あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

手繰る

運命を手繰り寄せるようにここへ来た。そう思った。すべての試練は縒り合わさってこの道へ繋がっていたと思える地を、あのとき、まだ履き慣れないパンプスの踵で確かに踏みしめた。

 

 

動き出した瞬間からすべてが奇跡だった。これから住む街に、僥倖のように転がっていた憧れの仕事。私のことをよく知っている誰に話しても、それはさすがに運命すぎない?受かるでしょ運命だから、とかならず言われた。傲慢ながら私もそう思った。でも「なんとかなる」ものなんてなくて、「なんとかする」しかないのだ。私がこの手で。

 

そして実際、なんとかした。これで私が受からなくて誰が受かるんだろうと、高校受験のときも大学受験のときも思ったことをまた思った。とはいってもそんなにうまくいくのならズルズルと就職浪人もしていないわけで、うーん、でもなんとかなるっしょあまりにも運命的だし、なんて思っていたら着信があった。2年にも及んだ就活は、たった2時間後にかかってきた内定の電話で幕を閉じた。

 

 

 

実家を出たら都会か港町に住みたいと思っていたし、いまもまだそのチャンスを虎視眈々と狙っている。でも私にはいまこの街に呼ばれた理由がきっとあって、これからそれを探す。

 

これから私のものになる遠い街は、私の街ほどではないけれどコートの襟をかきあわせたくなる寒さで、それがなんでかほっとして嬉しかった。