SEASON3にあたる今回の対バンツアー「UMIMOYASU編」、仙台のゲストはキュウソネコカミ。
ちなみに「UMIMOYASU」とは「海燃やす」のローマ字読みで「海を燃やす、っていう有り得ない事を現実に変えるイベントを作りたい」というメンバーの意思のもとインディーズ時代から行われてきた対バンイベント。
神戸の先輩にあたるキュウソネコカミと、仙台の海を燃やすバチバチの一夜。私はフレデリックを好きになる前からキュウソのファンだったので、この2組での対戦カードを観られるのは夢みたいだった。
学生のうちに東北旅行をしてみたかったこともあり、北海道から前乗りをした。空港に向かうバスのなか、飛行機に揺られながら、仙台駅へと走るJRで、逃避行を聴きながら初めて降り立つ街に思いを馳せた。
初めて来たとは思えないほど仙台は優しい街で、つめたい風はそれでも北海道のものよりは柔らかい。栄える商店街のなかに仙台Rensaはあった。
Rensaはビルの階段を上って7階にあるため、ライブ前にそこそこHP削った。途中で給水ポイントまであった。私たちはオンリーランナーか?
10番台という神整番の甲斐あって最前列ゲット。もちろん上手、康司さん側。ステージは手伸ばしたら届きそうなくらい近い。康司さんセレクトと思われる、グッドセンスなBGMが心地よい。柵につかまり、目と鼻の先にあるタクロウさんのマイクをどきどきしながら眺めていた。
いざ先攻、フロム西宮、キュウソネコカミ。
【キュウソネコカミ】
- トウメイニンゲン(フレデリックカバー)
- ビビった
- メンヘラちゃん
- 推しのいる生活
- ピクピク
- MUKI不MUKI
- 役立たず
- ギリ昭和 ~完全版~
- DQNなりたい、40代で死にたい
- ハッピーポンコツ
- The band
最前列は初めてじゃないけれど、Rensaのステージと柵の距離は初めてってレベルで近すぎてクラクラした。歓声とともに登場し、持ち場についたメンバー5人全員がはっきりと見渡せる。とんでもないハコに来てしまった、と思った。
セイヤさんが「街を駆け抜けるずっと誰にも見えない自分が」と歌いはじめていきなり腰抜けた。1曲目から『トウメイニンゲン』カバー。
あまりにもキュウソの音になっていて舌を巻いた。「大事なことは本人に言えよ」というサビの歌詞、キュウソの曲にあっても違和感ないぐらいメッセージ性強いんだなって改めて気づく。この曲をキュウソが選んだの、意外だったけどものすごくわかる。ファントムヴァイブレーションに通じるものを感じた。
点火した会場に油を注ぐ『ビビった』。わっと拳が突きあがる。東北のお客さんってシャイなのかなと勝手に思ってたけど、全然そんなことなかった。
「ファッションミュージック鳴らせないで 口ばかり達者になりやがって グダグダ言ってるヒマあるならリスナーの耳をこっち向けろ」。フェスブームの最前線で一発屋だとか色々言われてきたキュウソが、同じ立場を切り抜けてきたフレデリックとの対バンでこれを歌う意味。胸が熱くなる。
キュウソなりのラブソングだという『メンヘラちゃん』。『推しのいる生活』を推し同士の対バンで聴ける幸せといったら。この一連のキラーチューン祭りに『ピクピク』を織り交ぜてくるところもニクくて好き。
MCの話も。冒頭でカバーした『トウメイニンゲン』について、セイヤさんは「いやーこの曲好きなんよね」と嬉しそうに言う。フレデリックには内緒ということで、リハーサルでも一切見せなかった隠し球らしい。
「トウメイニンゲンが好きすぎて、キュウソがもしフレデリックっぽい曲を作ったら、というコンセプトで出来たのが次の曲です!フレデリックからしたら、先輩ら何言ってんねん全然似てないやんって思ってるかもしれんけど(笑)」
そうして始まったのは『MUKI 不MUKI』。言われてみれば、サビを終えると余韻も残さずすぐ「打たない投げない蹴らない転がさない回さない」と耳に残るフレーズを畳みかけてくるところとか、ほんのりフレデリズムを感じる。2%ぐらい。
キュウソとフレデリックは6年前からの付き合いであるという。それこそ仙台で、同じイベントに出場していたのが最初みたいなことを話していたと思う(ごめんあんまり覚えてない)。個性が席巻する神戸のバンドシーンのなか、セイヤさんは当時、健司さんに相談されたことがあると話した。
「6年前健司に、自分らこのままでいいんですかねって相談されて。言い方悪いけど、あいつら音とか気持ち悪いままで売れたからほんとすごいよ!」
