あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

知らない朝日

「あ、私いま、完璧に満たされてる」 とはっきり悟ることが年に1、2度ある。

一部の隙もない幸福。旅行やライブみたいな大きなイベントのときには不思議とそれを感じない。なにもかも満ち足りているとわかるのは、ほんとうに何気ない瞬間ばかりだ。

 

 

 

バイト先の同期で宅飲みをした。1年近く一緒に勤めていたけれど、仲良くなったのはごく最近のことだった。本気でバカなことできる友人を作るのは、歳を重ねるほど難しい。そんな仲になれるなんて思ってなかったよね、トランプをする合間に何度もそう言いながらおおいに飲んで話して笑った。

 

やがて家主が寝落ちし、残った者でとりあえず始発まで寝ておこうということになった。布団に川の字みたいなやつじゃなくて、ソファやダイニングチェアや床にそれぞれ転がるタイプのガチな雑魚寝。私はじかに床に横たわって寝た。

 

朝方いっせいにアラームが鳴る。みんなもぞもぞ起き出したかと思えば 「6時か…」 とつぶやいてまた寝た。私は目が冴えてしまって、昨日のまま散らかった部屋と、そこかしこに死体のように転がる友人たちをぼんやり眺めた。

 

冷え切ったソファに完全防寒で丸まっている友人、無造作に床に寝る友人、ダイニングチェアに座ったまま器用に眠る友人、空き缶とトランプの散らばった無秩序な部屋にゆっくり朝日が差し込んでいくさまが、なんだか妙に美しく思えてただ眺めていた。こんなに仲良くなれると思ってなかったな。いっこうに起きない無防備すぎる友人たちを見ていたらなんだか、幸せだな、と思った。

 

いま私は一部の隙もなく満たされていると、飲み明かした最低な朝にひとり思った。なにも足りないものなんてなかった。すべて満ち足りていた。過去も未来もいまこの瞬間はどうでもよかった。なんていうか、無敵だった。

 

この瞬間自分が最強に幸せだって、はっきりわかることなんて本当に少ない。だから忘れたくないと思った。そろそろ帰るよって叩き起こすまでぼうっと幸せを噛み締めていた朝のこと、みんな知らなくても私だけ覚えていたい。

 

 

あおでした。