あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

晴雨

ほんとうに幸せな時って文章を書こうと思えない。だからこの1年は和紙みたいにペラペラした言葉しか捻り出せなかったんだと思う。でも不幸な時ほど筆が乗るというわけではない。切羽詰まって余裕がない時とか、絶望した時なんかに私は筆がするする動く。だから学生時代、特に就活めいたものに取り組んでいた時期は筆のノリが絶好調だったのかもしれない。夏日を迎えた今日、今年初めて半袖を着て、夏のはじまりみたいなぬるい夜風を肌に受けたらなぜか文字を書きたくてたまらなくなった。

 

あと数日で25歳になる。誕生月にかこつけてずっと欲しかったこまごましたものたちを買っている。無印良品のリップエッセンス。今流行っている形のものよりもっとつばが広くて農家っぽいバケットハット。石鹸落ちのクッションファンデーション、お湯で落ちるブラウンのマスカラ。羅列したら買いすぎで引いたけど、まだあと晴雨兼用の日傘と、花束をそのまま活けられるぐらい大きな花瓶、木かラタンでできたティッシュケース、アウトドア用のコップとLEDランタンがほしい。あまりにも強欲。少し前までは、黒髪の人は黒い眉毛やまつ毛に、茶髪の人は茶色にするのが当たり前で、でも黒髪かつ顔のキツい私は黒いアイライナーやマスカラを塗ることでより強い顔面になるのが少し嫌だった。今はドラッグストアに色とりどりのカラーマスカラが並び、黒髪の人でも茶色やピンクなんかのコスメをつけて垢抜けようという風潮が広がっていて、生きやすくなりましたわとつくづく思う。ブラックかアッシュグレー以外の選択肢が目の前にひらけたことが嬉しい。眉毛とまつ毛を茶色くした鏡の中の私はちょっとだけ、本当にちょっとだけ前よりもやさしく見える気がして、すごく嬉しい。

 

 

ところで今日は横断歩道に差し掛かるたびに信号に引っかかった。余裕のない時なら運がないなあって落ち込むこともあるが、今夜は柔らかい夜風にほだされて、ゆっくり歩けてラッキーだなと心の底から思えた。