6/9、ロックの日にMy Hair is Badを観た。
「〇〇ホームランツアー」 と冠したライブをやってきたマイヘアが次に繰り出したのは 「セーフティバントツアー」。急に守りにきた。
東名阪+札幌を巡るゼップツアー。チケットをさばくのが難しいことで有名なゼップのなかでも、Zepp Sapporoは最も売り切るのが難しい。そんなハコを東名阪にプラスしてくれて嬉しいし、そんなツアーを "セーフティバント" だと言ってのけるの度胸あるなあ。
【6/9 セットリスト】
- アフターアワー
- グッバイ・マイマリー
- 革命はいつも
- 接吻とフレンド
- 復讐
- 元彼女として
- 最愛の果て
- 真赤
- 運命
- 悪い癖
- 彼氏として
- 卒業
- 告白
- mendo_931
- ディアウェンディ
- 元彼氏として
- 燃える偉人たち
- フロムナウオン
- 戦争を知らない大人たち
- 幻
- 声
- いつか結婚しても
- 夏が過ぎてく
En1. ドラマみたいだ
En2. 熱狂を終え
En3. クリサンセマム
『アフターアワー』で開幕。いきなり全開だ、マイヘアも観客も。あっという間に熱狂が沸き起こる。Zeppのよく似合うバンドだなあ、と思った。青臭さが削げ落ち、研ぎ澄まされている。前までは飢えるようなギラついた感じだったけど、程よく落ち着いたというか。
かと思えば前列の女の子を 「ん?化粧落ちたって?いいよいいよかわいいから」 とたらしこんだり。「痴漢はだめですよ、ありえない」 と強く言い切ったかと思えば 「俺がラブソング歌ってる目の前で女の子触るなんて許さないからな!むしろ触れるべきは俺だから!」 と結んで笑いを誘う。
ライブハウス初めてな人ー?と聞くと、前列真ん中のひとたちが一斉に手を挙げる。さすがに椎木さんも 「え、大丈夫?…いや、いいけどね、大丈夫じゃなかったら言ってね」 と驚いていた。案の定将棋倒しがひどかったけど 「具合大丈夫じゃなかったら言って」 「大丈夫?じゃない顔してるね?通してあげて」 と全力でフォローしていて、ぐっときた。
「ライブハウスに楽しみ方なんてない 俺らにだってやり方なんてない 弾き方だってあるようでない」 と "自由に楽しめ" ってことを暗に示してくれる。「俺が手上げろって言ったら上げるの?」 と問いかけてたやつすごく良かった、「自分次第だ」 って。
爪弾くギターに乗せて 「まだ少し春の残る札幌で」 とつぶやく。6月になっても涼しいこの街は、確かにまだ春の面影を残している。「春と夏のあいだ 赤と青のあいだ」、そう言って始まる『真赤』。
「春、恋に落ちて」 というサビが印象的だけれど、「夏の匂いがした」 とも言っているから、この曲って初夏の歌なんだなと思った。春と夏のあいだの。ちょうど今ぐらいの。
『悪い癖』の冒頭部分、いつもは 「朝のニュースとキスの音だけが響いて それを幸せと呼んだ」 とけだるい幸福感に満ちた描写をするけれど、今回は 「寝ぼけながら引き寄せてキスをした」 みたいなことを言っていて、独りよがりな印象を受けた。
ステージで元カノのことあんまり吼えなくなったと思ってたけど、今日は 「恋人から友達には戻れないと俺は思う 恥ずかしいけど」「ごめんね 戻れない」 「忘れてくれよ」 ってなんかすごい引きずってた。
でもマイヘアのそういう人間くさいところが私は好きで。「この感じ久しぶりだ」 と椎木さんも言ってたように。がむしゃらに元カノやロックバンドについて吼えてるこの感じが観たかったのだ。
「収入上がったし 好きな服が買えて好きなことができて 金を払えば風俗にも行ける」 「音楽と酒と女のことしか考えてない」 だとかさらっと言っちゃうあたりも。
「先頭を切っていきたいと思うこともあったけど 俺はヒーローでもロックスターでもなくて My Hair is Badの椎木知仁だ」 と言っていたのにもしびれた。売れてもてはやされ出すこの時期にも、きちんと地に足ついている。
『mendo_931』、「女の子の日? 先に言え!もう払っちゃってるんですよこっちは」 と歌ったあとに言った 「タクシー代出すから!別日で!」 が最高にクズすぎて笑った。ガチでドン引きしてるバヤさんの表情も含めて好き、このくだり。
そういえば下手のほぼ最前列で観ていたんだけど、バヤさんのベースプレイかっこよかった。客席にお尻向けてフリフリしたり、キュートでもあった。
椎木さんが男の子から 「ずっとそばにいたいです」 とDMをもらって満更でもなかったって話(もっとそばにいたいです、だったかな?)。一緒にしゃべってたバヤさんに 「俺はずっと(もっと?)お前のそばにいたいよ」 と言って黄色い悲鳴を浴びていた。
