あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

ソルベ

親友と最後に会ったのはちょうど1年前、疫病が流行し始めた頃だった。元気にしてた?と待ち合わせ早々に腕を掴んではしゃぐ姿は、ブランクがあったと思えないほどいつも通りで、何だかすごくほっとした。乗り換えの方向を間違えたり、道を間違えて同じところをぐるぐる回ったりしてもすべてが楽しくて、寂れたショッピングモールですら一緒に歩くとキラキラして見えて、「光の街」のヒロインを彼女に重ねて聴いていたことを思い出す。

 

空腹だからパフェにカレーもつけるかどうか悩む彼女に、じゃあカレーも頼も!と言った私は実は会う直前にドリアを食べていた。私たちはそういうとこがある。いつか映画を観ようと誘ったとき、映画館に入ってポップコーンを買った直後に「じつはこの映画こないだ観たんだよね」と告白されたことがある。私たちは、そういうとこがある。

 

きっと普通に会えるのはこれが最後だろうと確認はしなくてもお互いわかっていたから、いつもはしない昔話をやたら多めにした。あのふたりこっそり付き合ってたんだって、私はこっそり付き合うどころか好きな人すらいなかったな、私もずっと中学の頃好きだった人引きずってたから青春とかなかったよ、あーあの卓球部の、よく覚えてるねそんなこと。そう言った私だって彼女と当時話した些細な会話の一つひとつ、冷凍保存したみたいにくっきり覚えていて、忘れるわけもない。別れ際に「私のこと忘れないでね」と言われたけれど、1年会わなくても数年に1度しか会えなくなっても、私は永遠に彼女のことを親友だと思っている。なんだか泣きそうになってしまって月並みなことしか言えなかったけど、わかってくれてると思ってる。

 

あーあ、私は昔っから親友のことあまりにも大好きで、たぶんどうしようもなく愛している。ピンクベージュのネイルを塗った指先に、ちょっとでも可愛く見られたくて涙袋にのせた白いシャドウのラメがくっついて、なんだか胸がいっぱいになって、あの頃よく聴いていたback numberを再生する。