あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

VISION編

11月16日、フレデリックを観た。観た、というより、目撃してしまったというニュアンスのほうが近いかもしれない。あの公演を目の当たりにしてから1ヶ月近くが経ったいまでも、私はあのとき何を見せられたのだろうと怖くなる。暴力的で鮮烈な夢を、みていた気がする。

 

SEASON4にあたるZeppワンマンツアーVISION編、初日を飾った札幌公演。初めての下手側はなんだか新鮮でドキドキした。前から2列目、隆児さんのエフェクターボードを眺めながら開演を待つ。

 

 

 

 

 

暗転。歓声。ステージに置かれた小さな4つのモニターがパッと光る。アナログテレビの砂嵐のように明滅する画面。『パパマーチ』『リリリピート』などのイントロが、ザーッというノイズを合間に挟みながら次々流れては切り替わっていく。

 

音とともに明滅を繰り返すモニターに釘付けになりながら、このツアーが「VISION編」と銘打たれていたことを思い出す。聴覚だけでなく、視覚にも訴えかけてくる公演であることを思い知って震えた。ノイズで繋がれた不安定な音と画面に、引きずり込まれそうになる。圧倒されて動けない。頭がおかしくなりそうだった。

 

SE:https://www.instagram.com/tv/B6MVQdNh1fS/?igshid=111c9lejq646j

 

これまでのフレデリックを継ぎ接ぎしたSEが止む。「フレデリズムツアー、始めます」。

 

 

 

【11/16 セットリスト】

  1. VISION
  2. シンセンス
  3. パラレルロール
  4. 逃避行
  5. トウメイニンゲン
  6. リリリピート
  7. シンクロック
  8. ナイトステップ
  9. NEON PICNIC
  10. 対価
  11. FUTURE ICE CREAM
  12. ディスコプール
  13. KITAKU BEATS
  14. オドループ
  15. イマジネーション

En1. VISION(FAB)

En2. 夜にロックを聴いてしまったら(FAB)

En3. 終わらないMUSIC

 

 

 

 

 

SEで呆然としていた頭を醒ますように響いた「V I S I O   N」というエフェクトがかった声。『VISION』、ツアータイトルにもなっている新曲で幕は開かれた。「最高の1日を約束します」と健司さんは言う。

 

ステージへ幾何学的に張り巡らされたネオン管が、色とりどりに光を放って舞い踊った。Zeppを満たす音と光に、耳も目も心も、余すことなく奪われていく。

 

 

『シンセンス』で「よく来たねえ」と笑いかけられると、こっちの台詞だよって笑いながら泣きたくなった。地元に好きなバンドが来てくれることに私はいつまでも慣れない。好きなバンドを年に1回観られるかどうかの瀬戸際で、今年4度も北海道を訪れてくれた彼らには頭が上がらない。目の前に大好きな4人がいて、心地よいメロディーに体を揺らせること、当たり前じゃない。そんなごちゃごちゃした考えも『パラレルロール』のイントロが鳴れば竜巻のように吹っ飛ぶ。沸々と、血液は滾った。

 

 

この日の『逃避行』は、照明も相まって「逃避行・完全体」といった様相であった。真っ赤なライトに包まれるステージ、鮮烈に駆け巡る黄緑のレーザービーム。「立ち止まった君をずっと待っているのに」のあとに鳴る、あのギターの音色に骨抜きになる。

逃避行の本邦初披露は1月、ここZepp Sapporoだった。あれから約1年。歌、演奏、照明、観客のクラップ、すべてが本気で混じりあったこの日の逃避行は紛うことなき今年の集大成で、成長したね……って推し曲の晴れ姿にじんときた。愛娘の振袖姿を見た気持ち。

 

 

街を駆け抜けるずっと誰にも見えない自分が」と始まった『トウメイニンゲン』には強烈なデジャブがあった。1か月前のUMIMOYASU仙台公演、対バン相手のキュウソネコカミがサプライズでカバーした曲。この選曲が偶然なのか故意かはわからないけれど、今まで辿った道のりをうっすら感じてにやにやしてしまう。「目と目と手と手と人と人は」のところを楽しそうに口ずさむ隆児さんが可愛らしい。

