あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

春宵、一等星

時勢の煽りを受けて近所のパン屋はすべてのパンをビニールで覆っていた、少人数で回しているこの店にとってビニールを被せていく何気ない作業がどれだけの負担であるのだろうと思いながら、タイムセールで半額になったチーズフランスを買う。181円、端数を切り捨てて90円。タイムセールをやるような遅い時間に来店した私が悪いのだけど、不景気で閉店されてしまったら困るからもうちょっとぐらい払ってもいいのにと思った。今度は早めに来よう。閉店といえば、一度しか行けなかったけど好きだった札幌のライブハウスも閉店してしまう。出演するバンドにあわせて作ってくれるコロニーの特製カクテルと、段ボールに詰め込まれているような気分になる狭っ苦しいハコ、天井で剥き出しになった鉄パイプなんかがライブハウス然として好ましいなと思っていた。2019年、あの小さなハコでフレデリックを観られたのはほんとうに奇跡だった。どうしようもなく奇跡になってしまった。パンを買った帰り道、やるせないよな、と思いながら見上げた夜空は19時のわりには明るい気がして、耳元に受ける風のつめたさとは裏腹に季節はしっかり春なんだなあと思い知る。星座なんかはよくわからないが、明らかに一等星だろうと思われるひときわ大きな星がビカビカ光っていた。今日は湯船に入浴剤をしずめよう、青いのとか緑のとか、はたまた白いやつじゃなくて、なるべくピンクとかオレンジだとかの春っぽいやつを。