あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

背徳感無料

トートバッグはあるけど入り切らないので仕方なく、という顔をしながら買ったものを何かしら手に持って歩くのがたのしい。レジ袋が有料になって以来手に持って歩いたもの。砂ずりポン酢、胡瓜のおつまみ、半熟ゆで卵。コンビニで買ったものをビジホまで持ち歩くたかだか数分間の背徳感が、たのしい。とはいえトートバッグは常に持っているので、手に持つのは汁漏れのおそれがあるものや壊れものに限る。ポン酢が漏れるといけないと思って左手に携えた砂ずりポン酢は、しかし開けてみれば中の小袋に入ったポン酢を自分でかけるタイプであった。ただただ素手で砂ずりポン酢を持ち歩く不審な女になっただけだった。

 

なんでおつまみ然としたものをビジホに持ち帰っているかというと、試験を受けに週に3日はべつの土地に飛んでいるから。筆記試験はたいがい私服OKなのだが、第一志望の試験は珍しくスーツ指定で、初めてスーツで試験を受けた。パンプスで歩き回った両足が靴擦れを起こして、湯船どころかシャワーを浴びるのですら悲鳴をあげそうになってしまう。「パンプスって(ハイヒールよりは)楽なのかと思ってた」と彼氏に言われてあわやブチ切れそうになったけど、それはイカしたお姉さまがコツコツいわせてる9センチも12センチもあるピンヒールと比べればの話であって、普段スニーカーで歩いてる私にとっては脅威であり就活のパンプスは社会問題にもなっているのだ、と懇々と説明した。足の幅まで測定して最高のパンプスを買ったが、痛いもんは痛い。

 

お風呂に入るのがこわい、と思って先延ばしにしながら、今日は読みかけの本を2冊読み終えた。本を読むのは愉しい。購入品を手に持って歩くのは心躍るひらがなの「たのしい」で、本を読む行為はどこか官能的に「愉しい」。ひとが編んだ言葉に息もできないほど搦めとられるとき、蜘蛛に捕食される羽虫を想う。願わくば私は捕食者の側に。