あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

かぞえる

さっきから大粒の雪がこんこんと降っている。こんこんと、というのは泉などから水がたくさん湧き出すさまのことを指す言葉なので不適当かもしれないけど、「しんしんと」などと言うほど大人しい降り方ではないからやっぱり「こんこんと」が合っていると思う。真っ白く曇った空から湧き出る水のように雪は降りつづけている。

 

この頃は余裕がなくて、ダウンロードした映画も15分ほど視聴したあたりで止まっているし、読みかけの本など4冊ある。本や映画やライブ(最近では配信)だとか、私の心の拠り所になってくれるエンタメたちは、しかし本当に心に余裕がないときは享受することができない。好きな本を読んで元気になりたいのに、本を読むための元気がない。だからもっぱら頭を使わなくても観られるYouTubeをぼーっと眺めてむりやり笑ったり、あったかい飲み物を飲んだり、強制的に湯船に浸かったりして、強引に元気を引き出すべくがんばっている。

 

最近しあわせだなあと思ったのは、食べたいと思っていたタイミングで母が買ってきたみずみずしいいちご大福と、スーパーでおそるおそる買った半額のラテがかなり美味しかったこと。理不尽や不条理にぶん回されながら、そういう細かいしあわせを味がなくなるまで噛みつづけたい。あした、試験が終わったらひとりで暖簾をくぐって、ネギだくの味噌ラーメンを思いっきり食べようと思う。

 

泡のような日々よさらば

大好きなバイト先が閉店することになり、今日が私の出勤する最後の日だった。

 

ほんとうに愛していた、この場所のこと。まだバイトを始める前、20歳を迎えてはじめてお酒を飲む場所に選んだのもここだった。店に漂う雰囲気のすべてが落ち着いていて大人っぽくて、ずっと憧れていた。

 

高校を卒業してすぐ、初めてのバイトを何にするか迷っていて、そのうちの有力候補がここだった。悩んでいるうちにべつのバイトに誘われて、そこで2年ほど働いたけれど、結局その店も潰れることになって、じゃあ次こそは!と迷わず応募した。その場で採用されて、今に至るまで3年間働くことになる。

 

いまは全国に散らばった大切な友人たちとも、彼氏とも、ここで出会った。ここに集まる人たちはびっくりするほど善良で、やさしくて、でもみんなどこか個性的だった。「男女間にも友情は成立する」と信じている男女間にであれば、真の友情は成立するのだと知った。片方に下心があればたやすく崩れうることも。

 

なにもかも楽しかった。今日飲みたくない?と誰かが仕事中に言い出せば、退勤後そのまま終電に乗って宅飲みした。将来のこと、恋愛に関すること、なんでもかんでも話した。なんで好きな人ができないんだろう、と友達の前であれだけ管を巻いていた手前、まさか先輩に言い寄られていることは言えなかったけど。付き合ってからも少しだけ秘密にしていたこと、同じアパートから出勤して何食わぬ顔で働いていたこと、ごめんねって思ってる。許せ。

 

どんなに辛いことがあっても出勤すれば誰かしら大好きな友達がいて、それだけで救われていた。遅くやってきた青春だった。思い出のすべてが煌めいてた。あれが人生のハイライトだったよねって、友達が時々しみじみと言うこと、ほんとうにその通りかもしれないと思ってる。しあわせな夢を見せてくれてありがとう。

 

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お酒がのみたい気分だけど明日も早いからノンアルにする。おやすみなさい。

 

