10/4、Zepp SapporoにてMy Hair is Badを観た。
※言い回しなどは私の記憶に基づくため、正確ではないのでご了承ください。
【セットリスト】
- 君が海
- 青
- グッバイ・マイマリー
- 虜
- 浮気のとなりで
- ドラマみたいだ
- 彼氏として
- 観覧車
- 戦争を知らない大人たち
- 化粧
- 真赤
- アフターアワー
- 愛の毒
- クリサンセマム
- ディアウェンディ
- 元彼氏として
- lighter
- フロムナウオン
- ホームタウン
- 芝居
- いつか結婚しても
- 夏が過ぎてく
- 告白
En1. 惜春
En2. エゴイスト
「新潟県上越市から来ました、My Hair is Bad始めます」。
ニューアルバム 「boys」 の1曲目、『君が海』で火蓋は落ちる。アルバムリリースツアーなどとは銘打っていないにしろ、そこから『青』へと曲順通り進んでいく構成ににやりとした。
椎木さんはぎょっとするほど声がガラガラで、最後まで持たないのではないかとよっぽど思った。だけど『グッバイ・マイマリー』、「俺はその人の最初じゃなくて 最後になりたい」 と始まった『虜』と歩を進めるにつれて、徐々に燃え盛っていくライブの熱に触れて、そんなことは問題じゃないと思った。私は100点のライブを観に来ているわけではない。60点だって200%で出し切るMy Hair is Badが観たいんだ。
新アルバム曲にヒットチューンを織り交ぜ、ゆるやかに高まりつづけた客席のテンションは『彼氏として』で弾けた。「三角形が割れた瞬間 僕は四角になって」。それまで小爆発を繰り返していた黄色い歓声が、突き上がる拳に紛れてまるで気にならなくなった。昔の曲やらないかな、聴きたいな、とまさに思っていたので嬉しかった。
「気付いてしまったら忘れない 着ぐるみの中には人がいること 気付いてしまったら忘れない」。しんと静まり返った会場に、波紋のように椎木さんの言葉が落ちては広がっていく。
「君と話しているときの俺は 着ぐるみなのか 中の人なのか ねえ 俺の嘘に 気づける?」 そう言って始まったのは『観覧車』だったろうか。
深海のような、深い青色の照明にステージが染まる。マイクに口を近づけたまま喋り出さない椎木さんの表情は、真ん中で分けられた金髪に隠れてよく見えない。静寂と、青色。ライブハウスの空気が息苦しくゆるやかに止まる。
「女々しい、という言葉が、悪い意味で使われなくなりますように 女々しさのなかにある、あたたかさに気づけますように もっと強くなれますように」。『化粧』。
「飲めないお酒を飲んだのも 疲れていないフリしたのも 一秒でも隣にいたいだけだったの」。椎木さんの書く女性目線の曲は、ちぎれそうなほどに切なくて苦しい。3人を照らすライトは 「触れた唇 残した赤は あの子と会う前に落として」 という歌詞と同時に深い赤色に染まった。
「ブラジャーのホックを外す時だけ心の中までわかった気がした」。曲名言わなくたって照明の色だけでわかるよね?とでも言うように、目の覚めるような真赤な光がステージに満ちた。
『アフターアワー』から流れが変わったように思う。しっとりした曲からアップテンポへ切り替わった、というだけでなく、主導権を完全にMy Hair is Badに握られた。曲中に放つ 「ドキドキしようぜ」 って声に、何度だって私はドキドキしてしまう。煮立った血液は煙を吹いて、生きてる、って感じがすごくする。マイヘアのライブを観ていると。
『クリサンセマム』に差しかかる前に、バヤさんは自分のマイクをスタンドごと客席のほうへ向けた。歌ってくれ、って無言で煽るような姿勢が嬉しくて、全力で飛び跳ねて 「いないいないばあ」 と叫んだ。30秒にも満たないラブソングは起爆剤となり、次曲『ディアウエンディ』に向けてボルテージを高めていく。
「かっこいい方に進め 仕事でも勉強でも恋愛でもかっこいいと思う方を選べ」 「周りはかっこ悪いって言っても自分にとってかっこいいと思えればそれでいい」。そんな熱い言葉とともに歌われたこの曲の、「いらない、知らない、それでいいの?あれでいいの?決めていいの?」 という歌詞は過去イチで沁みた。ガツンとみぞおちを殴られるようだった。
『元彼氏として』が聴けたのも嬉しかった。この曲の歌詞、ほんとに最低で好きなんだよね。「前の彼氏の僕はどうだ 煙草吸わないし背も高いし 幼馴染だしすぐさま休み取れるし どうなの?」 なんて椎木さんじゃないと書けない気がして好き。