 

 

『リリリピート』。康司さんは「くりくりかえす!」と語気を強め、「しょっちゅう しょっちゅう」の部分は歌唱放棄して観客に歌わせていた。しょっちゅう、の合唱と「ぱんぱんぱぱん」のクラップが元気よく揃うのを見てほほえむ健司さん。ライブの格好良さに手を取られるように、北海道の客特有の熱気が巻き起こってZeppの温度は上がる。演者と客のエゴが双方向にがっちり組み合ったとき、ライブは猛烈な爆発力を発揮する。一大キラーチューンのオドループなどでなく、リリリピートでそれが起きるのはなんだか嬉しかった。

 

 

ベースの康司さんをこよなく愛する私は、上手側でゆったり踊りつつも、対角線上の康司さんに目を奪われまくっていた。『シンクロック』で「今この日をこの瞬間を待ち望んでいた」と荒っぽくざかざか弾きながら歌う姿や、『ナイトステップ』の間奏でスッと手を叩いて手拍子を煽る場面に気づいたら見とれていた。遠くからゆっくり眺めたのは初めてだった。例えが気持ち悪いのは本当に許してほしいんだけど、数年付き合って家族も同然のようになっていた彼氏の仕事中の姿を見てドキッとするような新鮮なときめきがあった。

 

 

『ナイトステップ』と『NEON PICNIC』を繋ぐのは今年何度か観たけれど、毎度繋ぎ方が違うので何度でも息をのんでしまう。今回は原曲に近いアレンジだった。もう雪の降りしきる札幌で、この曲を一身に浴びているとなんだか、ぬるく甘い風の吹き抜ける夏夜に迷い込んでしまったような心地すら覚えた。「離さないで そらさないで このまま」と歌う健司さんに当たるスポットライト。艶やかなピンクに染まった横顔がくっきりと照らし出される。じれったく、時は止まる。

 

 

『対価』を歌い上げるとMCへ。「札幌の皆さん元気だけど、俺以外のメンバーがMCしても元気にできる?」と客席を沸かせる健司さん、"お兄さん" 感満載だった。

 

「誰からいく?札幌はじゃあ康司から」と指名された康司さんは、キメ顔で親指をぐっと立てる。

康「元気ですか!」

客「わーー!」

康「ポロッサの皆さん元気ですか!」

客「わーー……??」

六本木=ギロッポンのノリで札幌と言いたかったらしい。「すべった……札幌のことポロッサって言ってみたかってん」とニコニコ笑う康司さんに、兄はばっさり「その感性わからんわ」とツッコむ。喜来登(きらいと)というラーメン屋さんに地図を見ないで行けるようになったとも話していた。

 

隆児さんは「あんな、2019年いちばん気合い入ってるんよ」といつもと変わりないゆるゆるしたマイナスイオン全開の声で言う。すかさず健司さんが「えっ、隆児が?」と尋ねる。

「俺がいちばん気合い入ってるんよ。何故ならばな……このジャケット普通の衣装に見えるやんか?でもインナーがノースリーブやから」。そう言ってジャケットの左肩をつまみ、ノースリーブをチラ見せする。そのあと会話に紛れてぼそっと言った「袖なき子やから」が客席に拾われてウケていて、ちょっと嬉しそうだった。

 

北海道どう?と振られた武さんは「北海道はいいところたくさんあるよね。スープカレーとかラーメンとか、ジンギスカンとかラムしゃぶとか」と列挙する。羊が好きなんだろうか。

武「いいところたくさんあるけど、北海道はスタジオが安い!東京だとスタジオ1時間入って800円とかなのね。俺が昨日行ったとこは1時間300円で、バンドマンとか学生に優しいなあと思って」

康「えっ俺が昨日入ったスタジオ500円やったで」

武「うえ~い俺のほうが安い~!!(笑)」

遠征先で個人練習するリズム隊、ストイックさに余念がなくて謎にキュンときた。ちなみに健司さんは札幌駅のジョイフィットにいたらしい。

 

