あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

ギャラクシーホームランツアー

My Hair is Bad の初ホールツアーを観た。

今回のツアーでは電子チケットが導入されていた。入場する際、紙でできた 「思い出チケット」 なるものを貰える。

 

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栞サイズでかわい~

 

 

マイヘアがホールツアーをすると聞いたとき、素直には喜べなかった。全席指定のホールでは、ライブハウスに比べて距離も遠くなるだろう。モッシュはもちろん、手上げたり飛んだり、そういう盛り上がり方もできなくなるかもしれない。

 

でも。会場に入った途端、息が止まった。ステージがおそろしく近い…………

 

 

 

 

 

3/16 セットリスト

  1. 復讐
  2. 熱狂を終え
  3. グッバイ・マイマリー
  4. ドラマみたいだ
  5. 18歳よ
  6. 関白宣言
  7. 白熱灯、焼ける朝
  8. 彼氏として
  9. 悪い癖
  10. 運命
  11. 卒業
  12. 真赤
  13. クリサンセマム
  14. ディアウェンディ
  15. 元彼氏として
  16. 燃える偉人たち
  17. フロムナウオン
  18. 戦争を知らない大人たち
  19. 永遠の夏休み
  20. シャトルに乗って
  21. ふたり
  22. いつか結婚しても
  23. アフターアワー

En1. 音楽家になりたくて

En2. 告白

 

 

 

 

 

近い。すっっごく近い。

椎木さんもバヤさんもやまじゅんも全身はっきり見える。表情もプレイもぜんぶ、照明を浴びて輝いていた。あまりにもきらきらして見えて、しばらく身動きが取れなかった。ホールだから遠くなるなんて思ってごめん。

 

 

2年前を思い出す。Zeppのそばにある小さなライブハウス。煙草の匂いがたちこめる狭いハコを突き破る勢いで、全力で歌って吼える椎木さんを見て、鳥肌が立ったのを覚えている。

絶対にこんな所で終わるバンドじゃないと思った。270人ほどしか入らないライブハウスなんかじゃなく。隣にあるZeppでも、ホールでも、いつかはアリーナでも演れる。そう思った。

(当時のライブレポ→ 桃白白ナイト - あおいろ濃縮還元 )

 

 

実際、翌年には初Zeppを成功させ、またその1年後にこうしてホールを回っている。

大きなステージで、照明を受けて堂々と『熱狂を終え』を歌ってる姿なんて見たらもう、感慨深すぎてダメだった。

 

 

 

僕は言う「そばにいて」 君は言う「あなたでいて」」 って歌詞は何度聞いてもすごい。

そばにいてほしいと思っている僕 (=椎木さん) と、自分との恋愛よりも夢を追いかけていてほしいと思っている君 (=元カノ)。あなたでいて、って切ねえ……。夜の校舎の前で手を握るシーンよりも、この台詞のほうがよっぽどドラマみたいだ。

 

 

 

『18歳よ』『白熱灯、焼ける朝』だとか、昔の曲も聴けて嬉しかった。

 

 

 

「どっか行こうか って僕が言うと君は首を横に振って ベッドに横になる 僕にキスをして すぐに僕もそれに合わせた 朝のニュースの音と二人のキスの音だけが残って 僕はそれを幸せと呼んだ」

「……悪い癖、という曲を」

 

悪い癖→運命→卒業→真赤と、キラーチューンが続く。

時にスクリーンに映し出される歌詞が、より切なく胸に迫る。3人の生み出す音が、よりダイレクトに心に響く。ライブというより1本の映画を観ているような気分になる。

 

‪「電話の向こうから好きな人が出てきたら。本から文字がばらばら飛び出してきたら。ホールツアー、そんなライブにしたいと思います」‬ と椎木さんは言った。

 

受話器から出てくるような、写真の向こうから笑いかけてくるような、映画や本の世界から飛び出してくるような。触れない作品の垣根を飛び越えて、作り手の熱を感じるような。

 

今までの、全力で噛みついてくるようなライブとは訳が違った。売れたい、男になりたい、本物になりたいとがむしゃらに吼える若者ではもうなかった。全打席フルスイングでなくてもホームランが飛ばせることを知ったマイヘアは、なんていうか無敵だった。

 

ライブという完成された作品が、激しくも優しくも語りかけてくる。そんなステージを観ていた。My Hair is Bad という物語を魅せられていた。

 

 

 

 

スクリーンの文字を追いながら聴いた『卒業』。

でも 君が好きだった」 という箇所のあと、椎木さんは 「笑えるぜ ねえ笑っておくれよ」 とスクリーンには載らない詞を歌う。歌詞カードにも書かれていないこのフレーズが、切なさに拍車をかける。

もっと可愛くていい子なんているのに、それでも君がよかったなんて笑えるよな?って無理やり笑って。ほんとに馬鹿みたいだねって君に笑い飛ばしてほしいけれど、それが叶わないと知っている。切ない。

 

 

 

 

MC、なかなかゆるかった。「カニ食べたー?」 と問いかける客に 「モスバーガーを食べました」 なんてしれっと答える椎木さん。前回札幌に来たときも北海道グルメそっちのけで銀だこ食べてたし、全国チェーンの恩恵受けすぎでしょ。

コカコーラゼロばかり飲んでいた椎木さんは、健康によくないとあちこちで書き込まれたので最近は炭酸水を飲んでいるらしい。


 

 

 

‪「干支が一周して俺は26になる。30まであと4年」 25冊目の小説を読み終えて26冊目に差しかかる、30歳になるまでに何ができるか、といったようなことを言っていたと思う。

 

