あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

2020年総括

2020年に読んだ本、観た映画、行ったライブ(有観客&配信)をまとめました。なかなか長いので、ブックマークでもして年末年始の暇つぶしにゆっくりお楽しみください。

 

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これは新千歳空港で食べた帆立とウニといくらのごはん

 

 

 

 

【本】→40冊

伊坂幸太郎「モダンタイムス」「フィッシュストーリー」

江國香織「とるにたらないものもの」「いくつもの週末」「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

大久保純一「ジャパノロジー・コレクション 広重」

大崎善生「傘の自由化は可能か」

加藤千恵「あかねさす 新古今恋物語

川上未映子「きみは赤ちゃん」「乳と卵」「ヘヴン」

窪美澄「よるのふくらみ」「じっと手を見る」

さくらももこ「そういうふうにできている」

島本理生「生まれる森」「リトル・バイ・リトル」「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」

芹沢桂「ほんとはかわいくないフィンランド

谷崎潤一郎痴人の愛」「春琴抄

西加奈子「ごはんぐるり」

東野圭吾パラレルワールド・ラブストーリー」「あの頃の誰か」「マスカレード・イブ」「怪しい人びと」「ラプラスの魔女」「嘘をもうひとつだけ」「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」「怪笑小説」

益田ミリ「心がほどける小さな旅」

宮下奈都「窓の向こうのガーシュウィン」「太陽のパスタ、豆のスープ」

村上春樹スプートニクの恋人」「カンガルー日和

ものすごい愛「今日もふたり、スキップで」

唯川恵「愛なんか」

柚月麻子「伊藤くん A to E

ポール・オースター「幽霊たち」

 

 

 

きみは赤ちゃん」全人類読んだほうがいい。読みやすい関西弁で面白おかしく、時にシビアに書かれていく妊娠・出産エッセイ。将来子どもをもうける可能性がある女性は読んだほうがいいし、子育てに携わるかもしれない男性はもっともっと読んだほうがいい。子どもをもたない人も、街ですれ違う妊婦さんや子連れのかたにきっと優しくなれるから読んだほうがいい。ぜったい彼氏に読ませようと思う。

 

内容もさることながら、細かい描写の光る「よるのふくらみ」が今年読んだなかでいちばん好きだった。好みは分かれそうだから勧めはしない。人間の醜くてどろどろした部分をこれでもかと描く小説が好きゆえ、そのツボにクリーンヒットした。朝井リョウ好きな人は窪美澄も好きそう。

 

これは一生の愛読書になるだろう、と思ったのは「スプートニクの恋人」。最初のページがあまりに隙がなく完璧で、何度も読み返してはうっとりしてしまう。

 

 

 

 

 

 

【映画】→54本

7月4日に生まれて

アナと雪の女王2

帝一の國

名探偵ピカチュウ

風の谷のナウシカ

恋は雨上がりのように

ミッドナイト・イン・パリ

おんなのこきらい

きっと、うまくいく

タイピスト

最強のふたり

パディントン

パディントン2

モンスター・ホテル

パターソン

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

マイ・インターン

ローマの休日

ティム・バートンのコープスブライド

ラストベガ

素敵なウソの恋まじない

鍵泥棒のメソッド

はじまりのうた BEGIN AGAIN

最高の人生のつくり方

ラスト・クリスマス

ツレがうつになりまして。

ブリジット・ジョーンズの日記

シャイニング

スイス・アーミー・マン

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

ラブ・アクチュアリー

モネ・ゲーム

ラ・ラ・ランド

マジック・イン・ムーンライト

ホリデイ

しあわせのパン

パンとバスと2度目のハツコイ

高慢と偏見とゾンビ

真珠の耳飾りの少女

グランド・イリュージョン

グランド・イリュージョン 見破られたトリック

ウォールフラワー

間奏曲はパリで

シング・ストリート 未来へのうた

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

オンネリとアンネリのおうち

キャロル

レオン

アバウト・タイム 愛おしい時間について

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり

バーレスクチェコ版)