もちろんこの「気持ち悪い」とは、王道に媚びないあのフレデリック独特のスタイルのことを指してくれていた。最大級の褒め言葉。
「もっとこうした方がいいよって先輩ぶって言うのは簡単やけどさ。先輩面して変にアドバイスしなくてよかったーーー!!!変なこと言ってたら俺らもあいつらもここにいなかったーーー!!!!」
健司さんが相談したのが、誰にも真似できないスタイルを当時から貫いていたキュウソで良かった。キュウソとは違うベクトルに唯一無二の柱を打ち立てられたから、こうして同じステージで戦えているわけで。
当時よくやっていた曲を、と『役立たず』。売れる前に抱えていた真っ黒いフラストレーションの絵の具を、そのままキャンバスにぶちまけたような歌だと思った。
『ギリ昭和』。ばっちり年号コールが揃って気持ちいい。生み出された一体感をそのままに『DQNなりたい、40代で死にたい』へ。途中セイヤさんが、服をバッとまくってヨコタさんにお腹を見せる謎の行動をとっていた。ヨコタさんが首をひねると、満足そうに何事もなかったように戻るセイヤさん。なんなんだ。
「ヤンキーこわい」のコールアンドレスポンスとともに、セイヤさんは観客の上に乗って中央へ歩を進めていく。キュウソ慣れしていないフレデリックのファンを慮ってか、そろそろと歩く。
客席の中央、天井に吊り下げられたミラーボールのところへ届く。キュウソとフレデリックのファンに文字通り支えられ、セイヤさんはミラーボールに片手をかざしながらレスポンスを求めた。ミラーボールの下、観客の上、セイヤさんのもとへ一極集中する歌声。誰のファンとか関係なく垣根を越えてひとつになってるこの感じ、じんときた。
『ハッピーポンコツ』。「友達だけれど保護者みたいな "お前ら" に恵まれ」と歌詞を変えて歌う。汗でぐちゃぐちゃの前髪もシャツも、モッシュも何もかもまるで気にならなくて、いま今年で1番楽しいなって心から思えた。「あなたのおかげで楽しい」。「ハッピーポンコツトゥーザワールド」で拳を上げれば、多幸感にまみれて泣きそうだった。
楽しくて、幸せで、カンストしきっているところにヨコタさんが「君たちはフレデリックを信じてついてけば大丈夫だから」と叫んでくれてさらに涙腺がゆるんだ。後輩には負けねえって吼えたっていい立場なのに、自分たちのことは二の次で。なんて優しい先輩なんだろう。
そこからのラスト曲『The band』は、涙腺を壊しにかかってきたとしか思えなかった。ずるい。カッコ良くてずるい。前に武さんも好きだと言っていたこの曲、本当に歌詞が良い。
「染み付いたイメージは中々拭い去れず 少し逸れただけでも昔を求められる そこで意地を張るのか 流行に乗り換えるか」。6年前のエピソードを聞いたあとに聴くと、沁み方が尋常じゃなかった。
「やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね」って、ライブハウスという大好きな場所で、大好きなロックバンドが歌っているのを生で聴ける感動。「リアルタイムで出会えたから ライブが見れるの最高だね」。
キュウソにもフレデリックにも出会えて良かったな、仙台まで来られていろんな人とも出会えて良かったなあって、笑いながら泣きたくなるような幸福感に、ぐしゃぐしゃの頭のてっぺんからスニーカーの爪先まで満たされていた。ほっぺたが痛くなるほど笑って、泣きそうになって、手を振って踊って飛び跳ねて、心の底から幸せだった。すごく、幸せだった。
全力でやり切ったのか、最後の最後、セイヤさんの弦が切れて飛び出していた。
大団円、という感じにキュウソネコカミのステージは幕を閉じた。
本当に、今年イチってぐらい最高に楽しくて、いくら大好きなフレデリックといえどこれを越えられるのだろうかと思った。舐めてるわけじゃないけど、これを越える幸福感なんて想像もつかない。
でもきっと、この120%のライブを150%で呑み込んでしまえる自信も実力も、いまのフレデリックにはあるんだろう。生ぬるい馴れ合いで海が燃えるわけなんてないのだ。ありえないことをステージ上で形にしてしまうのが、今日、この夜なんでしょ?
次回、後編に続きます。
1音下げてのカバー。セイヤさん「健司声高けぇ!」
「誰かと幸せになったって」のとこでヨコタさんが結婚指輪見せびらかすくだり大好き
(後編→UMIMOYASU in 仙台 ~後編~ - あおいろ濃縮還元)