惜冬キャラメリゼ

住む部屋を決めにはるばる飛んだ。ただ会うということが不要不急にあたってしまう私たちは、内見でもいう大義名分がないとゆうに半年は会えない。半年ぶりに会った彼氏の声は、いつも聞いていた電話の声とちょっと違って聞こえた。少し前までペーパードライバーだった彼氏は、公共交通機関に乗らないために慣れない高速道路を何度も走ってくれた。座り慣れない助手席で私は読めない地図を睨んだ。元から仲は良かったけれど、息のぴったり度合いが恐ろしく研ぎ澄まされており、お互いの目の動きや間合いでなんとなく考えていることが分かるようになっていた。付き合いたての頃よりもずっと、何をするにも楽しくてひたすら笑い転げていた。美しいケーキの並ぶショーケースを前に、せーので食べたいのを指そうとなったとき、ひとつしか残っていない柚子のシブーストを同時に示したこと。突然ノリで社交ダンスごっこを始めたけれど、双方身体が固すぎてまるでサマにならなかったこと。道の駅で売っていたお風呂に浮かべるうんちのおもちゃ(買わなかった)。味噌煮込みうどんの染みだらけになった白いセーター。田舎のラブホみたいな外観の、ハウリングしまくるカラオケボックス。私が人生初めて食べる冷麺に感動しすぎて、肝心の焼肉そっちのけで冷麺を食べまくったこと。空港へ向かう道中にふたりともコーヒーを飲みすぎて、慌ただしくトイレに駆け込んだこと。お互いしんみりした雰囲気が苦手すぎて、別れ際になるとオーバーすぎるほどおどけてしまうこと。特に煌めきを伴って思い出すのはそんなどうでもいいことばかりだ。どうでもよくて、くだらなくて、でもそういうもので私はしばらく息ができる。片道切符で会いに行く春のために、結局半分こしたケーキの甘さを何度でも噛みしめる。

 

2020年総括

2020年に読んだ本、観た映画、行ったライブ(有観客&配信)をまとめました。なかなか長いので、ブックマークでもして年末年始の暇つぶしにゆっくりお楽しみください。

 

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これは新千歳空港で食べた帆立とウニといくらのごはん

 

 

 

 

【本】→40冊

伊坂幸太郎「モダンタイムス」「フィッシュストーリー」

江國香織「とるにたらないものもの」「いくつもの週末」「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

大久保純一「ジャパノロジー・コレクション 広重」

大崎善生「傘の自由化は可能か」

加藤千恵「あかねさす 新古今恋物語

川上未映子「きみは赤ちゃん」「乳と卵」「ヘヴン」

窪美澄「よるのふくらみ」「じっと手を見る」

さくらももこ「そういうふうにできている」

島本理生「生まれる森」「リトル・バイ・リトル」「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」

芹沢桂「ほんとはかわいくないフィンランド

谷崎潤一郎痴人の愛」「春琴抄

西加奈子「ごはんぐるり」

東野圭吾パラレルワールド・ラブストーリー」「あの頃の誰か」「マスカレード・イブ」「怪しい人びと」「ラプラスの魔女」「嘘をもうひとつだけ」「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」「怪笑小説」

益田ミリ「心がほどける小さな旅」

宮下奈都「窓の向こうのガーシュウィン」「太陽のパスタ、豆のスープ」

村上春樹スプートニクの恋人」「カンガルー日和

ものすごい愛「今日もふたり、スキップで」

唯川恵「愛なんか」

柚月麻子「伊藤くん A to E

ポール・オースター「幽霊たち」

 

 

 

きみは赤ちゃん」全人類読んだほうがいい。読みやすい関西弁で面白おかしく、時にシビアに書かれていく妊娠・出産エッセイ。将来子どもをもうける可能性がある女性は読んだほうがいいし、子育てに携わるかもしれない男性はもっともっと読んだほうがいい。子どもをもたない人も、街ですれ違う妊婦さんや子連れのかたにきっと優しくなれるから読んだほうがいい。ぜったい彼氏に読ませようと思う。

 

内容もさることながら、細かい描写の光る「よるのふくらみ」が今年読んだなかでいちばん好きだった。好みは分かれそうだから勧めはしない。人間の醜くてどろどろした部分をこれでもかと描く小説が好きゆえ、そのツボにクリーンヒットした。朝井リョウ好きな人は窪美澄も好きそう。