クリスマス・カンパニー

ヲタクに恋は難しい

ア・ゴースト・ストーリー

 

 

 

 

 

映画館、サブスク、授業で観たものも含めました。金曜ロードショーなどで観た映画も「流し見じゃなく最初から最後まで観た映画であればカウントしてオッケー」としています。

 

生まれてこのかた映画に疎く、今年はとにかく10本は映画を観てみよう!というのがテーマだった。想定の5倍も観た結果、私はわかりやすいハッピーエンドの映画が好きだとわかった。あと洋画だとイギリス産が肌に合う。

 

単なる恋愛映画じゃない「恋は雨上がりのように」。恋愛映画に括るのも、青春映画と呼ぶのも勿体ない。17歳の女子高生にも、45歳のおじさんにも、夢中で打ち込めるきらめく"青春" は何歳になっても等しくある。曲もすごくいい。テレキャスターストライプ流れるタイミング天才。

 

3時間近くもあるインド映画「きっと、うまくいく」が私的ベストオブムービー。声に出して爆笑したし、思わず泣いたし、ドタバタコメディかと思ったら感情揺さぶられまくり。3時間あるのにずっと引き込まれる展開で飽きない。「臆病さを捨てろ。でないと50年後死の床で後悔するぞ」というセリフがギャンギャンに刺さった。

 

次点で「ラブ・アクチュアリー」が好き。最高のクリスマス映画。「タイピスト」「パディントン2」「マイ・インターン」「はじまりのうた」「ラ・ラ・ランド」などなどもすごく良かった。

 

 

 

 

 

 

【ライブ】→4本

1/22 夜の本気ダンス

2/24 フレデリック

10/10 フレデリック

10/18 UNISON SQUARE GARDEN

 

 

【有料配信ライブ】→8本

6/28 夜の本気ダンス

7/15 UNISON SQUARE GARDEN

7/19 フレデリック

8/22 UNISON SQUARE GARDEN

9/14 夜の本気ダンス

9/19 UNISON SQUARE GARDENa flood of circle9mm Parabellum BulletTHE BACK HORN東京スカパラダイスオーケストラパスピエBIGMAMAフレデリック

9/27 フレデリック

12/31 UNISON SQUARE GARDEN

 

 

 

配信ライブは、無料配信で視聴したフェスなどは含めず、きちんと最初から最後まで有料で観たもののみをカウントしました。

 

 

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2月、横浜アリーナ


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ヨコアリくんのうれし涙を売るなよ

 


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自粛明けて初めてのZepp


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ジャンパーとタオルの色味が奇跡的なマッチをみせた

 

 

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フェス飯や紙のリストバンド用意しておうちライジングサン開催したのが楽しかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと今年は、フレデリック横浜アリーナ公演に際して書いた文章を音楽文の月間賞に選んでいただいたこと、CD型短歌ZINEを販売できたことを誇らしく思ってます。来年こそは小説ZINE出せればいいな。

 

 

フレデリック横浜アリーナ公演にいたるまで、について書いた文章↓

横浜アリーナにばっくれる準備はできている - 終わらない旅をフレデリックと (2020/03/14) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

 

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QRコードを読み取ると…?

 

 

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CD型短歌ZINE『ゆめゆめ』 - アオイウミレコ~ド - BOOTH

↑CD型短歌ZINEの購入ページはこちら。売り切れたら増刷しますが、いまのところあと数冊しかないのでお早めに

 

 

 

 

 

今年の最初に「2020年やりたいことリスト100」をスマホのメモ帳に打ち込み、1年かけてチェックしていったのが達成感あって楽しかった。来年もやるべく早くもリストアップしているところ。

 

ちなみに達成したのは52個で、「10ヶ所以上カフェ開拓」「原稿料もらう」「クラフトビール専門店」「かたいプリンを食べる」「ファーストキャビンに泊まる」「シャボン玉吹く」「ベレー帽に挑む」「ギターを弾く」などがありました。ギターは弾かせてもらったものの圧倒的に適性がないことがわかった。弾いたは弾いたので無理くり達成カウントした。

