さいたまスーパーアリーナにて行われたセミファイナル公演が、私にとってはツアー初日であり千秋楽だった。
地元の札幌公演は、試験と重なって断念した。だから、この1日を心待ちにしていた。
ところが。前日に北海道全域の航空システムがカンスト、当日は事故で高速道路が封鎖、帰りの便が欠航。
着けなかったら?帰れなかったら?この公演がずいぶん心の支えになっていたのだと気づいた。さいたま新都心駅に着けたとき、心の底からほっとした。
会場に入って、息をのむ。センターステージ、だった。それも1階スタンドの前から2列目。アリーナとほぼ変わらないような神席。目の前には花道の先端。えっと、わたし、しぬんじゃないか?
拍手が沸き起こってふと顔を上げると、すぐ前の通路を会長が通っていった。次にストリングス、バンメンが、次々目の前を通っていく。なにこれ、近くない?近すぎない?やっぱり私、埼玉の地で息絶えるんだろうか……
歌詞に 「心」 の出てくる曲を、パッチワークのようになめらかに繋ぎ合わせたオープニングSE。目の前をコブクロのふたりが通っていく。黒田さんは思ったよりも線が細く、小渕さんは思っていたよりもだいぶミニマムだった。
1曲目から知らないイントロが流れはじめる。新曲『君になれ』。曲が終わる瞬間まで、ずっと目頭が熱かった。モニターを流れる歌詞に釘付けだった。思うように結果が出ないこと、決められないでいることや言えないでいること、もがいている未熟なままの自分を丸ごと肯定してもらえている気がして。
私は昔から、どんなに頑張っていても、結果が出ないのならまだ努力が足りていないのだと思い詰める節がある。そんなに思い詰めることないって肩を叩かれたような感じがして、『虹』のイントロが流れたときもまだ泣きそうだった。
「このくすんだ世界に 誰か素敵な色を足してくれないか?」 が聴けてぶっ倒れそうになる。音源の、あの、低いのにどこか甘い声が大好きで。小渕さんは時々自分の声を卑下するようなことを言うけど、私は小渕さんの歌声が世界でいちばん好きだ (黒田さんごめん)。
『紙飛行機』が始まると、ゆっくりと紙飛行機が舞い降りてきた。この演出またやってくれるんだ……!紙飛行機といっても、黄緑色をしたハート型の発砲スチロール。ツアータイトルと 「心」 のロゴが白抜きで印刷されている。
数曲ほどあとで、ステージに落ちた紙飛行機をゆっくり拾い上げた黒田さん。薄くほほえんで優雅に飛ばしたそれは、ゆるやかな弧を描いて福ちゃんの足下に落ちた。キマらないとこかわいい。
ゆったりとした速度でワイパーをする『HELLO, NEW DAY』、心くんの出てくる映像が印象的な『LIFE』とカップリングを立て続けに演ったあとは、またも新曲。
風鈴の音が遠い夏の記憶を呼び覚ます『夏の雫』はしっとり切ないバラードで、音源化されたら、歌詞カードを熟読しながらじっくり聴き込みたいと思った。11月の埼玉にやさしい夏の風が吹き抜ける。
『流星』を聴くと親友のことを思い出す。唯一よく聴くというこの曲を時々カラオケで歌ってくれる。いつも飄々としているけど実は寂しがり屋な彼女のことを、私だけが読み取れる不安を、守ってあげたいなあと思う。「まだ君の中 閉じ込められたいくつもの迷いは 僕の中で燃やし尽くせる だからもう怖がらずに預けてほしい」。
『Starting Line』『蒼く優しく』『心』の3曲で、自分の心がなにを思っていたのか、どこに向かいたいのか、教えてもらえた気がした。
思えば私は、好きだったことに鍵をかけて閉じこめてきた。本当に好きなことと真正面からぶつかるのが怖くて、ぶつかることで嫌いになってしまうことが怖くて、見ないふりをしてきた。手に入らないならこのままでいい、なんて。
「あの日の夢を今もずっと追いかけ続けていたら 今頃僕はどこにいて 何をしていたんだろう?」
良くも悪くも夢なんて変わるもので、あの日と同じ夢を追いかけたいとはもう思わないけれど、まっすぐ向き合わなかったことには後悔している。できないことを思い知らされたくなくて、壁にぶち当たりたくなくて、傷つきたくなくて、これでよかったんだってするする逃げてきた。全然よくなかったのにね。
好きなことに一生懸命打ち込める人がカッコいいと思っていたのに。倒れそうになりながら全力で歌うコブクロのふたりが好きで、私もああなりたかったのに、なにを生ぬるいことしてたんだろう。