 

これは一生の愛読書になるだろう、と思ったのは「スプートニクの恋人」。最初のページがあまりに隙がなく完璧で、何度も読み返してはうっとりしてしまう。

 

 

 

 

 

 

【映画】→54本

7月4日に生まれて

アナと雪の女王2

帝一の國

名探偵ピカチュウ

風の谷のナウシカ

恋は雨上がりのように

ミッドナイト・イン・パリ

おんなのこきらい

きっと、うまくいく

タイピスト

最強のふたり

パディントン

パディントン2

モンスター・ホテル

パターソン

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

マイ・インターン

ローマの休日

ティム・バートンのコープスブライド

ラストベガ

素敵なウソの恋まじない

鍵泥棒のメソッド

はじまりのうた BEGIN AGAIN

最高の人生のつくり方

ラスト・クリスマス

ツレがうつになりまして。

ブリジット・ジョーンズの日記

シャイニング

スイス・アーミー・マン

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

ラブ・アクチュアリー

モネ・ゲーム

ラ・ラ・ランド

マジック・イン・ムーンライト

ホリデイ

しあわせのパン

パンとバスと2度目のハツコイ

高慢と偏見とゾンビ

真珠の耳飾りの少女

グランド・イリュージョン

グランド・イリュージョン 見破られたトリック

ウォールフラワー

間奏曲はパリで

シング・ストリート 未来へのうた

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

オンネリとアンネリのおうち

キャロル

レオン

アバウト・タイム 愛おしい時間について

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり

バーレスクチェコ版)

クリスマス・カンパニー

ヲタクに恋は難しい

ア・ゴースト・ストーリー

 

 

 

 

 

映画館、サブスク、授業で観たものも含めました。金曜ロードショーなどで観た映画も「流し見じゃなく最初から最後まで観た映画であればカウントしてオッケー」としています。

 

生まれてこのかた映画に疎く、今年はとにかく10本は映画を観てみよう!というのがテーマだった。想定の5倍も観た結果、私はわかりやすいハッピーエンドの映画が好きだとわかった。あと洋画だとイギリス産が肌に合う。

 

単なる恋愛映画じゃない「恋は雨上がりのように」。恋愛映画に括るのも、青春映画と呼ぶのも勿体ない。17歳の女子高生にも、45歳のおじさんにも、夢中で打ち込めるきらめく"青春" は何歳になっても等しくある。曲もすごくいい。テレキャスターストライプ流れるタイミング天才。

 

3時間近くもあるインド映画「きっと、うまくいく」が私的ベストオブムービー。声に出して爆笑したし、思わず泣いたし、ドタバタコメディかと思ったら感情揺さぶられまくり。3時間あるのにずっと引き込まれる展開で飽きない。「臆病さを捨てろ。でないと50年後死の床で後悔するぞ」というセリフがギャンギャンに刺さった。

 

次点で「ラブ・アクチュアリー」が好き。最高のクリスマス映画。「タイピスト」「パディントン2」「マイ・インターン」「はじまりのうた」「ラ・ラ・ランド」などなどもすごく良かった。

 

 

 

 

 

 

【ライブ】→4本

1/22 夜の本気ダンス

2/24 フレデリック

10/10 フレデリック

10/18 UNISON SQUARE GARDEN

 

 

【有料配信ライブ】→8本

6/28 夜の本気ダンス

7/15 UNISON SQUARE GARDEN

7/19 フレデリック

8/22 UNISON SQUARE GARDEN

9/14 夜の本気ダンス

9/19 UNISON SQUARE GARDENa flood of circle9mm Parabellum BulletTHE BACK HORN東京スカパラダイスオーケストラパスピエBIGMAMAフレデリック

9/27 フレデリック

12/31 UNISON SQUARE GARDEN

 

 

 

配信ライブは、無料配信で視聴したフェスなどは含めず、きちんと最初から最後まで有料で観たもののみをカウントしました。

 

