大通~すすきのにて行われる 「四番街まつり」。
その野外ステージで、THE BOYS&GIRLS、通称ボイガルのライブを観た。
ボイガルは2度目。「桃白白ナイト」 というマイヘア主催のライブ以来2年ぶり。
歌詞に 「新川通り」 だとか道民に馴染みのある単語がばしばし出てくるのと、熱いライブパフォーマンスが印象的だった。こんな泥臭くてかっこいいバンドが北海道にいるんだ!と嬉しくなったのを覚えている。
そのボイガルが無料ライブをするということで、ろくに曲も知らないまま出向いた。連日降り続いていた雨はどこへやら、空は気持ちよくカラッと晴れている。薄いワンピース1枚で来たのに日差しが暑くて、出店で手に入れたビール片手に歩いている人が羨ましく見えた。飲めもしないくせに。
4プラ(4丁目プラザというファッションビル)前の交差点は歩行者天国になっていた。ふだん車の往来する道のど真ん中に現れる簡易ステージ。その前に置かれたいくつかのベンチには、ファンと思しき若者や、休憩している老人、親子連れまで、老若男女いろんな人たちがいた。
「普段はライブハウスっていう狭くてタバコの煙がぷんぷんもくもくしてるとこでライブしてます」 と話すボーカル・ワタナベシンゴ氏。
「ここは気持ちいいね!タバコくさくない!」 と嬉しそうに言い放ち、メンバーからツッコミを食らっていた。仲良さそう。
10分ほどで楽器のセッティング、音出しを終え、リハーサルで『錆びないダイヤ』を演ると一旦ステージを降りる。15:20、司会に呼ばれてふたたびステージに立ったときには、ドラマーがパンイチになっていた。初っ端からなかなかの破天荒っぷり。
「ここにいる人たち全部知らない曲だと思う。でも、それでいいのだ。それがいいのだ」
7/8 セットリスト
1. 歩く日々ソング
2. ノンフィクションの約束
3. せーので歌うバラード
4. パレードは続く
5. ライク・ア・ローリング・ソング
アルキタのCMに書き下ろされた『歩く日々ソング』。「丸まってたカナリヤの鳩もそれぞれの決意を胸に飛んだ」 という箇所で、前方に指を向けるシンゴさんに思わずニヤッとした。鳩をシンボルマークに掲げる 「カナリヤ」 という手芸品店は、ここ大通にある。
「眠る街 ど真ん中で僕は 「その時」 が来るのを夢に見てる」。大通という栄えた街、その交差点のど真ん中でそう歌うシンゴさんを見ていたら、まだ1曲目なのに目頭が熱くなった。
風に煽られて機材が倒れたり、マイクスタンドが縮んで間奏のときに自ら手直ししたり、一時的にドラム以外の音がすべて出なくなったり、細々したハプニングはたくさんあった。でもそんなの全然気にならなかった。
時にステージを降りて、時に客席であるベンチの上に立って、アツく観客を巻き込んでいくボイガルはかっこよかった。楽しそうにリズムに合わせてうちわを降るおばあちゃん、食い入るようにステージを見つめる子ども。ライブハウスでは絶対に見られない光景が眩しかった。ロックは世代を越えられるのだと思った。
『せーので歌うバラード』の歌詞にも所々ニヤッとさせられた。「24時過ぎ丸山を追い越してった東西線」 「24時前一日の終わりを乗せた東豊線」 「ギターを持って逃げ出して雨に降られた南北線」、これらすべて札幌市営地下鉄のことだ。
あちこちに札幌を感じる歌詞がボイガルの魅力のひとつだと思う。東京やその他大都市のことを歌うバンドはあれど、札幌にフューチャリングした歌ばかり書くバンドは、私の知る限りボイガルくらい。道民としてはすごく嬉しい、こういうの。
「こんな嘘みたいに晴れた空の下」 と空を仰ぐシンゴさん。
「俺ら見るからに売れてなさそうでしょ?……『そうだね』じゃないよ!確かに売れてないけど!笑」
「俺らみたいな売れないバンドマン、俺らの仲間が西日本にたくさんいる。いま西日本がどういう状況かはみんなも知ってると思う」 と大雨災害のことを暗に示す。
「昨日は大阪でライブがあって。俺らは羽田から神戸に飛んでなんとか着けたけど、来れなかったバンドもいた。俺らの仲間もその中にいた」
「こんな晴れた空の下でライブができることを誇りにします。胸張ってやります」
言い回しなどだいぶ違うかもしれないけど、大体こんなニュアンスのことを話していた。自分たちに今やれることを全力で。そしてそれがボイガルにとっては音楽を鳴らし続けることだった。じんときた。
「THE BOYS&GIRLSという名前でやってるんだけど、覚えてなくてもいい。なんか変な奴らがよくわかんないこと歌ってたなって、帰ったとき、眠る前にベッドの中で思い出すだけでいい。変な奴らがいたなってそれだけでいい」
もうステージ降りないし暴れないから!ちゃんと歌うから!と言って始まった『パレードは続く』。今までも盛り上がっていたけれど、この曲でガラッと空気が変わったように思う。うまくいえないけどグッときた、この曲。
あっという間に最後の曲。シンゴさんが 「ライブハウスにしようぜ!……ここ空いてるけど、いいの?」 と、ステージとベンチの間にぽっかり空いたスペースを指すと、ライブハウス慣れしていそうな人たちがどっと押し寄せた。
『ライク・ア・ローリング・ソング』。曲に合わせて拳を突き上げて飛び跳ねる観客の様子は、もう完全にライブハウスそのもので。街中にライブハウスを作り上げてしまうボイガルすごいな。
シンゴさんはお客さんのうちわや腕をかじってみせたり、挙句ダイブして肩車された状態でしばらく歌ったり、好き放題やってた。お祭りのプログラムのなかのひとつ、というどアウェイなステージを完全にホームにしていた。
かっこよかった。がむしゃらで泥臭くてかっこよかった。たまたま通りがかったボイガルを全然知らなかった人のなかにも、なんかすごいことやってたなあって爪痕が残せたらいいなと思った。私もめちゃくちゃにわかだけど。
老若男女いろんな人たちがロックバンドの歌に触れて、魂に触れて、身も心も踊らされる風景はすごく美しかった。いい景色見せてもらったな~。
(※これはボイガル全然関係なくて、ただのお祭りのうちわの写真)
いい加減コブクロ横アリ2日目やその他諸々のレポのほうも書き上げますね。あおでした。