あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

腹底の蛆

決まった時間に決まった場所へ行かなければならない、ということが本当に苦手である。アルバイトは平気だ。待ち合わせも平気。学校に行くことと、講座かなにかに通うことが本当に、本当にだめだった。高校時代、塾に通うという行為が嫌すぎて、猛然と自宅学習をして高得点を叩き出し、成績は下げないから頼むから塾にだけは入れないでくれと懇願したことがある。大学にあがり、旅行代理店で働くための国家資格を取ろうとして講座を取った。勉強自体ではなくて「講座に通う」という行為がつらくてつらくて、通えなくなって、1年目も2年目も落ちて受講を辞めた。公務員講座も吐きそうになりながらなんとか6割は通ったが、あとの4割はだめだった。そんなんだから去年は落ちた。

 

大学に通う、という行為も定期的に嫌でどうしようもなくなっていたから、フル単でストレート卒業出来たことが我ながら不思議である。家から大学まで1時間半かかる、ということもこのなんともいえない「嫌さ」を加速させている要因ではあったと思う。まず、地下鉄に揺られながら泣きたくなってくる。乗り換えの大きな駅でどうしても足が向かなくなって、行きつけのカフェに逃げ込んでしまったこと、何度もある。最寄り駅で降りた瞬間に動悸が止まらなくなってそのまま図書館に足を翻したことも、数えきれないほど、ある。腹の奥に棲む蛆のような得体の知れない虫がうごめいて、1ミリたりとも動けなくしてしまう。息苦しさが充満して肺が黒く翳る。そんな心地がした。そうして欠席ギリギリまで休んだけれど、出席すればきちんと受けるし課題もちゃんと出す。欠席以外はなんてことのない優良児なので大目に見られてきたが、本当は私みたいのがいちばん劣等生なんだと思う。

 

オンライン授業だったらあのもやもやとした気持ち悪さが込み上げてくることもなかったのかもしれない。鳴りを潜めている蛆虫が騒ぎ出すこともなかったのかもしれない、とは思うけれど、そうすれば図書館やカフェへのささやかな逃避も丸ごとなかったわけだし、オンラインになったらなったで億劫になってまた形を変えてサボってしまうんだろう。オンライン授業が大変でと言っている後輩や弟を見ながらそんなことを考えている。