 

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2月、横浜アリーナ


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ヨコアリくんのうれし涙を売るなよ

 


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自粛明けて初めてのZepp


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ジャンパーとタオルの色味が奇跡的なマッチをみせた

 

 

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フェス飯や紙のリストバンド用意しておうちライジングサン開催したのが楽しかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと今年は、フレデリック横浜アリーナ公演に際して書いた文章を音楽文の月間賞に選んでいただいたこと、CD型短歌ZINEを販売できたことを誇らしく思ってます。来年こそは小説ZINE出せればいいな。

 

 

フレデリック横浜アリーナ公演にいたるまで、について書いた文章↓

横浜アリーナにばっくれる準備はできている - 終わらない旅をフレデリックと (2020/03/14) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

 

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QRコードを読み取ると…?

 

 

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CD型短歌ZINE『ゆめゆめ』 - アオイウミレコ~ド - BOOTH

↑CD型短歌ZINEの購入ページはこちら。売り切れたら増刷しますが、いまのところあと数冊しかないのでお早めに

 

 

 

 

 

今年の最初に「2020年やりたいことリスト100」をスマホのメモ帳に打ち込み、1年かけてチェックしていったのが達成感あって楽しかった。来年もやるべく早くもリストアップしているところ。

 

ちなみに達成したのは52個で、「10ヶ所以上カフェ開拓」「原稿料もらう」「クラフトビール専門店」「かたいプリンを食べる」「ファーストキャビンに泊まる」「シャボン玉吹く」「ベレー帽に挑む」「ギターを弾く」などがありました。ギターは弾かせてもらったものの圧倒的に適性がないことがわかった。弾いたは弾いたので無理くり達成カウントした。

 

達成できなかったのは「小樽ステンドグラス美術館」「フェリーで東北旅行」みたいな、どこかに出掛ける系が多かった。このご時世だから仕方ない。「スワッグ作り」「浴衣」「チャイを調合」「アフタヌーンティー」「カラーマスカラ」「バーに物怖じしない」なんかは来年頑張りたい。

 

 

 

それでは良い年末年始を。

 

 

あぐらをかかない

運命の人はいるとかいないだとか、いるとしたらそれは人生にふたり現れるのだとか、様々な運命論が提唱されて久しい。私が考えるに「運命の人」とは、ある人にとっての神や幽霊と一緒で、つまりいると思う人にはいるし、いないと思う人にはいないのだ。私の論では。

 

私の場合、「運命の人はふたりいる説」になぞらえれば、別れのつらさを教えてくれるというひとりめが初恋の人で、永遠の愛を教えてくれるふたりめが今の彼氏だと思う。初恋の人とは付き合ってもないのに烏滸がましいけど。

 

だけど、運命の人がいるにしてもいないにしても、運命とかいう綺麗な言葉にあぐらかいて怠けていちゃ百年の恋もだめになる。国中を探してシンデレラを見つけた王子様だって、見つけ出したことに安堵して愛を囁かずにいたら、身分違いの恋に疲れ果てたシンデレラが城の掃除夫と駆け落ちしても文句は言えない。バッドエンドは紡ぎ続ければハッピーエンドになるかもしれないが、ハッピーエンドも数年経てばバッドエンドで終わり得る。

 

運命だろうとなんだろうと、ろくに歩み寄る努力もせずなんとかなるだろうとたかを括っていれば、壊れるものは壊れる。タイミングや相性の良さにあぐらをかかないで死に物狂いでハッピーエンドをやり続けるしかない。王子様の白馬の足が折れたならドレスの裾たくし上げて自分で走るしかない。なんとかする、しかないのだ。

 