銀に染めてばしっと上げていたやまじゅんのヘアスタイル、椎木さんが 「田舎のヤンキー」 とか茶化すからそれにしか見えなくなった。深夜のドンキにいそう。とにかくこの3人、馴れ合いすぎるでも冷めすぎでもなく、ちょうどよく仲いいな。
「奇しくも6月9日 ロックの日 92年3月19日に生まれた俺は 恥ずかしながらミュージックの日に生まれた」、そう言ったのは『フロムナウオン』あたりだったろうか。
「でも ロックってなんだ?ロックバンドってなんだ?」
「ロックはわがままで従順だ」、「ロックは自分勝手で人ったらしだ」。だとしたらロックって椎木さんにちょっと似てる。
「ロックは、生き様だ」
「ロックバンドを透かして何が見える?」
ロックの日にマイヘア観れてよかった、と思った。がむしゃらな泥臭いかっこよさを、私はいつもMy Hair is Badに透かして見てる。ロックが何かなんてわかんないけど、マイヘアが正真正銘のロックバンドだってことはライブを観ればわかる。
この日に聴いた『戦争を知らない大人たち』を、一生忘れられないと思う。「俺らはいつか終わる。来年にだって終わるかもしれない」 そう椎木さんが言って、照明が落ちて、演奏も止んで、
あんなにも熱に包まれていたライブハウスが静止する。光も音もなく。たった一筋のライトが椎木さんを照らし、
「だから、今だけだ」
だれもが息をのんだ。一筋照らす光の下で、張りつめた静寂に放たれた言葉を、その重みを、忘れない。
ああ、私の好きな音楽は、こんなふうにいつ鳴り止んでもおかしくないのだ。心の中ではわかってた。だけど実際にどういうことか見せられて初めてゾッとした。音も光も熱も、いきなり止むということ。熱狂の渦が一瞬で消え去ることが、こんなにも恐ろしいと。
ほんとうに、今しかないんだ、と強く思った。今。6月9日、Zepp Sapporo、今この瞬間は二度と訪れない。今後ものすごく売れてチケットが手に入らなくなるかもしれない。突然辞めてしまうかもしれない。人波に揉まれながら拳を突き上げていられるこの瞬間が、どんなにかけがえのないものであるか。
解散を考えているとかそういう話ではない。「27、28、29、30、40になってもこの歌を歌い続けたい」 とも言ってたから。この先何が起こるか誰にもわからない、というニュアンスだったのだろう。それこそ戦争のように。だから、何が起こるかわからないから、今を全力で生きるしかない。
私の好きな音楽はいつ終わってもおかしくない、ということを、最前線を走り続けるバンドに突きつけられてハッとした。今この瞬間も、次のライブも、ひとつひとつ大事にしたい。
「夢でよかったな 夢がよかったな」 とゆっくり歌いだす。「あなたがよかったな そんなふうに思える あなたでよかったな」。しんと凪いだ空気をほどく 「真夜中に目覚めちゃった なぜか泣いてしまった」 という優しい歌声。『幻』。
「あの日みたいに笑ってた あの時みたいに話してた」 って歌詞を 「あたしはあなたが好きだった あなたはあたしが好きだった?」 と歌い替えていたの、ずるかった。椎木さんが女性目線で歌う曲って、生々しすぎて苦しい。なんでこんなに女性のこと "わかってる"んだろうって怖くすらある。
「北海道ではこの曲するの初めてかもしれない。この曲があったから俺たちがあるんだと思う」 と始まった『声』。最後の一滴まで絞りだすように力をこめて歌う 「声は届くか」 のところ、胸に迫った。
あっという間に本編が終わる。
バヤさんのTシャツが筋肉でピチピチだって話。「俺、ツアTならMサイズでもいけるからね?!」 なんて言ってたけど、普通にLでいいと思う。腕モリモリじゃん……
『熱狂を終え』、ライブで聴くとじんとくる。「巨大迷路を彷徨え 揺れる決断を楽しめ ここからが面白い ここからだ」。岐路に立たされたとき、どうしようって立ちすくむんじゃなくて、これは面白くなってきたなって笑える人間になりたいな。
エモーショナルな空気を一瞬で変える『クリサンセマム』。みんなパッと笑顔になって、全力で飛び跳ねる。「君がなんか嬉しそうで 僕は嫌だった」 で締めくくるのニクい。
長い長いセーフティバントは、マイヘア史上もっとも短いラブソングで終幕を告げた。
電子チケで入場する際にもらえる思い出チケット。お洒落なグッズを売りさばくバンドのものとは思えないクレイジーな絵柄、最高。
書きたいことがありすぎて、まとめらずにいたら半年もかかった……。これでもだいぶ絞ったけど4000字超えです。ちょっとしたレポート。
椎木さんが言ったことなんかは一字一句同じなわけじゃないし、私の捉え方がそもそも間違ってることもありうるので、大体こういうこと言ってたんだな~ぐらいに軽く読み流してください。
ロックの日に聴いた『戦争を知らない大人たち』と、あのときの雷に撃ち抜かれたみたいな衝撃は一生忘れられないです。よいものを観た。
あおでした。