健康診断で引っかかり、眼科に行く。瞳孔がひらく検査をもし受けたら自転車に乗れなくなるだろうから、40分の道のりを散歩がてら歩いていく。起きたてのときは、せっかくの休みに早起きしたくなくてぐずっていたけれど、ゆっくりと紅茶を飲んでメイクを施したら気持ちに余裕が出てきた。昼までだらだらと眠る休日は甘美ではあるが、後悔もつきまとう。眠くてたまらなかったとしても、外に出て日差しを浴びると朝から活動できてよかったなあと思う。私は自分のこういうチョロいところがけっこう好き。
平日休みが多くて平日の病院しか知らなかった私は、土曜日の病院というものを舐めていた。小さな待合室にも外のベンチにも患者が溢れかえり、1時間後に戻ってきてくださいと外出用の番号札を渡される。半端に20分待ちなどになるよりは1時間のほうが潰しやすいから、かえってよかった。マクドナルドに入って黒胡椒ガーリックナゲットとプレミアムローストを頼む。とうに60歳は超えていそうな店員さんに「ホットのMサイズで」と言うと、「えむ……?ふつうサイズでよろしかったですか?」と返ってきてかわいかった。ふつうサイズ、響きがいい。余ったナゲットソースを浸したくなってモバイルオーダーでポテトを追加注文する。ポテトSサイズ190円に、キリよく10円の募金を足した。モバイルオーダーのついでに募金ができるシステム、いいな。
隣の席の高校生が「なにげ初めてくるわここ」と言っており、なんかすっごく高校生っぽい言葉の使い方でいいな!!!と思った。小説で会話文を書くとき、無意識に正しい語順を守ろうとして「ここ、何気に初めてくるわ」などと書いてしまうけれど、こっちのほうがリアルだなあ。リアルなんだけど。正しいということが必ずしも適切なわけではない。
マックと病院の待ち時間とでNewsPicksの記事を読んだ。家にテレビもなく、新聞も取っていない状況で、私はあまりにも世の中のニュースを知らなすぎると急に危機感を覚えて昨日インストールしてみた。朝、ごはんを食べたり歯磨きをしながらとりあえず気になるニュースを保存して、一日のうち隙間時間を見つけて読んでいくことにする。いつまでもつだろう。今日読んだなかでは、実家の酒造を継いだひとのインタビューが面白かった。(→安価なパック酒づくりから、伝統的製法の日本酒に原点回帰)
本筋とは関係ないが、私が「伝統」という言葉に拒否反応を示すことがあるのは「伝統」と「懐古主義」と混同されがちなところが嫌なのかもしれないと思った。昔はよかったとしがみつくことと、昔からある良さを大事にすることとは違う。そんなことを考えた。
帰り道、パーソナルカラー診断を受ける。私は髪も瞳も黒く、名前に違わず濃い青が似合いすぎる。どう考えてもブルベ冬だろう。パステルやシャーベットカラーみたいな明るい色は笑っちゃうぐらい似合わないから、たぶん2ndはイエベ秋だ。
手のひらと瞳の色を見て、いくつかの色の布を当てた結果、やはり1stブルベ冬の2ndイエベ秋だった。髪と瞳、肌との調和で見るとブルベ冬であるが、手のひらはやや黄みがかっていてイエベ秋も似合うらしい。プロの目で見た根拠をはっきり知れてありがたい。アクセサリーはシルバー、ダイヤモンドが似合うそう。イエベがゴールド、ブルベがシルバーなのはわかっていたが、パーソナルカラーによってダイヤが似合うとかパールが似合うとかで分かれているのは初めて知った(パールが似合うのが何ベかは忘れた)。クリアで鮮やかな色が得意で、それに当てはまっていれば黄色でも似合うらしい。鮮やかな黄色のストールなんかもいいですね、と言われた。そうなんだ。
パーソナルカラーに合うアイシャドウをいくつか教えてくれて、気に入ったものをひとつ貰えるシステムだった。ピンクやブラウンはどうやって似合うものを見分けるのか質問した。ピンクは黄みやくすみがなく、青みのあるもの。具体的に言うとコーラルピンクはだめで、ローズや紫に近いものがいい。ブラウンは、黒に近いこげ茶のような色ならOKらしい。それからシルバー系のラメが入ったものをおすすめされた。大粒のラメが光るピンクのシャドウを選ぶ。
甘くて苦くて目が回りそうな名前も気に入りました
似合うシャドウを実際につけてくれるついでに、アイメイク全般も施してくれた。すごいホスピタリティ。シルバーのラメが入った白いアイシャドウベースを、アイホール全体に塗る。眉毛のすぐ下あたりまで広範囲に塗っていてびっくりした。シャドウをいくら重ねてもなんか薄くて垢抜けないなと思っていたけれど、量じゃなくて塗る範囲が足りなかったみたい。マットなピンクのシャドウを二重幅にたっぷり伸ばし、目のキワにこげ茶を仕込む。黒目の上の位置にピンクのラメをのせ、涙袋に白いラメをのせて光でクマを飛ばし、アイシャドウはおわり。
まつ毛の隙間を埋めるようにアイラインを引く。目尻は引かない。いつも逆に目尻だけ引いてたからびっくりした。マスカラは黒。眉毛も描いてくれた。黒だと強すぎて、茶だと明るすぎるからグレーがいいと勧められた。眉毛の生えているところだけに描くんじゃなく、眉の下にパウダーブラシをぼかして影を作り、ナチュラルな太眉を作る。あと最初にグレーの眉マスカラを塗ってから足りないところをペンシルで埋めていて、眉マスカラって先に塗っていいんだ?!!とカルチャーショックを受けた。仕上げに青みがかったハイライトをふわふわのブラシに取り、眉のあいだと、目尻をくの字に囲むように塗る。パーソナルカラー診断がメインだけれど、似合うようにプロにメイクをしてもらうのが初めてで、こっちのほうが大収穫だった。
ナチュラルな長谷川潤みたいな目元が嬉しくて、やたら鏡を見てしまう。グレーのアイブロウ、買おう。