『lighter』に出てくる 「相槌を繰り返す僕はアレクサだ」「人の願いをただパケにして売ってた」 みたいな現代感に溢れる歌詞だってマイヘアの強みだなと思う。バヤさんはヘドバンでもするように激しく動きながらベースを弾いてた。「朝食の後には 珈琲を淹れてよ 安いのでいいから」 のあとの 「君の手で淹れて欲しい」 を歌っていなくていやそこ大事なとこじゃんって笑った。
「時代は進んで なんでもボタンひとつで出来るようになって でもいまこうやって狭い場所、狭くもないけど、ひとつの場所に何千人も集まって みんなで汗かくっていうベーシックなことしてる どうかしてるよ」 Zeppを見渡しながら椎木さんは言った。
「すごくない?みんな友達じゃないし 俺はみんなのことを知らない ここでしか会うことのない人たちが集まってる どうかしてるよ なんでそんなことしてんの? ……My Hair is Badが札幌に来たからだろ?」
じん、ときてしまった。ライブビューイングも生配信だってできるこの時代に、それでも揉みくちゃになって汗にまみれていたいのは、My Hair is Badが生み出す熱に直に手をかざしていたいからだ。火傷したって触れていたい。目の前で巻き起こる魔法を、圧倒的なステージを見ていたい。
「140字のTwitter 250円の牛丼 1円にもならなかったなんて言わせない、『フロムナウオン』。札幌まで来たんだ、後悔はさせない」
「リバイバルは続く 90年代のリバイバルも 2000年代のリバイバルだって始まってる 時代は流れていく 俺らも流れていく だから、消える前に遊ぼうぜ」 叫ぶように言う。歓声が弾ける。いつか消えてしまうからこそ今を全力で生きる、というずっと前から変わらないマイヘアの芯にグラグラきた。
「2020年 俺らで めちゃくちゃかっこいい年にしようぜ」。
「今からどうやってきゃいいの 明日にはどうなってりゃいいの わからないままで時は過ぎ」。サビ以外の歌詞はほぼ即興で喋る、音源化不可能なこの曲はMy Hair is Badの真髄だ。熱い言葉に、歌に、演奏に両肩を揺さぶられて、なんだか泣きそうなほど感動していた。なんでかなんてうまく言えないけど、ライブハウスでだけかかる魔法がある。
「あの頃……あの頃っていま思い浮かべた自分にとってのあの頃でいいけど、こいつの言ってることよくわかんないけどこいつが本気なことだけはわかるときってあるじゃないですか。男の人に告白されて、この人のことは好きじゃないけど本気なんだってことだけは伝わるっていうのない?……あった?モテるね」
そのあとに言った 「俺はいつだって こいつ本気だなって思われる人でいたい」 というのは、ずっと椎木さんが大事にしてる核なんだろうなと思った。マイヘアが手を抜いているライブなんて1度たりとも見たことがない。声ガラガラでも気にならなくなるぐらい、いつも本気で全力で。そういうバンドだから好きなのだ。
生で聴く『ホームタウン』があまりにも良くて泣きそうだった。音に乗せて淡々と紡がれていく新潟の情景とMy Hair is Badの軌跡。「愛している 愛されてる たまに愛していない でも愛してくれる」。ホームタウン、故郷のことを言い表すのにこんなにも適切な言葉ってあるだろうか。
「上越から全国 インディーズからメジャー 夢も現実になればただの現実だ あの頃の憧れがいまの途中経過」。マイヘアを組む前のシーンから丁寧に描かれてきたあとでこんなこと歌うの、本当にずるいんだ。「帰ってくる場所はもうここにあるから どこまででもいこう」。
椎木さんがマイクから口を離したって、バヤさんは 「愛している 愛されてる」 とコーラスを続ける。やまじゅんは同じフレーズをひたすらストイックに叩き続ける。新潟県上越市、この3人で育って、1年のうちほとんどをライブ行脚に費やせるのは帰るべきホームタウンがあるからだ。「上越 まだここで夢を見てる また旅に出る その荷物をまとめる ここから離れる 別れじゃなく出発だ」。思い返してもこの曲がいちばんグッときたなあ。上越のこの3人でMy Hair is Bad、っていうのをしっかり見せてくれた気がする。
