あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

エデン

不思議な夢を見た。とはいえ私が見る夢というのは大抵シュールで不思議なものが多い。こないだのは、ドライブスルー専門のマクドナルドの店員をやっていて、サーモンのマリネが食べたいと言い張る爺さんにそんなものはマクドナルドに置いていないと懇々と説明する夢だった。夢日記をつけると精神が崩壊するとかどうとか、そういう話を聞いたことがあるから日課にするつもりはないけれど、印象的な夢だったので書き残しておこうと思った。

 

夢はサカナクションから始まる。さっそく意味がわからないけど、私にだってわからない。とにかく夢はサカナクションから始まる。Tシャツを着て首にタオルを掛けた、サカナクションのファンと思われる女性が、満面の笑みで胸に分厚いDVDを抱いている。聖書にも見える厚み。パッケージには「楽園」の文字がある。夢というより、よく出来たドキュメンタリー番組を見ているようだった。興奮したように頬を上気させる女性は「エデン、サイコーでした!」と言う。楽園と書いてエデンと読むらしかった。サカナクションにそんなツアータイトルあったっけ、と思う間もなくシーンは切り替わった。

 

荒廃とした遊園地のような場所が映る。蛇を模したジェットコースターがあり、所々に血のように赤い林檎のレプリカが置かれ、ここは「エデン」をテーマにした遊園地なのだと気づく。カメラはゆっくりと蛇のジェットコースターを引きで映し、次に作り物の大樹を映す。落ち着いた声の男性ナレーターが、遊園地を紹介する何事かを喋っている。変わった大樹だった。ハリー・ポッターに出てくる暴れ柳のような形をしている。ぶら下がった枝には赤々とした林檎が成っており、林檎のひとつひとつは編んだ枯れ草で覆われていた。スーパーで買う林檎に被せられている白い網状のあれ、の枯れ草版。ぼんやりとナレーションを聞くと、男性の声はもはや遊園地の話などしていないことに気づく。男の声は言う、「ジェームズは、血でその足を洗いました」。なんだ、何の話だこれは。ゾッとする間もなく、画面は切り替わる。

 

ヨーロッパ系だろうか。濁ったブルーの目に、皺だらけの白い肌の、厳格そうな顔つきをした老人の顔がアップで映っている。首元まで見える古めかしいコートからするに、中世かそのあたりの人間だと思った。厳格そうな老人は次の瞬間、その右目を眼帯に覆われていた。先ほど遊園地について話していた男性のナレーションが、この年に流行した謎の病について話す。眼帯を外した老人の右目は、左の鋭い眼光とは打って変わり、あどけない少年をも思わせる若々しい目になっていた。「クラン中毒に罹った患者は中性的な目となりました」とナレーターは言う。「しかし」と続けると、老人の顔に黒いもやがかかっていった。

 

 

‪「クラン中毒患者が死んだのは目だけではなかったのです」

 

 

 

 

 

 

 

そこで目が覚めた。グーグルに打ち込んで検索しても、クラン中毒なんていう病はなかった。サカナクションはエデンという曲を出していなかった。エデンをテーマにしたテーマパークも、海外はわからないけど、日本にはない。クラン中毒に罹った患者が目以外に何を患うことになったのか、わからなかった。何から何までわからなかった。不思議な夢を見た。