あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

鮮烈トライアングル

例年のような夏らしいことはあまり出来ないまま、私の好きな夏という季節はあっけなく終わりへ向かっていく。いつも通りに花火大会があったとしても、遠方に住む彼氏と参加することは叶わなかっただろうからこれでいい気もする。そう言い聞かせる。せめてもの手持ち花火をした。友人と、見知らぬベトナム人男性と、私との3人で。公園で花火を楽しむ私たちを、遠くから物珍しそうに眺めている外国人男性がいた。一瞬身構えたけれど、私たち、ではなくて、花火のみを熱心に眺めていることはすぐにわかった。あまりにも無害そうだったから友人が声をかけた。片言の日本語を話す彼は、目を輝かせて差し出した線香花火を受け取った。手に持つほうと火をつけるほうを教えて、3人で円になってしゃがみこみながら、線香花火の揺らぎを見つめた。夏休みのおもいで、という題の作文を出されたら、このことを私は真っ先に書くだろう。

 

部屋の扇風機はうんともすんとも首を振らなくなった。つくことにはつくが、首振りモードを押しても無視を決め込んでストレートに風を吹き付けてくる。友人に言われた「首寝違えたのかもね」という言葉がなんとなく気に入って、寝違えたんならまあしゃーないか、と思いながらスイッチをつけている。エアコンのない北海道の夏をしょぼい扇風機だけでは乗り切れそうもなくて、ハンディファンの購入を検討していたけれど、さあFrancfranc行くか、というその日に涼しくなってきた。夏の就活のために買った半袖のシャツも結局一度しか着ていない。夏が過ぎてく、とイヤホンのなかで椎木知仁が歌う。とっくに食べ終えたバニラバーの棒を未練がましく咥えている。私の愛してやまない夏が、今年もこうやって閉じていく。