 

達成できなかったのは「小樽ステンドグラス美術館」「フェリーで東北旅行」みたいな、どこかに出掛ける系が多かった。このご時世だから仕方ない。「スワッグ作り」「浴衣」「チャイを調合」「アフタヌーンティー」「カラーマスカラ」「バーに物怖じしない」なんかは来年頑張りたい。

 

 

 

それでは良い年末年始を。

 

 

あぐらをかかない

運命の人はいるとかいないだとか、いるとしたらそれは人生にふたり現れるのだとか、様々な運命論が提唱されて久しい。私が考えるに「運命の人」とは、ある人にとっての神や幽霊と一緒で、つまりいると思う人にはいるし、いないと思う人にはいないのだ。私の論では。

 

私の場合、「運命の人はふたりいる説」になぞらえれば、別れのつらさを教えてくれるというひとりめが初恋の人で、永遠の愛を教えてくれるふたりめが今の彼氏だと思う。初恋の人とは付き合ってもないのに烏滸がましいけど。

 

だけど、運命の人がいるにしてもいないにしても、運命とかいう綺麗な言葉にあぐらかいて怠けていちゃ百年の恋もだめになる。国中を探してシンデレラを見つけた王子様だって、見つけ出したことに安堵して愛を囁かずにいたら、身分違いの恋に疲れ果てたシンデレラが城の掃除夫と駆け落ちしても文句は言えない。バッドエンドは紡ぎ続ければハッピーエンドになるかもしれないが、ハッピーエンドも数年経てばバッドエンドで終わり得る。

 

運命だろうとなんだろうと、ろくに歩み寄る努力もせずなんとかなるだろうとたかを括っていれば、壊れるものは壊れる。タイミングや相性の良さにあぐらをかかないで死に物狂いでハッピーエンドをやり続けるしかない。王子様の白馬の足が折れたならドレスの裾たくし上げて自分で走るしかない。なんとかする、しかないのだ。

 

あ、もうだめだ。と思うたびに強引に人間関係を絶ってきた。部活もバイトも友達も何もかも。私がいなくなってもあちらに代わりはいくらでも見つかるし、私にしたってそうだと。今はそう思えなくてもいつかそうなると。実際そうなってきたけれど、今回ばかりは一時の気の迷いで投げ打っていい相手じゃないから、どんな小さな不安もとことん話し合って落とし所を見つけている。喧嘩はしていないものの、細かい軌道修正を繰り返してどうにかやってる。よく聞く「(運命の相手なんていないから)運命にするしかない」というのはどちらかといえばこういうことを指すのかな。

 

私は運命はあると思うけど、運命にあぐらかいてないで幸せは自分で掴みにいく。愛されていることに怠けないし、怠けさせもしたくない。いまはそう思っている。

 

位置について

生きている、ただ最近は必死で生きている。PMSが酷くて漢方を処方してもらった。それでも熱だけが依然下がらず、無理にバイトを休ませてもらって心も体もズタボロになった。すべてがんばりたいのに、今はなにもうまくいかない。そういうターンなのだと言い聞かせる。私は「がんばらなくていいよ」と言われることが苦手だ。がんばりたいから。がんばっていないと、いちど止まってしまうと、ずるずると悪い方向へ流されてしまうことは自分がいちばんよくわかっている。がんばらなくていいなんて言わないでくれと思う。無理をしないでほしいという心配の裏返しなのだということは知っていても、「がんばれ」って言ってくれればまた起き上がれるから。ときおり鳴るZINEの購入通知に生かされている。かなしみを打ち消すように、布団の中で効果測定のアプリをやる。すこし飽きたら青空文庫で「吾輩は猫である」を読む。生きていたい、と、死んでしまいたい、は抱き合わせになって腹の底に鎮座する。死んでしまいたいと零すたびに彼氏はおれがいるのにと悲しい声をだすけれど、だから飛び降りてしまわずに必死で生きている。すこし前まではピンときていなかった「明日もヒトでいれるために愛を集めてる」という歌詞の解像度がやたら上がって、熱くなった目頭を拭ってまた息を吸う。

