万人におすすめしたい本と、万人には絶対おすすめしないけど私の大好きな本を5冊ずつ集めました。厳しい冬を過ごすお供にどうぞ。
◎おすすめ本5選
ミステリー/サスペンス好きなあなたにとにかく読んでほしい、私の人生の1冊。ガリレオシリーズのうちの1作品だけれど、ほかの作品知らなくても全然サクッと入れる。読み終えたときにページを閉じて、なにが「献身」であったのかに震えたなら、つぎは同シリーズの「聖女の救済」もおすすめ。
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「盲目的な恋と友情」辻村深月
人間のこわさ、みたいなものにゾクッとしたいならこの物語。どんどん盲目的に加速していく恋愛と、そこに絡んでいく盲目的な友情。好き、という感情はひとを狂わせるのだなと思う。良くも悪くも。
珠玉の恋愛小説を読みたいあなたへ。恋のやるせなさや切なさが、美しく淡々と紡がれていくラブストーリーの名作。雨上がり、差したばかりの陽を浴びてビニール傘のうえで銀色に光る雨粒のような美しさが、島本理生の小説にはあるような気がする。
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「死神の浮力」伊坂幸太郎
ハラハラドキドキしたい気分ならば。死神シリーズ1作目にあたる短編集「死神の精度」を読んでいるともっと楽しめるけど、スピード感溢れる長編である本作だけでも楽しい。人間にとっては湿っぽくなりがちなドラマも、死神の目を通して見るとなんだか滑稽にも見えてそこもまた楽しい。良エンタメ。
最後のページですべてがひっくり返る、大どんでん返しを喰らいたければこれを。文庫の解説が非常に素晴らしくて、解説含めひとつの作品みたいに仕上がっているのですが、最後のページも解説も絶対に先に読まないで。
◎おすすめしない(けど私の好きな)本5選
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「パレード」吉田修一
シェアハウスで暮らす若者たちの日常を等身大に描いた作品、かと思いきや。何も言わずに、最後まで一気に読んでほしい。グロ耐性ない人は絶対に読まないでほしい。ヤバい。
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「世界の終わり、あるいは始まり」歌野晶午
ミステリをよく読んでいて、ミステリの手法に精通している人ほど袋小路にはまる1作。とにかく暗いし、重いし、長い。だけど世界の構造を何度もひっくり返させられるような、こんな斬新な本はいままで読んだことがない。歌野晶午の本はどれも万人には絶対おすすめしないけれど、胸糞悪いバッドエンド厨は「ハッピーエンドにさよならを」、グロ耐性もあれば「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」をどうぞ。
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「僕の好きな人が、よく眠れますように」中村航
こんなにも綺麗な不倫小説があっていいんだろうか。不倫しているにもかかわらず、彼らの恋愛は甘酸っぱくてくすぐったくて、きわめて純粋ですらある。恋人のあいだで交わされる、すごくどうでもいいけど当人たちにとっては最高に楽しい会話、のディテールが光ってる。文章もとても綺麗。不倫小説なのに。
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「少女」湊かなえ
イヤミス(イヤな気分になるミステリー)の最高峰。湊かなえのイヤミスといえば「告白」ですが、それを遥かに凌ぐ物凄さがあると思う。不穏に幕を開けたふたりの少女の物語は、紆余曲折ありつつも交わっていくことになる、けれど……。後味が悪すぎる。鉄の味する。
何度も言っているように私の原点。刺さる人には強烈に刺さるし、わからない人には一生わからないんだと思う。スクールカーストに少しでも息苦しさを感じたことのある人ならば、ゆっくり首を真綿で締められていくような感覚に陥るはず。とにかく苦しくて痛くて仕方ないけど、読んだ価値は絶対にあった。
最近おすすめの本を尋ねられる機会が増えたため、いっちょまとめてみました。この中から気になるものをどうぞ。
あるいは「容疑者Xの献身面白かったんだけど他にもいい感じのミステリーある?」「ハッピーなラブストーリーが読みたい」「軽く読める短編集教えて」みたいに好みを添えて聞いてもらえれば、張り切っておすすめしますので。よろしく。
ちなみに私の書いてるものが刺さる人は、内容は別として、朝井リョウと中村航と島本理生の文章はぜったい好きだと思います。