あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

青いストロー

私にとっては大きな仕事の区切りがようやくついて、ご褒美にコメダへ行くことにする。このところ、仕事中はパソコンにかぶりつき、帰ってからは22時に寝支度を終えられるように計画的に家事をこなす日々で、充実はしても疲れは溜まる一方であった。私は自分のご機嫌の取り方をきちんと心得ている。好きな音楽を聴く、たくさん寝る、湯船に浸かる、本を読む、映画を観る、それでもだめなら喫茶店にゆっくり腰を落ち着けてぼーっと過ごす。仕事が終わる時間にはこのあたりの喫茶店は閉まっているから、それと飲み物のうえに乗っかっているあのソフトクリームを食べたかったから、コメダをめざす。いつもはソフトクリーム目当てでクリームソーダジェリコ、あるいはミニシロノワールを頼む。今回は注文したことがなく、かつソフトクリームが乗っかったものを吟味して、クリームオーレに決めた。タイトルに惹かれてなんとなく買った、吉本ばななの「白河夜船」が思いのほか好みどストライクで、一瞬自分がコメダの赤い椅子に座っていることを忘れた。私は文章が淀みなく美しく、少し寂しいような、天気でいえば曇り空か小雨みたいな雰囲気の小説が好き。いま取り組んでいたのも、少なかれ文章を扱う仕事で、もっとこんなふうに丁寧に言葉を操りたいと思って心を引き締めた。表題作に、若くして自死を選んだ主人公の友人が出てきて、大切な友達のことを思い出した。30歳までには死にたいとずっと言い続けている彼女が、風が吹くようにいついなくなってしまうともわからなくて、怖くて、でも止める術がないし止めるべきでもないのだと思って、苦しい。そんなことを、もやもやと。笑っちゃうぐらいソフトクリームがたっぷり載ったクリームオーレはやっぱり美味しくて、豆菓子の塩味とこのうえなく合った。マックの月見パイをお土産に持ち帰るつもりで、何か食べたいものがあるか彼氏に聞いたらてりやきバーガーをリクエストされ、結局夕飯ごとマックになった。19時頃、薄暗くなりはじめた帰り道の空気は湿っていて、大量の高校生たちとすれ違う。なにか熱唱しながらゆったり自転車を漕ぐ男子高校生、壁ドンについて否定的に話し合う男子高校生たち、仲睦まじい女子高生三人組が焼肉屋さんにおそるおそる入っていく瞬間を目の当たりにして、なんかいいなあ、と思った。仕事終わりの彼氏と駅で合流して、小ぶりなピンクのバラを買って帰った。左手に握りしめていたマックの紙袋はまだ少しあたたかい。