あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

いつだって移ろいのさなか

何度だってどん底から這い上がれるみたい。きっと人より打たれ弱いけど起き上がるのも人一倍はやいから、また見くびった神様がありったけの試練を私の行く末に積み重ねる。悪路上等、北に生まれたものだからハイヒールで雪道を歩くのは得意なの。ここには咲かない金木犀の香水をさっと振りかけて、秋冬のコートに袖を通すとバスに飛び乗った。すべては移ろう。久々に訪れた行きつけのカフェは、感染対策のために読み放題だった本を撤去していた。おひとりさまの客たちが行儀よくページをめくっていた空間には、サラリーマンたちが集ってスポンサーがどうの地域貢献がどうのと仰々しく語り立てている。私はイヤホンを嵌める。すべては移ろう。ついそこで買ってきた手紙小説の封をうまく開けられず、びりびりに破いたけれどそれも味ということにする。大人に占拠されたカフェはひどく居心地が悪く、次の予定までの時間を潰すためにこれを打っている。ホットで頼んだカフェラテだかカフェオレはとっくに冷めた。耳の中では私の大好きな曲がちいさく鳴っている。はじまった、はじまった、はじまってしまったんだ。そう、はじまってしまったのだから最後まで駆け抜けるほかないのだ。何度問われたって覚悟ならとっくの昔に決めている。馬鹿な女と思われてもいい、とは思うけど、私の好きな人たちには分かっていてほしいとも我儘なことを思う。ずっとひっくり返すためのレールを敷いている。ずっと。ずっとだ。どんな悪いことも結局はハッピーエンドにつづく助走なんだって、本気で信じてるから。すべては移ろう。行きつけのカフェの顔ぶれも夜の長さも街に漂う風も、私もあなたも。