2017年11月19日、札幌ファクトリーホールにてフレデリックを観た。
この夏、フェスで3回もフレデリックを見る機会があった。初めてのワンマン。どきどき。
物販付近にどどーーんとあった。
マーブルラババンごっつかわいい。わかりづらいけどこのTシャツは例のUT。確か康司さんが着用してたほう。
【11/19 セットリスト】
- オンリーワンダー
- KITAKU BEATS
- オワラセナイト
- 愛の迷惑
- うわさのケムリの女の子
- ミッドナイトグライダー
- まちがいさがしの国
- みつめるみつあみ
- ナイトステップ
- スローリーダンス
- ディスコプール
- パラレルロール
- かなしいうれしい
- シンクロック
- リリリピート
- オドループ
- TOGENKYO
En1. FUTURE ICE CREAM
En2. たりないeye
グイグイいったら3列目まで来れた。康司さんがばっちり拝めるベストポジション。
勘のいい方は既に察しているだろうが、私は、双子の弟であり作詞作曲を担うベーシスト、三原康司をもっとも推している。
フェスでのステージがそのバンドのいい所をぎゅっと凝縮したダイジェストならば、余すことなく魅力を堪能できるワンマンライブはノーカット版であると思う。
ホールという大きな箱のなかに、一夜限りの桃源郷が現れる。2時間ちょっとの楽園にいざなわれる私たち観客は、今宵、共犯者だ。
「フレデリック、はじめます」。
お馴染みのアナウンスとともに火蓋が切られる。11月の北海道はすっかり冬だけれど、ライブが始まればすぐ、Tシャツ1枚でも暑く感じるほどあたたまっていく。
初っ端からかまされる『オンリーワンダー』。自分は自分でしかないことを、誰もがオンリーワンであることを教えてくれる。
「扉を開くのは君じゃないのか」 と突き放すように背中を押してくれる、甘やかさない優しさ。 「みんなちがってみんな優勝」 と歌うときに健司さんがいつもする、左手を振り上げるような仕草にぐっとくる。
いきなりだけど、私は推しの 「女の影」 に弱い。キュンとくる。推しの結婚指輪とか、のろけ話とか、萌えない?
その観点からみると『KITAKU BEATS』はたまらなすぎる。
「僕の隣でそっとささやきあったり マスカラ塗っちゃったりしていて」。ここ。マスカラって、男性のボキャブラリーからは出てこないと思う。化粧品なら、普通は口紅やファンデーションが先に浮かぶだろう。実際に彼女がマスカラ塗り直してるところを観察していないとまず出てこないと思う。女の影。たまらん。
変な考察挟んでしまったけど、ライブで聴く『KITAKU BEATS』はほんとに格別。「だから今夜は帰りたくないBeat 帰りたくないMid Night」。わかる。始まって2曲目なのにもう帰りたくない。
『愛の迷惑』も好き。
「あなたに出会えて私はとっても迷惑なんです とっても迷惑なんです 心ゆらゆら迷惑なんです」。ここでいう 「迷惑」 って、言い換えれば 「有り余るほどの幸せ」 みたいなことだと解釈してる。「幸せなら手を叩こう」 というところで頭上に掲げた両手を叩くお客さんがちらほらいた。愛のある光景。
『ミッドナイトグライダー』の、「こないだこんなことがくだらなかったとか話したいんだ」 「どんな夜もくだらなかったとか笑いたいんだ」 って所も。
歳を重ねるにつれ、くだらない、ってことがどれだけ貴重で大事なのか身に染みるようになってきた。くだらないことで笑っている瞬間や、それを共有できる人って本当に大事だ。
ここらでメンバー紹介の様子も記しておく。
「大空と大地、の北海道に合わせて草生やしてきました。ボーカル三原健司です」
緑に染めた毛先を見せびらかしたくて仕方ないらしい健司さん。ややウケていた。
向かって右側にいる康司さんを示し、
「フレデリックの作詞作曲と、グッズのデザイン……デザインって監修じゃないで?イチから全部作ってくれてるベーシスト三原康司です」
「俺、寒さに弱いんですけど」 と、紹介を受けた康司さん。
「そうなん?」 兄は知らなかった模様。
「北海道ってもう来るたびに寒いんですけど (笑)、最近、北海道に来て寒さを感じるたびに今までのライブのこととか思い出せるようになってきて」
拍手が沸き起こり、健司さんはニッと笑って 「俺の弟ええこと言うやろ」 と誰よりも嬉しそうだった。兄弟愛たまらん……!
