誕生日だからと妹がくれたブラウンのリップは貰ったそばから塗らなくなった。バイトから帰るバスの中で更新するのが常だったブログは、一時休業になってしまったから自然と書かなくなった。たまに必要に駆られてスーパーや郵便局へ出向くぐらいじゃメイクもしなくなった。ファンデーションや口紅はいっこうに減らないまま、繰り出し式のアイブロウだけが短くなっていく。余計なものが削ぎ落ちていく生活は、過剰に情報を摂取しすぎなければこれでいて快適でもある。色の抜けた髪は試験の前には染めておきたいけれど、明るく伸びきった前髪もまあ悪くないよねと思ってる。ライブに行けないのも美容室に二の足を踏むのも自分だけじゃ嫌だけど、今みんな前髪長いしなあ、と思うと愛おしくすらある。生活の隙間を縫って彼氏と電話をしていたら1日が無事に終わる。こんな状況で遠距離という絶望的なシチュエーションではあるけれど、笑っちゃうぐらい順調に仲がいい。お風呂上がりにのむグラスいっぱいの牛乳が美味しいし、Youtubeはじめ動画コンテンツも充実していて楽しい。あわやディストピア只中にある平穏を波風立てずやり過ごしていきたい。そのうちマスクをしなくても歩けるようになったら、生地にうつることを気にして無難なリップを選ばなくてよくなったら、意外とブラウンには見えない紅を引いて颯爽と歩くから。