言い訳して逃げるなんて1番カッコ悪い。私はこれが好きなんですって胸張って言えばよかった。し、今からでも遅くない。「何度負けても間違っても夢は終わりじゃない」。
あの日と同じ夢はもう追いかけないけど、閉じ込めるようなことはしない。好きじゃないふりもしない。カッコつけない。痛々しくてもいいからもう手放さないでいようと思った。好きだったことに誇りをもとうと思った。
夢の形は変わっても何度だってスタートを切ればいいし、誰かのためなんて綺麗事も言わない、自分のためだけに私はこの道を選びたい。何年も経ってようやくまっさらな気持ちでスタートラインに立てた気がした。
小渕さんがハモる 「下り坂」 の伸び伸びとしたロングトーンは、死ぬまでに観たかったランキング第3位に入るぐらい好きだ。くだーりざっかーーあーーーーー、ってやつ。生きている間に聴けると思ってなかった。
盛り上がりブロック1曲目はまたもや新曲、大人の艶っぽい恋愛を描いた『白雪』。これがも~~~~エロい。コブクロの曲で例えるならば、「オトナの『Pierrot』」 といった感じ。
『心に笑みを』みたいな曲を今のふたりに歌ってほしいよね~なんて言ってた私の胸ぐらを掴んで言ってやりたい、2017年にはあれの50倍はとんでもない曲作り上げてくるんだぞって。
『memory』では黒田さんがジャンプ煽るところ見れたし、『神風』の 「ハートの形のネオンがキラキラ」 のくだりも拝めた。しかも目の前の花道でハートマーク作ってくれて心臓止まりそうになった。このハートマークが、死ぬまでに観たかったランキング第2位でした。いよいよ死ぬんじゃないの私。
(ちなみに1位は『どんな空でも』冒頭部分のアカペラ)
本編ラストは『ストリートのテーマ』で締め。ストリート時代から歌い継いできたこの曲を、20周年を控えたいまも変わらずに届けてくれるのってすごいな。小渕さんが叫ぶ 「日頃のストレスは持ってきたかーー!嫌なことはたくさんあったかーー!今日それを全部ぶっぱなすぞーーー!」 のくだりがめちゃくちゃ好きだ。
チームコブクロが袖に引っ込み、すぐにアンコールを求める手拍子が起きる。ストリートのテーマを歌う声もちらほら聞こえる。私は何をしていたか覚えていないけど、アンコール入った瞬間に 「白雪えろいね」 と口走ったのは鮮明に覚えてる。なんかもっと他にあっただろ。
目の前の通路をストリングス、バンメン、次いでツアTに着替えたふたりが再度にこやかに歩いていく。アンコール1曲目として始まったのは、『未来』だった。去年のツアーでは核をなす新曲だった『未来』も、既にどっしりと風格を漂わせつつある。
「僕が夢を忘れそうな時 君の涙で思い出す 何の為に歩いてきたのか 何度でも教えてくれる」 とあるけれど、私にとってそれはコブクロの楽曲であり生き様で。1年に1度、たった3時間ちょっとのこの時間で、たくさんのことを思い出させてもらったし気づかせてもらった。
最後はライブ定番曲の『轍』。明るい曲だけど歌詞がもうドンピシャに刺さりまくって、泣き笑いみたいな変な顔をしていた気がする。
「抱えきれない夢が不安に変わりそうな日が来たら そんな時は僕のところへおいで 歌を唄ってあげよ」、私がコブクロのライブに行く理由は結局これに尽きる。
クロージングの際、チームコブクロは全員横並びになって手を繋ぐのだけど、黒田さんの潔癖症を考慮して、小渕さんだけは黒田さんの手を繋がず親指を握る。いつもは。
にこにこ客席を見渡しながら手探りで親指を探すも、何度か空振りしてしまう小渕さん。それを見かねたように、業を煮やしたように、サッと手を握る黒田さん。えっ??潔癖症は???は?????
しかも小渕さんの親指以外の指をけっこうがっつり握ってらした。最後にいいもの見れました。ありがとうございました。
締めがこれなのはちょっと申し訳ないんだけど、とにかく最高だった。詳しくは書いてないけど君翼も聴けてよかったしtOKi mekiの間奏で踊るバンメンストリングス国宝に指定したいかわいさだったし「Go right, Go left~」のくだりとかあずあずバースデーの歌とか4つも花道あるのに同じ花道に来ちゃうとことか、本当に盛りだくさんだった。
埼玉行けて本当によかったです。会ってくれた人も、会えなかったけど会おうって言ってくれた人も、これを最後まで読んでくれた人も、ありがとうございました。
あおでした。