北海道の空はいまにも降り出しそうなアイスグレーに濁っている。「Bedroom Joule」を再生すると目を閉じた。滑走路を駆ける轟音は、物心つく前から聞き慣れているので何も気にならない。どころか眠くすらなる。離陸していく浮遊感とともに、眠りに落ちる。
着陸時の凄まじい振動を背中に感じて目を開ければ、名古屋の空も同じ色をしていた。遠くの地だからといって劇的に天候まで変わるわけではないらしい。機体を降りると、もわっ、としか言いようのないぬるい空気が押し寄せる。ホノルル空港に降り立ったときと同じ種類の、もわっ、だ。嫌いじゃない。試験を受けに来たわけだし、このご時世だから浮かれてもいられないが、飛行機に乗るという行為には無条件にわくわくしてしまう。空港でスタバの新作を飲んだ。成田とセントレアのしか知らないけど、空港のスタバの店員さん、というものは軒並み際立って優しい。
立地と安さだけで決めたビジネスホテルは値段の割にあまりに広く綺麗で、こんなに安かったのは時勢のせいであってきっと普段はもう少しだけ高いんだろう、と思う。だって除湿機と電子レンジまで備わっているし、パジャマも安ビジホによくある何だかわかんない生地のじゃなくて、彼シャツみたいなシャツワンピだ。広いバスタブに湯を張って、ファミマで買ったりんごジュースを飲んだ。今宵はいい夢が見たい。