ハンブレッダーズの初ワンマンツアー 「Cagayake! BOYS」 札幌公演を観た。
昨年、夢チカライブで初めてハンブレッダーズを観て一目惚れした。いつかまた北海道で、できればワンマンが観たいと思っていたのがこんなにも早く実現するとは。
札幌SOUND CRUEは満員御礼。会場BGM、ミスチルの『NOT FOUND』が流れてテンション上がった。
この日の公演は15:30という健全な時間に始まった。ベースのでらしさんが出てきた時だけ物凄い歓声が上がって、最後に現れたムツムロさんに 「でらしの歓声なんか凄くなかった?」 と笑われた。
【セットリスト】
- 口笛を吹くように
- スクールマジシャンガール
- フェイクファー
- 常識の範疇
- 嫌
- ユーモアセンス
- エンドレスヘイト
- 席替え
- 付き合ってないけどお互いに
- チェリーボーイ・シンドローム
- ミッドナイトフリクションベイビー
- CRYING BABY
- DAY DREAM BEAT
- 弱者の為の騒音を
En1. ファイナルボーイフレンド
En2. ファーストラブレター(新曲)
En3. 逃避行
北海道初ワンマンは『口笛を吹くように』でゆるやかに幕を開ける。「ぐしゃぐしゃに泣きじゃくった君がイヤホンを取って 少し笑えちゃうような歌が歌えたらいいな」 という詞、ライブで聴くことでよりグッときた。
『スクールマジシャンガール』が始まるとライブハウスが熱を帯びる。「歌にしちゃうくらい君が好き」 って、バンドマンにとっては最上級の愛情表現だよなと思う。好き、大好き、歌にしちゃうくらい好き、の順でクレッシェンド。
キジマさんのワンツーカウントから『フェイクファー』。「まだ青くもない春の匂いがした君のフェイクファー」 と歌うムツムロさんを青いライトがやさしく照らす。
この曲、よく聞けば昔好きだった子の名前をグーグル検索するくだりが出てきてパンチ強いけど、「本当馬鹿みたいだけど 嘘みたいだけど 君が好きだったんだ」 とエモーショナルに歌い上げられると涙腺にくる。
『常識の範疇』、「くだらない日々に乾杯 まともに生きるなんて論外」 の 「乾杯」 「論外」 に合わせて拳を振り上げるひとがたくさんいて、なんか微笑ましかった。私もした。楽しかった。
前方の端っこでライブを観ることが多いのだけど、この日はドセンター後方にいた。サビで手が上がると辛うじて見えていたムツムロさんの頭すら見えなくなる。
でも、力のこもった拳やその手首で跳ねるラバーバンド、幸福に満ちた観客の背中を見ていたらなんだか、これも悪くないどころか絶景だと思った。大阪発のバンドに魅せられてきたひとたちがこんなにもいて、同じ空間で同じ音楽に胸を熱くしていることが奇跡みたいに美しく思えた。
「僕は外見より中身よりユーモアセンスでその人を好きになることがあります」 との言葉で息をのんだ。小春日和を思わせるピンクのライトが射しこむ。『ユーモアセンス』。
ラブソングを聴いて 「いいな~こんなふうに想われてみた~い」 と思うことはほぼないのだけど、この曲だけは別。「ユーモアセンスが印象的で恋をしたんだ」 なんて思われてみたすぎる。
曲のあいまに 「自由に楽しんでってね」 って言ってくれるの好き。チューニングしながら 「俺らチューニングしてるけどみんな自由にしてて。なんか、隣の人とライン交換でもしてて」 なんて適当なこと言うムツムロさんに 「俺らそういうバンドじゃなくない?」 とすかさずツッコむ吉野さん。
初ワンマンツアー、当初は東名阪だけ抑えており、売れ行きやメンバーのメンタルを考慮して札幌・福岡の追加を見計らっていたらしい。チケットさばけないことで有名な札幌でもいけると判断してくれて嬉しい。
ただ札幌だけなかなか即完しなかったと。
ムツムロ 「札幌キャンペーンでラジオ出させてもらったとき、普段こんなこと言わないけどあと7枚どうしても買ってくださいって。売れたと思ったら払い忘れでまた7枚に戻るんですよ!不動の7枚が長いことあって」
吉野 「マジックセブンですね」
ムツムロ 「は?」
間合いキレッキレで笑った。
『付き合ってないけどお互いに』のせつなく染み入る歌い方、良かった。曲で描かれる 「付き合ってないけどお互いに意識してる女の子」 との関係性が甘酸っぱくてもどかしい。
「君と遊んだ帰り道にひとりきりで聴く音楽は 全部無性に切なくてラブソングみたいに聴こえるんだ」 って、相手をラブソングのヒロインに重ねてしまうよりも究極だと思う。好き。
盛り上がりながらも器用に自分のスペースは保ち、モッシュもなしに長らくきていたけれど、『チェリーボーイシンドローム』が始まった瞬間わっと軽い圧縮が起こった。
「童貞だってどうってことないぜ どうしようもないぜ どうだっていいぜ 君のすべてを抱きしめるんだ こんなにこんなに愛してるんだ」 の部分、みんなで歌った。最高だった。この曲で盛り上がれるの、「ネバーエンディング思春期」 を掲げてるだけある。どうしようもなくカッコよかった。
MCでは 「北海道は何食べても美味しい」 という話に。「みんな北海道から出たことないからわかんないかもしれないけど!ほんとに!北海道から出ない方がいいよ!」 と言われて笑った。
下北沢のお洒落なスープカレーにはピンとこなかったでらしさんは、前に北海道で初めて 「Suage+」 のスープカレーを食べて大感銘を受けたという。
