あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

松本をあるく

日帰りで松本に行ってみたい。電車に乗って、ひとりで。ここ1年ほどずっとそう思っていた。とはいえなかなか機会がなく、ずるずる先延ばしにしていたのだけど、ちょうど観たかった「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」という展示が松本市美術館で行われるという。これまたちょうどよく現在私は無職で、平日のスケジュールは無限に空いている。行きたい店が軒並み開いている木曜に敢行することとした。

 

松本、もとい長野県にはほとんど行ったことがない。高速バスの休憩で立ち寄り、安曇野のむヨーグルトをテキーラショットのごとく一気飲みしたのが唯一の上陸経験。

 

 

電車に乗り、松本駅に到着したのは9時ごろ。やたら寒いと思ったら12度だった。まずは「栞日」で腹ごしらえをした。ホットジンジャーとハニーバタートーストを頼み、2階の書店も兼ねたスペースへ。ちなみに私が飲食店でつい頼んでしまう三大巨頭は「メロンソーダ」「自家製レモネード」「自家製ジンジャーエール」である。格子型に切れ込みの入ったトーストに、たっぷりかかった蜂蜜とバターが水たまりをつくっている。よい空間でよい朝ごはんを食べてしまった。

 

次はお目当ての松本市美術館f:id:bloomsky:20230525190845j:image

ウィリアム・モリスは、最近セリア(百均)に進出したことで若者に人気が再燃したイメージがある。インスタで花嫁DIYを検索すると、みんな何かしらモリスアイテムを取り入れている。私は「アーツ・アンド・クラフツ運動」について勉強したいなと常々思っていた。フランク・ロイド・ライトは建築家として有名だけど、私的には浮世絵のコレクター&バイヤーとして知っていた。

 

アーツ・アンド・クラフツ運動は、1880年代、ヴィクトリア朝時代のイギリスにはじまる。産業化によって大量生産が可能になると、安く粗悪な商品が流通するようになった。ここで、機械化が進む世の中を危惧し、手工業のよさに立ち返ろうと提唱したのがウィリアム・モリス。余談だけど、その動きに影響を受けた柳宗悦が始めたのが「民藝運動」というわけ。産業革命の時代にモリスが抱いた危惧は、そのまま現代にも通ずるものがあるね。(ていうかモリスの作品が百均で売られてるのは壮大な皮肉か?私も買いましたけど……)

 

モリスの独特な総柄、実際見るとすごく緻密でかわいい!この柄のカーテンやら壁紙やら、すごく素敵だったんだろうな。「柳の枝(Willow Bough)」のパターンが気に入って、ミュージアムショップでポストカードと布製のしおりを買った。パッと見は地味なんだけど、枝葉のしなり具合が軽やかに模様を作り出していて、すごく計算して描かれたんだろうなと思う。

 

 

 

 

 

 

ここから草間彌生の写真載せるので、集合体恐怖症のかたは爆速スクロールするか閉じてください。

 

 

 

 

 

 

 

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先ほどの柳のグッズと、草間彌生のポストカードはこちら

 

 

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特別展の半券で草間彌生の展示も観ることができた。美術の教科書でしか見たことがなく、本物を目にしてみたいと思っていた。


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唯一撮影OKだったカボチャ。幼い頃から幻覚に悩まされていた草間彌生は、逃れるためにそれらを絵に描き始めたのだという。背筋がゾワッとするような水玉模様の連なりは、幻覚に由来していると思えば納得がいく。


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サイン!2017年って、思ったより最近だ。

 

どでかいカボチャの他にも、いい意味でゾクッとする作品がいくつかあった。印象深かったのは鏡張りの部屋に20秒間閉じ込められる展示。鏡張りの箱の中にひとりきり、無数の丸いランプの光があたりじゅうに反射して、ミラーボールの内部にでも閉じ込められた気分になる。無数のいのち。それを見ている私は、その中のひとつに過ぎない。そんなことを考えた。草間彌生が自らを「前衛芸術家」と称するわけが、身をもってわかった。不思議な体験だった。

 


