニョッキは胃袋が許すなら2キロ食べたかった。
なんかめちゃくちゃ美味しかったチョコレートのタルト。食後にエスプレッソとお手製の焼き菓子まで出てきて、そのどれもがすべて美味しい。
図らずも、ヨーロッパに行きたい欲が高まってしまった。入籍日のディナーの大正解を叩き出した気がする。ガッチガチのフレンチなんかだとくつろぎきれないので。
ホテルの広い湯船に入浴剤をいれて浸かり、NetflixやYouTubeを見ながら夜用のお茶なるものをのんで、疲れ果てて寝た。
翌朝、起きてすぐホテルの朝食へ。よいホテルのビュッフェにはカトラリーレストが置いてあるんですね。ひつまぶしやエビフライなど、名古屋を感じるおかずもある。
12時のチェックアウトまで特に何をするでもなくだらだらとくつろぎ、ホテルを出たあとは「ラヤキヴィ」へ。北欧への惜しみない愛情を沸々と感じる、お気に入りのカフェ。
左がニシンのマリネ、右がスモークサーモンのスモーブロー(デンマークのオープンサンド)。訪れたことのない北欧の風味がする。具材のバランスが完璧。
マリボーチーズとイエトオスト(キャラメル風味のチーズ!)が載ったパンヌカック(フィンランドの四角いパンケーキ)。この組み合わせ、不思議で異様に癖になる。名前の響きが気になって頼んだアインシュペンナー(砂糖入りコーヒーに生クリームを浮かべたもの)がとても好みだった。パンヌカックといい、私は全然知らない名前の外国の料理を頼むのが大好き。
ゆっくり過ごしたあと、行ってみたかった「TOUTEN BOOKSTORE」へゆく。ビールとコーヒーが飲める本屋、みたいなフレーズを前に聞いたことがあって、以来気になっていた。イケてる本や漫画やZINEや雑誌が並び、絵本のコーナーもある。本を読めるスペースや、ギャラリースペースまで。こういう場所があったら素敵だなあ、の、まさに "こういう場所" そのものでワクワクした。どうせだからとZINEばかりを4冊も買う。
本屋ではしゃいだあとはふたりして眠たくなってきて、爆睡しながら電車で帰った。たくさん贅沢したし、疲れたね、といいながら冷凍のうどんかパスタでも食べた気がする。あまり覚えていないのだけど、事あるごとに指輪を眺めてニコニコしていたことだけを思い出せる。