 

ヤングアダルト

ヤングアダルト

  • マカロニえんぴつ
  • ロック
  • ¥204

 

編み重ねる

労働の予定がなかったからオフにしようかと思ったけれど、丸一日を教習所に費やした。眠気をこらえながらブルーのマーカーを引きに引いた。本の発送をするために街へ行き、目についたケンタッキーで昼食をとる。おばちゃんがたの井戸端会議を聞きながら、昔住んでいたまちで母とケンタッキーに行ったことを思い出した。小学校に上がる前まで住んでいたアパートの近くにはマクドナルドとケンタッキーがあり、月に何回かは母に連れられて子ども用のメニューを食べさせてもらった。二階席にのぼる幅の狭い階段のこと、連れていくと言ってきかなかったコロコロクリリンのぬいぐるみのこと、記憶の隅っこに転がっていたそんなことを細々思い出す。ファミリーマートで本を発送する。ロッキンオンジャパンに私の文章が載ったとき、自分の言葉が活字になって全国に並ぶことに対して打ち震えるような感動を覚えた。自分のつくった本が誰かに届く、というのは、それとはまた違った、体の底からじんわり広がって指先まで温まっていくような感慨深さがある。カフェにこもって効果測定のための勉強をして、また教習所にもどる。運転をして、また学科を受けて、バスに揺られる。スーパーの割引ワゴンを漁って明日の朝に食べるバターロールを買う。このごろは、"生きるために生きている" ような生活をしている、と思う。湯船に浸かるといろんなことを考える。免許や資格勉強のこと。引越しのこと。バイトをいつどうやって辞めるかということ。貯金のこと。望まない好意は迷惑というほどではないけど窮屈だということ。心に余裕がないと本も映画も摂取できないが、そういうときこそ音楽だけは染み入ってくること。取り留めもなく、いろんなことを。そうして今日を編んでいく。誰に褒められもしない生活は私が認めればきっと昇華できる。そうやって明日も生きる。湯船のなかで目を閉じる。

設計図

ひとりで生きていくものだと思っていたから公務員を目指していた。仕事とかバリバリできるタイプじゃないし、会社員を選んだら何度かの転職を経てややホワイトな企業に落ち着き、特に昇進することもないまま万年平社員として静かにキャリアを閉じていくのだろう、ということは容易に予想できた。それならば勤続年数と給料の比例する公務員になり、マンションや猫なんか買えるぐらいの経済力を得て人生を謳歌するのだと。消極的な理由から、そうした人生設計を立てていた。

 

でも、思い描いたどちらの人生もきっとifに終わる。公務員になれなかった私は、もうすぐ田舎に移り住み、そう遠くないうちに結婚するだろう。ひとりで生きていくほうが偉いとも、だれかと生きていくことが尊いとも、偏った論争を振るうつもりはない。どちらにも、だれにも計り知れない覚悟があって、それぞれの険しい道のりがある。メリットやデメリットを比べたりしたいわけじゃなくて、「私はひとりで生きていくのだろう」と物心ついた時から思っていたことが突然ひっくり返って、案外順応している自分に戸惑ってもいるし安心してもいる。ただただ複雑な気持ちでいる。そのことを、言葉にできない気持ちのことを、文字にして整理したくてこうして書いている。

 

私の彼氏は絵に描いたような健やかな人間である。温かい家庭で何不自由なく育ち、勉強もスポーツも仕事も要領よくこなす。俗に言うハイスペでスパダリなんだと思う。付き合う数年前から彼の人生設計はよく聞いていた。就職したらすぐにでも結婚したい。子どもは2、3人もうけて田舎に一軒家を買う。いずれはオープンカーと大型犬がほしい。絵に描いたような「幸せな家庭像」のお手本だな……と思っていた。