お次は、「もうすぐクリスマスやんな?北海道ではじめて初雪見たんやけど」 とギターの隆児さん。
「俺らにとっても初雪やけど?……隆児のプライベート知らんしな」 健司さんがぽつりとこぼす。
「クリスマスにちなんで髭を生やしてきました」
「それ言えばよかったわ……クリスマスにちなんで毛先を緑にしました~」
ドラムの武さんは、「北海道のみんな、ほんとにこの曲ライブで聞くの初めて?初めてとは思えないほど盛り上がりがすごいんだけど」 と笑っていた。
ライブ中、にこにこベースを弾く康司さんをひたすら眺めていたのだけど、健司さんから漂う色気にもちらほら目を奪われた。健司さんのまわりだけ湿度高そう。霧のような色気。
『みつめるみつあみ』という曲。サビの歌詞は 「みつあみをほどいて 湖を泳いで わしゃわしゃの髪にトリートメント染み込ませといて」 となっている。ここ歌う時の健司さん色気すごかった。艶っぽい歌詞なわけでもないのに、なんでこんな色気たっぷりに歌い上げられるんだろうか。
それとこの曲にも女の影を感じる。三つ編みをほどいたあとの髪のうねり具合なんて、見たことないとわざわざ出てこない。
ミニアルバム 「TOGENKYO」 に収録されている7曲のうち、なんと4曲に 「踊る」 「ダンス」 といったフレーズが含まれている。
その次に多く含まれているのが 「雨」 という言葉で、3曲に登場する。
(ちなみに 「泳ぐ」 という言葉が出てくる曲も3曲ある)
「雨の中で踊ることに喜びを知る意味がある」 と歌う『スローリーダンス』には、「踊る」 「ダンス」 「雨」 といったTOGENKYOのなかでも象徴的なフレーズが散りばめられている。逆境を乗り越えることで本当の喜びを噛み締められる、みたいなことだと思ってる。「せかされてもあせらないで踊りたい時踊ればいい」っていうとこも好きだな。
『シンクロック』という曲。健司さんは 「たった2時間ちょっとのワンマンの為に 君はどれくらい心揺らしてくれんの」 と詞を歌い替えた。後半はうろ覚えだけど、「たった6文字のこのバンドで 僕はずっと思い描いていたんだよ」 みたいに続ける。
「今この日をこの瞬間を待ち望んでいた」 という歌詞は、フレデリックから観客に向けたメッセージのようにも、観客からフレデリックに宛てたメッセージのようにも思えた。
『オドループ』は言わずもがな真骨頂。「カスタネットがほらタンタン」 のくだり、ハンドクラップの揃いようが半端ない。『かなしいうれしい』のも相当すごかったけど。
本編ラストは『TOGENKYO』。
この頃、大学生活に疲れていた。死ぬ気で受験してまで、なんでこんな地獄みたいな場所にいるんだろうと思っていた。
「天国だって地獄だって 楽園は君にあったんだ」と健司さんが歌った時、なんだかハッとした。ライブで直接聴いてはじめて心に来るものがあった。
自分で選んで勝ち取った地獄みたいなこの場所が、私にとっては楽園だし、桃源郷なんだな。夢にまで見た理想郷が天国のような場所だとは限らなくて。今いる場所をきちんと大事にしたいと思った。
本編が終わり、アンコール1曲目は『FUTURE ICECREAM』。フロアに染み渡るバラードのあとは、健司さんがこのツアーにかける想いを語ってくれた。
「夢がひとつあるねん。聞いてくれる?」
「このバンドを始めたのは、弟の康司が作った曲を歌いたいと思ったからで。康司の才能に嫉妬もした。いろんな音楽を聞いてきた中で、康司の作る音楽は本当にすごいと思った。康司の作った曲を歌えるのは俺しかいないと思うんよ」
そう話す健司さんと、それを目を潤ませながら真剣に聞く康司さんと、同じく耳を傾ける隆児さんと武さんと客席と。すべてが胸に迫って涙腺が熱くなった。
このツアーは、2018年、フレデリックの地元神戸でのアリーナ公演に向けたものであると健司さんは続ける。
「まだもっともっと連れていきたい。アリーナ公演っていうのは距離も遠くなるけど、心の距離は絶対に近くありたいと思ってて。北海道で見たこの景色を絶対に忘れない。この景色を神戸ワールド記念ホールまで持っていきます」
「このツアーのテーマに、足りないものを補う、っていうのがあって。正直俺ひとりでも弾き語りはできるし、2時間ワンマンだってできるねん、俺プロのミュージシャンやからさ。でも俺はベースは弾けないし、ギターだってうまくもない、ドラムだって叩けない」 康司と隆児と武くんと、みんながいないと成り立たない、といったようなことを言っていた。
「みんなが、じゃなくて、あなたが足りないんです。あなたひとりが、あなたの意志が足りないんです」
「もっともっとあなたの声を聞かせて。みんなの、じゃなくて、あなたひとりの声を聞かせて」
そうして始まった『たりないeye』。このツアーは、この曲を届けるためだけに用意された舞台なのだと思う。
「僕らの景色が映った」 という箇所に差しかかって、そういえばツアータイトルは 「ぼくらのTOGENKYO」 だったなと思い出す。
2018年4月30日、神戸ワールド記念ホール。故郷での初アリーナ公演。
新たなスタートを切るための、助走。それがこの全国ツアーだった。今日フレデリックが作り出した光景は、きっと初アリーナ公演を形作る一部になる。私は神戸までは行けないけれど、この景色をどうか神戸まで連れていってほしいと思った。
屋内ライブならではの美しい照明だとか、『うわさのケムリの女の子』のスモークや 『ディスコプール』前のレーザービームといった演出、ミニアルバムツアーなのに『RAINY CHINA GIRL』を演らないという攻め攻めのセトリ、どれもが素晴らしかった。本当に来てよかった。
最後に会場写真の撮影があった。カメラを構えた健司さんがやって来て、「はい、とーげんきょー!!」 という掛け声で撮って帰っていった。かわいい……。
このブログ、あまりにまとめられなくてお蔵入りにしかけたんだけど、神戸ワールド記念ホール公演の前に上げておこうかと。長くなってしまいました。学校で書くレポートの1.5倍は分量あるぞこれ。
あおでした。