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ジャングルの奥地で野生化したパックンフラワー


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どこもかしこも水玉にあふれている

 

 

11時半、ちょっと早めのお昼を食べに「時代遅れの洋食屋 おきな堂」へ。しかしこの女、9時にトーストを食べていたからお腹はペコペコではない。念のため「これって量多いですか……?」と聞いたら少なめでつくっていただけた。

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ボルガライス(チキンカツ+オムライス+ハヤシソース)!流星の絆に出てくるハヤシライスってこんな味かな、と思った。濃厚で、今まで食べたハヤシソースの中で最もおいしい。メルマガ登録で食後にミニプリンをもらった。

 

 

すぐ近くにあった「四柱神社」を参拝。

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前はなんかもう少し欲張ったお願いごとしていた気がするけれど、アラサーになると健康や平和を願いがちになってきた。でも、健康が切実にいちばん欲しいよ。鳩がめちゃくちゃいすぎて手水場に行くのを諦めた。

 

 

そのままなわて通り商店街を見る。黒地に錦鯉が描かれた小皿を買うかずいぶん迷ってやめた。小皿あるからこれ以上いらないんだけど、今でもまだ欲しい。八百屋で、安かった菜の花とスナップえんどうを買った。

 

 

行ってみたかった「amijok」へ!普通の量の2倍くらいあるマフィンを食べてみたかった。日替わりマフィンが7種類ぐらいあり、目移りしまくった結果、ビターチョコレートバナナココナッツ、不知火(しらぬい)チョコレートクリームチーズをひとつずつ。夫へのおみやげ。

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手提げの紐もつけてくれた。ラッピングにこだわってるお店って大体いいお店ですよね。

 

 

途中でうつわのお店なども覗きつつ、次に目指すのはイオンシネマ。生活圏内に映画館が無さすぎて、観ようと思うと映画代以上に交通費がかかるのだ。無職は映画に4000円も払えない。なのでめちゃくちゃ観たかったマリオをついでに鑑賞する。

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平日の昼間だからか、子どもは1人しかおらず、私含めて幼いころ夢中でマリオをプレイしていたであろう大きなお兄さんお姉さんがぽつぽつといた。これ、映画館で観れてよかった~!!!マリオやマリオカートの世界にどっぷり入り込めた。クッパが思ったよりも、金持ちというだけでハタチの美女とワンチャンあると思ってるアラフィフ男、って感じでなんか心にきたけど……。

 

 

心地よく疲れたので「菊の湯」へ。大人440円、タオルやシャンプーセットも格安で借りることができる。地元のおばあちゃんの社交場になっていて、あちこちで「こんにちは~」「今日は早いわねえ」とゆるやかな会話が交わされている。湯上がりのコーヒー牛乳、至高だ。

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風呂上がりのビールが飲みたくなり、すぐ隣の「ホップ・フロッグ・カフェ」に入る。クラフトビールとコーヒーが売りのお店で、奈良のLove Affairというフルーツサワーエールを頼んだ。すごい名前だね。パッションフルーツの爽やかな香りがして、苦みもなく、とてつもなく好みだった。酒好きなのに下戸だから200mlか300mlで選べるのありがたい。

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終電が早いためそろそろ帰途へつく。駅に併設されたお土産屋さんで、おやきと地ビールを買った。今は帰りの電車でこれを書いている。

 

 

やさしい人ばかりに巡り合って心がほぐれたのか、いつもは人見知って言わない「ラッピングかわいいですね」だとか「このビールだとどんなおつまみが合いますか?」だとかが自分の口から考える間もなくスルスル出てきてびっくりした。普段からそういうこと言いたいんだけど、日和ってしまって……。今年はそういうこと何も考えず言えるようになるまで練習したい。

 

松本、いい街だったなあ。行ききれなかったお店、食べきれなかったもの、たっくさんあるから今度は夫も連れてまた来たい。

 

 

追記:マフィンめっっっっちゃうま!

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MIDORIで購入した「いろは堂」のおやきも衝撃的なおいしさだった。パサついた感じが一切なく、特にかぼちゃ味が群を抜いておいしい。いいな、長野……。