 

彼氏はモテない訳じゃないし、いい男だし、この先私と別れたとしてもすぐにほかの人を見つけて着々と理想の人生を叶えていくのだろう。私はそういう絵に描いたような家庭像に、強烈に憧れはしないけど、叶えるのなら私がいいと思ってる。都会に住みたいし子どもは1人でもいいし猫かチワワが好きだけど、それでも、自分ひとりだったら思いつくことすらなかった他人の人生設計に飛び込んでいけるの、すごく楽しそうじゃない?と現時点では思う。

 

消極的な理由で選び取ろうとしていた道のことは白紙に戻してしまえばいい。まったく新しい方角に舵を切ることは怖い。怖いけど、どの道に進むためにも無様に足掻くしかないんだから、歯食いしばってなんとかやってる。そういうことを最近はずっと考えていて、人生の転換期にいる実感をひしひしと噛みしめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結婚するだろう、なんて書いたらそれ自体も消極的に見えるかもしれないけど、私はずっと「この世で自分が一番大事だから、自分よりも大切な人間が存在するってどういうことなのか知りたい。それを見つけることができたら、そのひとと結婚したい」という思想を唱えていて、そして、ようやくその思想の果てを見たんだと思う。だから。

 

皮算用

つかの間の休みにマニキュアを塗る。青や黒や緑が好きだけど、最近スティーブ・ジョブズかというぐらい黒のタートルネックしか着ないから、暗い服装になるべく映えるように紫がかったピンクを塗る。休み、といっても接客バイトの休みであって、キッチンバイトと教習所通いは絶えずあり、"爪にとってのオフ" であるというだけで私自体は稼働し続ける。最近は、寝る前に交わす彼氏との電話と、ZINEをつくっているときだけが楽しい。もしたくさん売れて収益が出たとしたら何を買おうかと、売らぬZINEの皮算用をしているときがいちばん楽しいかもしれない。ブルーライトカットメガネが欲しいな、クリアのやつ。

 

こんなに運動神経が悪くて運転なんてできるのだろうかと思っていたけど、そして初ドライビングはあまりにも絶望的だったけれど、3回目ともなるとかなり慣れてきた。貴族のような運転がしたい。でも、気のせいだったら申し訳ないが、私と同い年だという先生からほんのりと下心めいたものを嗅ぎ取ってしまって居心地が悪くなった。あの、ほんの少しだけ下心を抱かれているときの、本人すら気づかないぐらいの妙な優しさ、みたいなものが苦手だ。甘ったるすぎる炭酸飲料を飲んでいるときのような気分になる。甘ったるい炭酸飲料といえば、時たま自販機で見かけるファンタのルロ味というのが気になっている。絶対舌に残るタイプの甘ったるさだろうなあ、と勝手に思ってる。

 

列をなす灯

慣れるまでは8時から、といわれていたバイトが4回目の出勤にして7時からになった。6時台の外はまだ仄暗く、心なしか空気も湿っている。犬の散歩をさせているおばあさんも、工事のおじさんがたもまだいない。まちは半ば眠っていた。最近観た「パンとバスと2度目のハツコイ」という映画を思い出す。主人公の女の子がうんと早起きしてまでパン屋で働くのは、まだ眠っている早朝のまちを見たいからだという。白く灯った蛍光灯の群れのなか、1本だけオレンジに光るものがある。朝と夜の境目みたい。オレンジの蛍光灯からこちらは夜、あちらは朝、といったふうに。退勤後、ホットコーヒーを買う。クーポン利用で80円。もうマフラーが必要なほど寒い北海道で、ホットコーヒーは家に着くまでのカイロ代わりを兼ねうる。手っ取り早く引越し費用を貯めるための単なるつなぎとして選んだバイトだけど、私はやっぱり田舎のコンビニエンスストアで働くのが好き。