 

 

 

MCを挟んで後半戦。日頃セットリストを組んでいる健司さんは「後半戦はなにか工夫したいと思って。Zeppツアー4公演あるんやけど、1公演ごとにそれぞれメンバーが考えたセトリでやりたいと思います」と。

 

「札幌は三原康司」と告げられたとき、地元公演を推しのセトリで観れる嬉しさでどうにかなりそうだった。タオルで口を塞いで、北海道に生まれてよかった~~!と叫びたくなるのをこらえる。

 

 

三原康司セレクト1曲目は『FUTURE ICE CREAM』。このメッセージ性が強くて、かといってTOGENKYOやハローグッバイほどメジャー選手なわけでもない曲を康司さんが選んだの、ものすごくわかる気がする。VISIONに通ずる骨組みのようなものも感じる。この曲、ライブで聴くと「この先の夢の中」あたりにぎゅっと心臓掴まれてぼろぼろ泣けてしまう。

 

 

FUTURE ICE CREAMがメッセージ重視で選ばれたのだとしたら、次の『ディスコプール』は完全に音の気持ちよさ重視だろうなと思った。これのベース弾きたいだけでしょう。エゴ剥き出しで好き。グルーヴの波でひたひたに満たされたライブハウスは、「札幌のプールサイドは」に揺れる。

 

 

『KITAKU BEATS』『オドループ』と立て続くキラーアンセムゾーン、曲が最高なのはもちろん、わちゃわちゃ絡みながら演奏する4人がひたすら楽しそうで微笑ましい。というか楽しすぎてブチ上がっていたので、曲や演出についてなにも思い出せない。

 

みんなそれぞれこぞってドラムセットのところへ遊びに行っては、武さんとにこにこアイコンタクトを取っていた。康司さんなんか『オドループ』のイントロでドラムセットの後ろ(横だったか)でしばらく弾いていた。隆児さんはインナーのタンクトップを、わざわざ健司さんに見せびらかしにいっては曲中に笑わせていた。

 

 

最後は『イマジネーション』。首筋を撫であげられるようなあのイントロが鳴って、これからこの暴力的でもある曲に殴られるとわかって、わかってるのに、ギラギラと飢えながら艶っぽくひずんでいくこの新曲からまるで目も耳も離せない。打たれるとわかっていて両頬を恍惚と差し出すほかなかった。そんな曲だ。ほんとうに。

 

獲物を前にした肉食動物のように瞳を鋭く光らせる健司さんは「さあイマジネーション イマジネーション」のところで合唱を煽る。「そんなもんじゃないよね?」って何度も何度も。爆音で鳴る間奏に掻き消されながらも、いつものオラオラ煽る感じともまた違う、フロムナウオンの椎木知仁みたいなものすごい熱量で叫んでいた。「俺たちはいつだってこうやってやってきた」「回って 回って 回って」「俺たちはいつだって今が1番かっこいい。10年やってきて今日、Zepp Sapporo、"今" が1番かっこいい」。迫真した叫びが、渦巻く爆音を掻き分けながら途切れ途切れに届く。

 

光駆け巡るネオン管、くるめく照明と、いまにも燃え尽きてしまうんじゃないかというぐらい全身で掻き鳴らして弾いて叩いて命を絞るように歌って、客席にすら背を向けて、4人向かい合って混ざり合うディストーション、メラメラと炎が燃え盛るようなさまを、ただ「イマジネーション イマジネーション」と曲に合わせて叫びながら見ていることしかできなかった。観客ですら入り込めない領域で命が燃えている。と、曲も終わりきらないのに、両側から黒い幕が引かれていった。ゆっくり閉じられた黒幕の向こうで、まだ熱く歪んだ演奏とフェイクが響いてくる。

 

本編は、幕の向こう側でフィニッシュを迎えた。

 

 

 

 

 

訳がわからなかった。怖かった。スクリーンのように、幕にはバンドロゴと「FRDC」の文字が映し出され、ピンクと緑の光が星のように瞬いている。今まで何を見せられていたんだろう、とゾクゾクして、呆けたようにただ立っていることしかできなかった。