「もし人生が1本の映画だったら、と考えて聴いてください」 とやさしく告げて始まった『芝居』。冒頭の不調が嘘みたいな、言葉のひとつひとつが染み入る歌声だった。すごくすごく良かった。
『いつか結婚しても』。これまで飢えたような目をしてバチバチにライブをする椎木さんばかり見てきたから、「大好きで大切で大事な君には 愛してるなんて言わないでいいね 毎日がなんだか退屈に思えても 毎朝、僕の横にいて」 のところを丸々お客さんに歌わせて嬉しそうにしてる姿を見て、なんだか自然と笑顔になってしまった。
生み出した一体感を『夏が過ぎてく』でさらにまとめあげ、本編ラストは『告白』。
「北北西を過ぎる 高速バスに揺られた イヤホンはなかった すっと不安になるんだ きっと心配はないさ ぜったい終わりは来るんだ」 のところも丸々歌わせて笑ってた。この日は、ありがとうってしきりに言ったり歌わせたり、ここにいる人以外興味ないだとか言ったり、いつもの本気度合いのなかにも感謝が透けて見えてなんかすごく微笑ましかった。
最後の 「ぜったい終わりは来るんだ」 と歌ったあとに頭を抱えて 「終わりたくない!」 って叫んで、あ~こんな良いライブ終わってほしくないな~~って少し寂しくなったし、演者も客も同じ気持ちなんだなあと思った。
アンコールの拍手に応え、まずはやまじゅんとバヤさんが出てくる。最近タピオカにハマっているやまじゅんは、狸小路商店街のワゴン車で売っているタピオカを女子高生の列に並んで買ったという。
バ 「女子高生と女子高生のあいだに挟まれて、いかついサングラスして並んでたもんね」
や 「同じ商店街で抹茶系のタピオカも飲んで、そっちのほうが好みだった!」
バ 「そうなの?美味しいんだ?良かったねえ」
嬉しそうに札幌で飲んだタピオカの話をするやまじゅんと、子でもなだめるように優しく相槌を打つバヤさんに癒されていると、椎木さんが現れる。
椎 「あ~、(ライブが)最高だね」
バ 「なにが?タピオカが?」
椎 「ちがうよ」
や 「(オフマイクで)タピオカは最高だよ!!!!」
バ 「なにも会話噛み合ってないよ!三つ巴で違う方向にいってる(笑)」
椎木さんは、北海道が好きで今年中にまた来たいと話した。来てー!案内するー!!とあがった声に、「そう?案内してくれる?行く行く」 と棒読みで答えていて笑った。「さすがに今年中は難しいかもしれないけどまた来たい。旅行で来ようかな」 と期待を持たせないように言ってくれたのも含めて好きだなあ。
アンコールは『惜春』。ライジングサンではリハにやっていた曲を、ワンマンの大事なところに置いてくれるの嬉しかった。
「最後の曲!『エゴイスト』!」 と椎木さんが叫ぶように言って崩れ落ちそうになった。最新アルバム曲をメインに組んだこのセットリスト、良かったのは本当だけど、寂しくなかったといえば嘘になる。アルバムツアーの様相を出しといて最後の最後にこんなマイナー曲持ってくるの本当にずるいな。
40秒ちょっとで嵐のように終わるこの曲にポカンとしてた人もいたけど、最後の 「すべて終れば もう、ない、それだけ」 を観客に歌わせて笑っていた、この突拍子もない終わり方がらしくて好きだと思った。
サバイブホームランツアー、昔から揺るぎなく変わらない核の部分と、良い方向へ柔らかく変わっていってる今のマイヘアがどちらも垣間見えるようないいツアーだったな。
会場限定盤 「tours」、2曲目で耳疑ったあとに笑ったの私だけじゃないですよね?好きです
やまじゅんが女子高生の列に並んで買ったという商店街内のワゴン車で販売しているタピオカ→(Pearl Lion TAPIOCA CAR (パールライオン) - 狸小路/スイーツ(その他) [食べログ])
同じく狸小路商店街、こっちのほうが好みだったという抹茶系のタピオカ→(抹茶カフェ リキュウ (抹茶cafe RIQ) - 資生館小学校前/カフェ [食べログ])
ブログにタピオカ情報貼ったの初めて。札幌のタピだと私はパルコのTEASIGNが好きです。なんの話?
ごく個人的な話をすると、ちょうどいま進路の壁にぶち当たっていて、この日のライブはドンピシャに刺さった。きっと芯があれば場所なんて関係ないし、周りの目も関係なく自分がかっこいいと思える方を選ぼうって、最後の最後で躊躇していた覚悟を完全に決められた気がする。私がこの先どこに行っても、My Hair is Badには全国どこかのライブハウスで会える気がしているし。