あとは、成長するに従って責任が伴ってくるといったことも。

「‪俺がやりたいって言い出して始まったホールツアーにもたくさんの人が関わってきて‬。会場、照明、PA、そしてお客さんみんなの協力が必要‬です‬」 

2年前、今は自分たちで運転して機材を運んでいるけれどいつかスタッフさんに運んでもらえるようになりたいと叫んでたマイヘアはこんなところまで来たんだなって感慨深くなった。しかもこんなのまだまだ通過点でしかなくて。

 

 

「映画が好きでいい 本が好きでいい ゲームが好きでいい 非凡でいい 凡人でいい それはそれでいい それはそれでいいんだ 逆に言えば それはそれでいい と言えるようなことしかこの世にはない それはそれでいい」

 

 

「夢を持てとかステージで散々言ってきたけど 俺はロックバンドをやってて それが仕事で だからカッコいいとこ見せにきました」

 

 

 

 

『燃える偉人たち』最高だったな。ロックバンドの可能性に気づかされた。「俺の吐いた唾なんか飲んで美味いすか?」 なんか椎木さんにしか歌えないと思う。最高。

 

 

 

 

‪「楽なことして楽しいか それが?‬」 そう椎木さんが言ったのは、フロムナウオンに入る前だったろうか。息ができなくなりそうだった。

「苦悩 不安 それを超えた先にある 楽しい 嬉しい が俺は好きだ‬」

びっくりした、私がいつも心の奥底でたぎらせていること、椎木さんが熱く吼えてくれたから驚いた。

 

楽しいこと、って、難しい。私はラクして得られる生ぬるい幸せなんて欲しくないから、いつだって険しいほうの道を、より楽しいほうを選んでは苦しんできた。大変そうだねって言ってくるラクな道を歩く人たちが羨ましくて、でも楽しいよって傷を隠しながらやってきた。

 

楽しいことをやり続けるためには代償がいる。私は死ぬまで傷だらけでいるんだろうかと、それならラクなほうに流されるのも悪くないのだろうかと思ったりもした。

 

でも、私なんかには想像もつかない苦渋を舐めてきたロックバンドが、それでも不安や苦悩に潰されずに、その先の楽しさを追い求めていられるのだから。こんなとこで潰れてちゃもったいねえなって、心から思えた。

 

 

 

 

 

『戦争を知らない大人たち』からの5曲は、着席して見た。身じろぎせずにただ、音を紡ぐ3人と、スクリーンを流れていく歌詞を見ていた。

手も上げず体も揺らさずに聴くバラードはいつもより何倍も染みた。すごいものを目撃していると思った。椎木さんがホールツアーにこだわった理由がわかる。

 

 

 


‪「夢でよかったな 夢がよかったな‬」 静かに歌い出すと会場の空気が静かに張りつめる。


‪「あなたがよかったな‬」 そこで星空が現れた。

照明が暗く落とされ、そのなかに点々と小さな明かりが灯っている。ほんとうに星空みたいだった。『幻』。「そういえばもう朝だ」 というところで星空は明け、朝を思わせる光が差す。

 

 

ゆったり座って曲を聴かせる。照明ひとつにストーリーを込める。こんなこと普通ロックバンドにはできない。

拳突き上げてなんぼみたいな客層を抱えてるマイヘアが、急激にこんな進歩を遂げていることに驚いた。自分たちの魅せかた、めちゃくちゃよくわかってる。

 

勢いだけでどんどん潰れていくバンドが多いなかで、がむしゃらに進みつつも最良の形態を探し求め続けるマイヘアならば絶対に生き残れると思った。

 

 

 

 

 

高校生のときに作ったという『ふたり』。未熟なところもあるけどこんな歌はもう作れないと思う‬、と言っていたこの曲がいちばん染みた。

 

君じゃなきゃダメなんてことはない 君より綺麗な人だっているし」 と歌った直後に 「君じゃなきゃダメなんて馬鹿みたいだよ」 と歌詞は続く。君より綺麗な人もいるのに君じゃなきゃダメなんて馬鹿みたい、っていうこのぐちゃぐちゃした感じがリアルで大好き。

 

 

 

『アフターアワー』の間奏で叫ぶ 「ドキドキしようぜ!」 もすっごく好き。『噂』であっという間に本編が終わり、アンコールを求める手拍子が響く。

 

真っ先に椎木さんが登場した。手にはサッポロクラシックの350ml缶。とーやま校長に頂いたというビールを豪快に一気飲みする。

 

バヤさんとやまじゅんが全然出てこなくて 「バヤちゃんこないの?なに?やまじゅん待ってんの?ニコイチかよ……そりゃ俺が上越にきたの小6の頃だったけど。東京もんみたいな感じで見られてたけど~」 ってうじうじいじけてた。

 

 

『音楽家になりたくて』『告白』の歌詞がアンコールにふさわしくてぐっときた。

マイヘア初ホールツアー、場外ホームランやられたなあ。完封勝利ですよ。野球のこと全然わからんけど。

 

 

 

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終演後のみ撮影OKでした。

 

最高だったなあ。今まで観てきたライブのなかでも絶対ベストスリーに入る。すごかった。

言いたいことがありすぎて、まとめようと1ヶ月近く格闘したけど無理だったので、とにかくバーーッと書き殴りました。すっげえ読みづらいね。

 

 

これまで何度かマイヘアのライブの感想したためてきたのでよければ合わせてどうぞ。

 

・2016/8/13 ライジングサン→http://bloomsky.hatenablog.com/entry/2016/08/30/114528

・2016/10/12 桃白白ナイト→http://bloomsky.hatenablog.com/entry/2016/10/23/234950

・2017/8/13 ライジングサン→http://bloomsky.hatenablog.com/entry/2017/09/21/004155

 

あおでした。