あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

月明かり一筋

会場の外ではなぜかイルミネーションが煌々と灯っている。綺麗だと思う感情に、逸る気持ちが遥かに勝って、素通りして入場列に加わる。ライブを観るのは8ヶ月ぶりだった。去年の5月、ユニゾンを観にきたのと同じ会場にまた彼らを目撃しに来た。ライブに行くことを「会いに来た」「参戦する」と呼ぶのは私にはどうもしっくりこなくて、「目撃する」が最も近いニュアンスであるとこの頃気付いた。ライブハウスではなくこういうホールだと特に。

 

開演前にセールになっていた服を買い、ひとりでパンケーキまで食べて満足しきっていたから、暗転するまでライブがはじまる実感は薄かった。ステージにメンバーの影が見え、いつも通りに「絵の具」が流れてやっと心臓が機能しはじめた。1曲目の、1音目が鳴った瞬間にはもう堰を切ったように泣いていて、自分でも何が自分の身に起きているのかわからなかった。8ヶ月ぶりにライブに来るまで、こんなにも一瞬で感情の針が振れたことがあっただろうか。家で音楽を聴いていては生まれることのない化学反応が、そういえばライブにはあった。思い出した。まざまざと。

 

この歳になると、転職だとか結婚だとか車を買ったとか家が欲しいとか、自分や周りのライフステージがどんどん変わっていくのを感じる。会わない間に友達は大学を辞めてそのままバイト先の店長になり、別の友達はひっそりと入籍して私の知らない苗字になっていた。私も将来の様々なことを考えれば、来年度には今の大好きな仕事を辞めて転職したほうが良かった。でも大好きだから踏ん切りがつかなかったし、別の道がある気もしていた。もし彼氏の転職やそれに伴う引っ越しやはたまた結婚が絡んでくるとまた話は違ってもきて、事態は混乱を極め、そのことで悩んで悩んで揉めたりもした。

 

そんな気持ちを抱えたまま目撃したステージは眩しくて、大好きなロックバンドの凛とした姿を見て、マスクが湿るぐらい涙が溢れて止まらなくなって、私は、これから辿るべき道筋をくっきりとそこに見た。何を諦めて何を選ぶとか、大人になるためにはこうするべきとか、そんなのは1番ダサいってわかっていたのに無視してた。私は全部が欲しかった。何も諦めたくなかった。何も迷うことなんてなかった。今までずっとそうしてきたように、ただがむしゃらに進むしかなかった。私の愛するロックバンドがそうしてきたみたいに。モノクロだった世界に色が芽吹いて私はまた息ができる。あー、生きてる、と思った。マスクの下で鼻水が垂れ、ニットの下に着たヒートテックはずっと前から汗に濡れて、どうしようもなく、私はただ生きていた。