あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

RISING SUN 2017 ⑤

My Hair is Bad


誰にとっても100点満点のライブなんてない。


だけど、30分のステージでも2時間のワンマンでも、小さなライブハウスでも大きなフェスのステージでも、いつだって200%の熱量でやりきるのが My Hair is Bad だと思う。

 

 



本編に入る前に。このレポは記憶と主観だけで書いているので、流れや言い回しは不正確です。違った意味に解釈してしまっていることもありえます。

 

だから、こんな文章なんて信用しないで、自分の目で本当のライブを確かめにいってほしい。何が起こったかを伝えることはできても、あの熱量を文字に起こすことは絶対にできない。


マイヘアの本当のライブを知りたくなる手助けになりますように。 

 

(MC=句読点アリ、イントロに乗せて語り出すやつ&曲中にアドリブで喋り出すやつ=句読点ナシ、で一応分けています)

 

 

 

 

 

リハ

ドラマみたいだ

 

深夜にもかかわらず観客はまだ熱気に溢れていて、リハが始まったとたん、待ってました!とばかりに飛び跳ねだす。

 

僕は言う『そばにいて』 君は言う『あなたでいて』」 という歌詞はいつ聞いてもすごいなあと思う。

それと 「裏切って会ってヤッてもう切るとこないから表も切って」 ってとこ。裏を切りすぎて切るとこなくなったから表まで切る、って、どんだけ裏切ってんだって。

 

 

 

00:40~ EARTH TENTにて、My Hair is Bad

 

セットリスト

真赤

アフターアワー

接吻とフレンド

悪い癖

告白

元彼氏として

クリサンセマム

フロムナウオン

夏が過ぎてく

 

 

1曲目は『真赤』。間奏かどこかで、「君の匂いがする」 と言っていたのが印象的だった。まるで歌詞の一節であるかのように。

 


「この時間に集まってくれてありがとう。寝かせねえぞ」 と椎木さんは言う。

 

「俺は各所で嫌われてる。メンヘラとか女々しいとか。嫌いな人は俺のこと嫌いだ。だけど優しい人もいる。太ももの内側に、しいきともみ、ってマッキーで書いて送ってくる女子高生もいる」

いいなー!という観客の声に 「いいだろー!」 と答え、笑いが起こる。

「メンヘラとか女々しいとか、みんな勝手に俺を判断する。自分を他人が決める。他人を自分が決める。……自分を決めるのは、自分だ」

 

マイヘアのライブって、鈍器で殴られたような衝撃だし、毎回毎回200%でやりきるの凄いし、本人が言うように嫌いな人は嫌いなんだろうけど、私はもう抜け出せない。

正直、音源を聴くだけじゃマイヘアの2%ぐらいしか知れないと思う。ライブを見てガツンと殴られてほしい。

 

 

 

「ドキドキしようぜ」 と椎木さんが叫んだのは、『アフターアワー』のときだったろうか。

 

荒波のような激しいモッシュに呑まれながら、私は、ライブのときにだけ陥るあの感じに襲われた。

酸素が薄くて、暑くて苦しいのに、ずっと待ち焦がれていた音を目の当たりにして、嬉しくて嬉しくて、どうしようもなく跳ねたり笑ったり泣いたりしてしまう、あの感じ。

そうか、これを 「ドキドキ」 と呼ぶのか。

それならば、私は。

 

「俺はお前らをアツくするために来てんじゃねえ!そんなの知らねえよ!」

ひとたびステージに立つと、椎木さんは怒鳴るとも吠えるともつかないような、剥き出しの尖った言葉をめいっぱい叫ぶ。

「踊りたいとか踊らせたいとか、アツくなりたいとかなりたくないとか、知らねえよ!俺はお前らやこのステージをアツくしに来てるわけじゃねえ!……俺がアツくなりに来た!」

私は、どうしようもなく My Hair is Bad にドキドキしていた。

 

 

 

 


「どっか行こうか そういうと君は首を横に振って」、ゆっくりとギターの音に乗せて語り始める『悪い癖』。

 

「テレビのついた部屋に 朝のニュースとキスの音だけが響いて 俺はそれを幸せと呼んだ」

「夏はやっぱりビールだって君は言うが 冬は冬で鍋にはビールだねって言ってなかったっけそう言うと君は怒って『どっちでもいいじゃん!』って」

「『ああそうだ、アイスボックスにハイボール入れるやつやってみようよ、美味しいらしいし』……幸せかい?」


最後に 「エンドロールが流れて 俺たちは向かい合って座った 明かりが灯った」 みたいなことを言っていた。

最後の最後は喫茶店 あの、六文字、が流れて」 の 「あの六文字」 って、「エンドロール」 だろうか。後日リリースされた『運命』にも、喫茶店でエンドロールが流れる描写があるし。

 

 

