あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

年末の匂い

みそかでもなんでもない中途半端な年末、田舎のスーパー銭湯は家族連れであふれている。子どもがはしゃぐ声、たしなめる母親の声を聞きながら、とろみのある湯に浸かる。肩まで浸かる。温泉は好きだけれど、今までは「あったまるまで浸かり、のぼせる寸前で出る」という作業として処理していたのかもしれない。足の指のあいだにまで広がる湯のとろみを全身に受けて、はじめて、深い癒しが満ち満ちていくのを感じた。湯治、という言葉に思いを馳せる。ひとりで銭湯に入るときってどこを見ればいいものかわからなくて、内風呂では壁のタイル絵を、露天風呂では石のなめらかな表面とその色合いを眺めた。頭にのせたハンドタオルの角度を直してみたり、意味もなく肩に湯をかけたり、手持ち無沙汰だなあと思う。ジェットバスには10秒だけはいった。瓶のコーヒー牛乳、170円。こんなに高かっただろうか?休憩所で夫とオセロに興じ、コミックコーナーで推しの子の1巻を読んだ。もう一度風呂へいくと、先ほどまで暖かかった風は夕方の冷たさに変わっていた。雪が降る前の冬の匂い。年末だ、と思う。ジンジャーエールをのんで帰った。