「女々しさ」 を武器にする 「強さ」

 

back number?あの女子中高生に人気の女々しいバンドでしょ?と思っているあなた。大正解です。

 

ボーカル・清水依与吏 (しみずいより) 氏の作る曲は、そりゃもう女々しい。そこまで言う?ってことまで歌にしちゃう。

 

でも。確かに女々しいけど、女々しさを武器にできる強さが、back numberには備わっていると思うのです。依与吏さんは女々しいけど、弱っちい男じゃないんだよ。ってことを、いちback numberファンとして訴えたい。

 

 

 

たとえば、男子高校生の淡い恋心を歌う『ハイスクールガール』という曲。

 

   ああ明日になったら 君が彼女になってないかな

   そうしたらもう何もいらないのにな

   君がいないとたぶん死んじゃうんだよ

   目の前にいなければこんな簡単に言えるのになぁ

 

女々しさ全開フルスロットル。ある女の子のことが好きでたまらないのに、脈がないから告白する勇気もなく、悩み抜いた挙句 「どうしようどうしよう ああなんか眠くなってきた」 とか言い出す始末。がんばれよ少年!!!

 

これだけで終わるなら、アプローチもせずただ好いてもらおうと思っている、考えナシな男子高校生の戯言です。1番最後の歌詞は、こうなっています。

 

   この想いが早く溢れ出してしまえばいいのに

   間違えて口が滑っちゃえばいいのになぁ

 

お分かりでしょうか。この主人公は、ただ何も考えず 「あの子が彼女になってくんないかな~~」 ってバカみたいに嘆いてたわけじゃありません。明日になったって君が彼女になってるはずないことも、想っているだけじゃ何も変わらないことも、おそらく脈がないことも、全部わかったうえで嘆いてるんです。

 

間違えて口が滑っちゃえばいいのになぁ」 と最後に付け加える少年は、間違っても自分の口が滑らないことを、ちゃんとわかってます。どうにもならないから嘆くしかないのです。はい、女々しい自覚アリアリです。

 

 

 

依与吏さんは、自分にひそむ 「女々しさ」 を自覚したうえで、それを客観的に見て、さらに共感のできる名曲に落とし込む 「強さ」 を持っています。

 

女々しいけど、弱っちくなんかない。自分の弱さをさらけ出せる人って、めちゃくちゃ強いと思うんですよ。ましてや弱い部分を売りにするなんて、ものすごいことやってる。

 

女々しさをブランド化して切り売りしてる。しかもバカ売れ。「自分の弱みを商品にしてください」 って言われて、成功させることのできる人がどれだけいるだろうか。

 

そこそこヒットしてきた時期に『ネタンデルタール人』なんて歌を出すのも、相当度胸がないとできないと思います。「僕も天才ってチヤホヤされたいのに」 「オシャレ!大好き!って言われたいのに」 なんて思ってても普通言えない。売れないインディーズバンドのミニアルバムに入ってそうなのを、依与吏さんはCMソングのカップリングに持ってきちゃう。とんだ度胸。

 

 

 

ではもうひとつ。『高嶺の花子さん』の歌詞を、改めておさらいしてみましょう。

 

   会いたいんだ

   今すぐその角から 飛び出してきてくれないか

 

おいおいおい?この主人公、「会いたいんだ」 なんて男前なこと言うと思いきや、「角から飛び出してきてくれないか」 ですよ。どんだけ古典的。会いたきゃLINEしろ。

 

とはいえ私も消極的な人間ですから、気持ちはわかります。相手は超絶キレイなうえに、友達の友達という微妙な関係。連絡をとる口実がない、あるいは連絡先を知らない可能性すらあります。会いたいなんて、心の中でしか言えないわけです。

 

この主人公は 「君を惚れさせる黒魔術は知らないし 海に誘う勇気も 車もない」 のに、「でも見たい となりで目覚めて おはようと笑う君を」 なんてひと足飛びに言っちゃいます。朝に隣にいる関係って……。その妄想ちょっと待った。

 

ただ、こんな言葉が出てきますね。

 

   偶然と夏の魔法とやらの力で 僕のものに

   なるわけないか

 

君がいきなり角から飛び出してこないことも、朝を共に過ごせないことも、僕のものにならないことも、ぜーーーんぶわかってるんです。彼氏の有無や好きなアイスの味は知らなくても、それはちゃんと知ってます。大体タイトルからして 『高嶺の花子さん』です。間違っても手の届かない高嶺の花を好きになっちゃった、てなもんです。

 

僕のものになるわけはない。そのことを前提に置き、それでも好きだってことを5、6分かけて歌いきってる。客観的に自分の女々しさを見つめ、ヒットチューンに落とし込める依与吏さんはなんて強いんだろうか。

 

 

 

たまに有線で、俺たちは別れてしまうけどお前をずっと愛してたぜ、的な歌を耳にします。おそらく振られてるくせに、酔いしれて美談にすり替えようとしていて、しかもそのことに気づいていません。自覚症状がないぶん、そっちのほうがよっぽど女々しいし弱っちいなと思うのです。

 

back numberにも別れたあとの歌は多いけれど、依与吏さんは過去を美化しない。好きだったんだよってうだうだ引きずりながら、でもちゃんと前を向かないといけないことをやっぱり知っている。「それに今君を考えているのだって 引きずっていれば削れてなくなるって計算の上さ」 なんて『あとのうた』で言ってたりします。

 

 

女々しさだって、立派な武器になる。自分が甘ったれてるとも知らずにカッコつける人より、カッコ悪さをさらけ出して商品として売り出せる依与吏さんのほうが、何百倍もカッコよくないですか。back numberは強い。強いよ。女々しいけどね。

 

女々しい女々しいってさんざん言ってきましたが、『SISTER』のように力強く背中を押してくれる曲もあるので、よかったら聴いてみてください。

 

ちなみに私は依与吏さんよりもベースの和也さんが好きです。あおでした。