 

怖かったのは、このままアンコールなどしないのではないかと思ったからだった。圧倒的な格好いい曲で殴ってなぶって、このまま突き放されて終わるのではないかと思った。

 

 

だから、

 

「FRDC」の文字が「FAB」に変わった瞬間、アンコールをやってくれる嬉しさと、これからまたとんでもないことが起こる予感とで、息ができなくなりそうだった。

 

 

 

 

 

フレデリック・アコースティック・バンド、通称「FAB」。FAB編成を生で観たことは今までなかったので、ツアーに組み込んでくれる嬉しさに震えた。

 

幕が開くと、アコースティックセットに着く4人の姿があった。左から健司さん、隆児さん、武さん、康司さん。アコースティックと言えど、武さんはドラムセットではなく電子パッドの前に座っている。新しいものをどんどん取り入れて既成概念の枠を壊すフレデリックらしさを、わかりやすく目の当たりにした。

 

 

アコースティック編成、アンコール1曲目はなんと本編の1曲目でもあった『VISION』。原曲のEDMっぽい良さとはまた違って、音の粒ひとつひとつ、声のしなるニュアンス、歌詞の意味が改めてくっきりと際立つ。1番、「その目で確かめて」と音を変えて歌うと、サビにはいかずそのまま2番の頭へ繋ぐ。同じ曲でこんなにも表情が変わるものだろうか。

 

 

編成はそのままに『夜にロックを聴いてしまったら』。イントロはなく「夜にロックを聴いてしまったら 春がはじまった」とアカペラで歌い出していたはず(違ったら教えて)。底を支える音に歌を乗せていくバンド編成とは違い、アコースティック編成だと歌に音を肉付けしていく形になるため、メンバーはしきりに健司さんを見ながら音を取っていた。ただ楽器とアレンジが変わるだけじゃなく、ぴったり息も合っていないと出来ないことなんだと気付いた。最後も確かアカペラで「夜にロックを聴いてしまったら」と、原曲にはない部分を付け足して終わった。

 

 

これで最後かと思ったら、袖からスタッフさんたちが出てきた。アコースティックセットを素早く片付け、一瞬でバンドセットを運び込む。目まぐるしい早業で、健司さんも自分でマイクスタンドを設置していた。

 

 

アンコールラストは『終わらないMUSIC』。メンバー全員で手拍子を煽る姿を初めて見て、ああこれはみんなと共有したい大事な曲なんだ、と思った。武さんなんて立ち上がって手拍子していた。手拍子をもビートに組み込んで曲は始まる。「正解はどこにある」だけでなく、「変わらない歌を」のところもエフェクトがかった康司さんパートになっていて震える。

 

『終わらないMUSIC』の初披露がどうして横浜アリーナ、「終わらないMUSIC編」ではなかったのだろうと一瞬思った。でも、考えるほどこれしかない。「VISION編」の最後にこの曲を持ってくることで、来年2月の横浜アリーナ、「終わらないMUSIC編」とを繋ぐ橋渡しをしたのだろう。今年4月から4シーズンにわたって架けてきた最後の橋を、いま、この曲で渡し終える。

 

明日の空に歌おうよ MUSIC」。

 

 

 

 

 

 

 

 

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ステージに張り巡らされたネオン管、終演後「MUSIC」になってたの震えちゃった

 

 

 

 

喜来登 (きらいと) - 資生館小学校前/ラーメン [食べログ]

康司さん行きつけのラーメン屋さん。ネギがヤバいなと思いつつ後日食べに行ったら、あっさり一瞬でなくなって綿菓子かと思った


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VISION

VISION

 

 

VISION編」というツアータイトルの意味を思い知ってずっと打ち震えていた。あのモニターを、ネオン管を、幕でいきなり断絶される視界を、そこに映し出される「FRDC」が「FAB」に変わる瞬間を、1秒たりとも見逃せるわけがなかったんだ。1秒たりともフレデリックから目を離せるわけがないんだ。余所見しててもまた強引に引っ張ってくれるんだろうから、いつまでも愛させていてくれよ。