あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

3万円の羽を買う

くすんだパステルブルーの自転車を買った。こういう色の自転車があればいいな、と思っていたドンピシャの色合いに巡り会って、即決で連れ帰ることにする。自転車通学をしていた高校生の頃、まったく趣味ではないおさがりの赤黒いチャリに乗っていたけれど、3年間ついに愛着が湧くことはなかった。ほんとうは水色がいいのに、なんだって全然好みじゃない赤黒いチャリに……とずっと憂いていた高校生の私に、自分で買ったすばらしい水色の自転車を見せびらかしたい。これで休日に喫茶店へ行くハードルがぐっと下がるし、行動範囲も広がる。引っ越してきて1年半も経っているのに今さら自転車を導入したのは、こないだ不審者に遭ったから。助手席に乗れと言われただけで無事に逃げ切れたけど、もし力ずくで乗せられて誘拐されていたらと思うとおそろしく、ひとりで外を歩くのがたまらなく怖くなった。金もないのに自転車なんか買って、せっかくの可愛いバッグに無機質な防犯ブザーなんかぶら下げなきゃいけなくなって腹が立ってしょうがないけど、クソジジイのために金はたいたなんて思いたくないから、休みのたびに文庫本を載せて少し遠くの喫茶店まで漕いでいこう。くすみパステルブルーの私の羽。