ムツムロ 「吉野は何食べた?」
吉野 「昨日は4食食べたんですけど」
ムツムロ 「おかしくない?」
吉野 「それでウニの美味しさに感動して。このあと2分ぐらい長いギターソロがあるんですけど、ウニのために弾きます」
『ミッドナイトフリクションベイビー』。この曲だけ知らなかったけどいちばんカッコよかった。弾きながらすぐじゃれる吉野&でらしと、その度に気になってチラッと横目で見るムツムロさんが微笑ましい(キジマさんは見えなかったごめん)。
「はい。吉野エクスプロージョン、ギターソロを北海道のウニに捧げます。業務連絡でした」 「打ち合わせは事前に済ませとけ」 というやり取りを経て、ウニに捧ぐギターソロが唸る。吉野さんの、憑依されているようなプレイ、本当に気持ちよさそうで見ているだけでボルテージ上がる。
ソロが終わったあともムツムロさんの歌に被せて 「ウニ!!ウニ!!ウニ!!!」 と叫び、曲を締め終えてから 「ライブをなんだと思ってんねん」 と叱られていた。
でらし 「ウニ、喜んでた?」
吉野 (満面の笑顔でウンウン頷く)
でらし 「それはよかった。笑」
吉野 「ウニが ありがとう~!って言って消えてった(無邪気な笑顔)」
ムツムロ 「何言ってるかわからなすぎて怖い」
ひとしきり笑ったあと、「君が涙を流さなきゃいけないなんてクソ食らえだよ」 と『CRYING BABY』が始まって涙腺殺された。温度差ずるい。リスナーを励ますタイプの曲には、背中押してくれる感じとか手を引っ張ってくれる感じとか色々あって、この曲は泣いていたら隣に座って気が済むまで一緒にいてくれるような安堵感がある。
「想像通りじゃなくたって臆病風が吹いたってもう戻れはしないけど 変わらない日々に魔法がある ノンフィクションで夢を描く 痛みを光を」。高校1年からバンドを続けてきたという話を受けて聴くと、この箇所にグッとこずにはいられなかった。
「初めてギターを持った時も、初めてバンドを組んだ時も、わかりやすく運命が変わった感じはしなくて」 と話すムツムロさん。
音楽で世界が変わったことなんて数えるほどしかないけれど、どうしようもなくなって何もかも駄目だと思った時に、ヘッドフォンから流れた音楽が救ってくれた。というようなことを時折つっかえながらも真剣に伝えようとする姿に心打たれて、気圧されて、身じろぎもできなかった。
感極まってよく覚えていないけど 「ロックミュージックは、ロックンロールは、本当に数えるほどしかないけれど救ってくれた。ヘッドフォンの中の宇宙が皆さんにもありますように」 みたいなことを言ってくれたと思う。『DAY DREAM BEAT』。
小さなライブハウスに響きわたる 「ひとり登下校中 ヘッドフォンの中は宇宙 唇だけで歌う」 の合唱を忘れられない。やけに世界がキラキラして見えた、こんな瞬間があるから、好きな音楽を追うのはやめられない。
震えるような一体感に包まれたまま『弱者の為の騒音を』に突入し、あっという間に本編終了。
アンコールを受けてまずキジマさんが登場する。緊張しつつグッズ紹介をする姿を見かねてでらしさんも加わるけれど、微笑ましいぐらいたどたどしかった。
ようやく全員が揃い、ムツムロさんが北海道にいる知り合いの話をする。知り合いの甥っ子が失恋した時にずっと聴いていたハンブレッダーズの曲を、セットリストを変更して北海道でやってくれるという。
『ファイナルボーイフレンド』のイントロで叫びそうになった。この曲、いつか結婚式で流したいと心に決めているぐらい好き。
「「好き」って伝えたら 「どこが?」って言う癖 鬱陶しいけど治さないでね」 みたいな愛に溢れた歌詞がたまんない。
そっと畳みかけるような 「息継ぎもなしに口づけを 前触れもなしに手を繋ごう 「ただいま」の度に恋をしよう 不安ごと君を抱きしめよう」 のところでなぜだかいつも泣きそうになってしまう。聴けてよかった~~!
新曲『ファーストラブレター』、タイトルからちょっと切ない感じかなとイメージしたけれど、明るいとカッコイイを混ぜたようなわくわくする曲調(急に著しく表現力低下してごめん)だった。でらしさんのコーラスが映える。
よかったら歌ってください、と始まったアンコールラストは『逃避行』。
「ロックンロールは魔法なんかじゃないけど なんだかちょびっとワクワクするんだ」。
ロックンロールは魔法じゃないけれど、世界を大きくは変えられないかもしれないけど。こうして好きなバンドが痺れるようなロックンロールを鳴らしていてくれるから、毎日が色づくし、心から救われる時もあって。
日常を色づけてくれたハンブレッダーズの音楽を、同じように魅入られてきたひとたちと共有できること。当たり前じゃない。ライブってすごい。ライブハウスという小さな空間が、4人の音でたちまち宇宙に変わる。そんな瞬間を目の当たりにできてよかった。
北海道での初ワンマン、最高だった。また観たい。またスープカレー食べに来てください。
ライブが終わって外に出るとまだ明るかった。17時半にも達していない。
素晴らしくカッコいいライブを観て、ほとばしるままに感想を話しながら歩いた帰り道は、なんだかちょびっと輝いて見えた。
バッジガチャ3回まわしてムツムロさん以外揃った。ちなみに私の推しはムツムロさんでした。ありがとうございました。
あおでした。