 

「ビビってんじゃねえよ!」 と椎木さんはしきりに吼えていた。自分に言い聞かせているように見えた。


「ビビってんじゃねえよおい!やるかやらないか それしかねえんだよ!ビビってんじゃねえよ!」 どこか『告白』の歌詞にも通ずることを何度も叫んでいた。




「俺らの中で最も最低な曲をやります」 から始まる『元彼氏として』。

「お前の彼氏まじカッコイイな!お前の彼氏ほんといい男だな!…前の彼氏の俺はどうだ?タバコ吸わないし背も高いし 収入もぐんと上がった」

収入上がった!ってステージ上で言うバンドがどこにいるんだ。そういうとこ好き。

 

 

 

 

「真夜中のライジングサン 寝かせねえとは言ったが これから夢の中に連れていく」 「目を閉じて 指の先まで力が入っているのがわかって 眠りに落ちていく」

 

絞られた照明のなかで、ゆっくり爪弾くギターに乗せて、言葉が紡がれてゆく。熱狂していたファンが一様に、しん、と動きを止める。

 

「優しくなりたい 優しく 優しくなりたい優しく 優しくなりたい 優しく 優しく 優しくなりたい優しく 優しくなりたい 優しく」

壊れたレコードのように椎木さんは繰り返す。

 

アサガオの観察日記をつけていたあの頃 俺は電柱に登りたいと思っていた いま俺の友達は電柱より高いところで作業する仕事をしている でも俺はもっともっと高いところまで行きたいんだ」

 

「身じろぎしない」 というのと、「身じろぎできない」 というのは違う。椎木さんの言葉を目の当たりにするとき、首に掛けたタオルの端を両手で握りしめたまま、動けなくなる。時に荒々しく、時に流れるように語られる言葉にがっちり捉えられて、動けなくなる。


「テレビでも雑誌でもねえ 俺らは今ここにいる!ツイッターもインスタも知らねえよ 俺らは今ここにいるんだ」

 

声が、荒々しさをはらむ。ギターを掻き鳴らす右手に力がこもる。

 

「140字のTwitter 250円の牛丼 1円にもならなかったなんて言わせねえ」

 

『フロムナウオン』。

音源化されていない曲でありながら、私はこの曲こそが My Hair is Bad の真骨頂だと思っている。

 

音源化されていない、というか、音源化できるわけがないのだ。

サビ以外のAメロやBメロの部分は、歌というより叫びのようなものを椎木さんが即興で乗せていく。サビすら即興のこともある。

AメロやBメロの伴奏に乗せ、椎木さんは時に元カノのことを、バンドのことを、アツく叫ぶ。ライブの数だけ違った『フロムナウオン』があり、型にはめることはできない。


「占い師でも医者でもいい ロックバンドでもいい やりたいことはやれ 遊ぶのを我慢して頑張ることも必要だ」

「正解なんてない ただ一つ正しいことを言うなら 水はウォーター ウォーターは水 ……ウォーターは水ってなんだよ 正しいだけじゃ面白くねえんだよ」

「正しいだけじゃ面白くない 正しいよりカッコよく生きたい 俺は男になりたい」

 



 


ライジングサンに出場して2年 バンド始めて10年 当時から何が変わって何が変わってないかも分かってねえ」

去年のライジングサンで 「俺は本物 (のロックバンド) になりたい」 と何度も言っていた椎木さんが、今年は 「俺は本物だ 俺らは本物だ」 と叫んでいたのが感慨深かった。

ライジングサンでは21時に花火が上がる。そのことになぞらえて、「ライジングサンの花火になる」 とも言っていた。



「この時間に来てくれてありがとう。サチモスより俺らを選んでくれてありがとう。いつかこのステージを見て良かったって自慢出来るようなバンドになります。また来年」

 

来年もライジングに出たいと思ってくれていることが嬉しかった。来年か再来年か、近い将来、SUN STAGEを湧かせるマイヘアを観てみたい。ライジングサンに足を運ぶ理由がまたひとつできた。

 


最後は、『夏が過ぎてく』。

「夏はまだ残ってる 今年の夏は何をする?」 間奏に乗せて、柔らかくそう言う。

 

今年の夏は忙しくて何もできないけど、ライジングに来れて、マイヘアを観られて、それだけでいいと本当に思った。

夏祭りも海も行けなかったけど、ここに来れた。200%の熱量に揺さぶられた、最高の夏だった。

 

 

 

起こったことを少しでも多く覚えていたい、という気持ちでレポを書いているけれど、こんなもので伝えられると思っていない。炎の熱さは手をかざさないとわからない。これを読んだ人がひとりでも、あのヒリついた空間に行ってみたいと思いますように。

 

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長々と引き延ばしてしまったライジングサンレポ、最後までお付き合いくださってありがとうございました。あおでした。