あ、もうだめだ。と思うたびに強引に人間関係を絶ってきた。部活もバイトも友達も何もかも。私がいなくなってもあちらに代わりはいくらでも見つかるし、私にしたってそうだと。今はそう思えなくてもいつかそうなると。実際そうなってきたけれど、今回ばかりは一時の気の迷いで投げ打っていい相手じゃないから、どんな小さな不安もとことん話し合って落とし所を見つけている。喧嘩はしていないものの、細かい軌道修正を繰り返してどうにかやってる。よく聞く「(運命の相手なんていないから)運命にするしかない」というのはどちらかといえばこういうことを指すのかな。

 

私は運命はあると思うけど、運命にあぐらかいてないで幸せは自分で掴みにいく。愛されていることに怠けないし、怠けさせもしたくない。いまはそう思っている。

 

位置について

生きている、ただ最近は必死で生きている。PMSが酷くて漢方を処方してもらった。それでも熱だけが依然下がらず、無理にバイトを休ませてもらって心も体もズタボロになった。すべてがんばりたいのに、今はなにもうまくいかない。そういうターンなのだと言い聞かせる。私は「がんばらなくていいよ」と言われることが苦手だ。がんばりたいから。がんばっていないと、いちど止まってしまうと、ずるずると悪い方向へ流されてしまうことは自分がいちばんよくわかっている。がんばらなくていいなんて言わないでくれと思う。無理をしないでほしいという心配の裏返しなのだということは知っていても、「がんばれ」って言ってくれればまた起き上がれるから。ときおり鳴るZINEの購入通知に生かされている。かなしみを打ち消すように、布団の中で効果測定のアプリをやる。すこし飽きたら青空文庫で「吾輩は猫である」を読む。生きていたい、と、死んでしまいたい、は抱き合わせになって腹の底に鎮座する。死んでしまいたいと零すたびに彼氏はおれがいるのにと悲しい声をだすけれど、だから飛び降りてしまわずに必死で生きている。すこし前まではピンときていなかった「明日もヒトでいれるために愛を集めてる」という歌詞の解像度がやたら上がって、熱くなった目頭を拭ってまた息を吸う。

 

ヤングアダルト

ヤングアダルト

  • マカロニえんぴつ
  • ロック
  • ¥204

 

編み重ねる

労働の予定がなかったからオフにしようかと思ったけれど、丸一日を教習所に費やした。眠気をこらえながらブルーのマーカーを引きに引いた。本の発送をするために街へ行き、目についたケンタッキーで昼食をとる。おばちゃんがたの井戸端会議を聞きながら、昔住んでいたまちで母とケンタッキーに行ったことを思い出した。小学校に上がる前まで住んでいたアパートの近くにはマクドナルドとケンタッキーがあり、月に何回かは母に連れられて子ども用のメニューを食べさせてもらった。二階席にのぼる幅の狭い階段のこと、連れていくと言ってきかなかったコロコロクリリンのぬいぐるみのこと、記憶の隅っこに転がっていたそんなことを細々思い出す。ファミリーマートで本を発送する。ロッキンオンジャパンに私の文章が載ったとき、自分の言葉が活字になって全国に並ぶことに対して打ち震えるような感動を覚えた。自分のつくった本が誰かに届く、というのは、それとはまた違った、体の底からじんわり広がって指先まで温まっていくような感慨深さがある。カフェにこもって効果測定のための勉強をして、また教習所にもどる。運転をして、また学科を受けて、バスに揺られる。スーパーの割引ワゴンを漁って明日の朝に食べるバターロールを買う。このごろは、"生きるために生きている" ような生活をしている、と思う。湯船に浸かるといろんなことを考える。免許や資格勉強のこと。引越しのこと。バイトをいつどうやって辞めるかということ。貯金のこと。望まない好意は迷惑というほどではないけど窮屈だということ。心に余裕がないと本も映画も摂取できないが、そういうときこそ音楽だけは染み入ってくること。取り留めもなく、いろんなことを。そうして今日を編んでいく。誰に褒められもしない生活は私が認めればきっと昇華できる。そうやって明日も生きる。湯船のなかで目を閉じる。