あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

明転

6/20、THE BOYS&GIRLSの 「明転」 ツアー、札幌初日を観た。

 

THE BOYS&GIRLS、通称ボイガルは、ボーカルのワタナベシンゴ氏以外のメンバーが脱退したばかりだ。サポートメンバーを迎えた今回のツアーは、言わば新生ボイガルのお披露目ツアーである。

 

対バンに迎えるは札幌の-KARMA-、大阪から空きっ腹に酒。350人収容の札幌cube gardenはソフトドリンク交換時にちいさなハリボーグミをもらえるんだけど、ビールと交換してしまい今回はもらいそびれた。嫌な大人になってしまった。

 

恥ずかしながら3バンドともドにわかで、ふわっとした感想しか書けないけど、どうかあたたかく見守ってほしい。

 

 

 

【-KARMA-】

〇セットリスト

少年から

SORA

バンド

クラスメート

新曲 

イノセント・デイズ

僕たちの唄

 

 

カルマに関しては、むしろ曲を全く知らない状態で行ったほうが楽しめるんじゃないか?と思い、弱冠18歳だということ以外前情報を入れずに行った。のが大正解だった。ライブがかっこよくてあっさり、すとんとオチてしまった。

 

『SORA』の 「この歌でいつかあなたを泣かせたい」 という歌詞や、『バンド』の 「君の好きな人じゃなくて好きなバンドになりたい」 というフレーズにやられて、カルマの生み出すステージにぐんぐん惹き込まれていく。上がる手は少なかったけど、1曲終わるごとに送られる拍手が力強くなっていった。

 

 

若いから価値があるとか瑞々しい感性とか、そういうことあんまり引き合いに出したくないけど、それでも高校を卒業したての彼らにしか歌えない歌があって、それが刹那的ですごく眩しくて刺さった。

 

「夢がある人ならわかってくれると思います」 と初披露された新曲も、「このままがいい 大人になりたくない」 と歌う『イノセント・デイズ』も。子供でもない、大人でもない狭間の期間に流れる鬱屈を、この時期じゃないと歌えないものを、カルマはきちんと曲に昇華している。

 

『僕たちの唄』での合唱を経て、カルマのステージはきっちり40分で終幕を遂げた。変に青臭すぎず、無駄にキラキラしすぎず、本当にちょうどよくアツくかっこよかった。またライブ観たい!

 

 

-KARMA-(カルマ) 僕たちの唄【MV】 - YouTube

 

SORA

SORA

  • -KARMA-
  • J-Pop
  • ¥250

 

 

 

 

 

 

 

【空きっ腹に酒】

〇うろ覚えセットリスト(曲順曖昧)

愛されたいピーポー

正常な脳

夢の裾

?(1人でいたくない~的なバラード)

Have a nice day!!

夜のベイビー

 

 

 

 

ボーカルゆきてるさんは『Have a nice day!!』のMVで着用していたシャツ、ベースのシンディさんはグッズのチャイナシャツで登場した。

 

SEが止み 「俺らが空きっ腹に酒だ」 とゆきてるさんが言い放ったとき、意図してかせずか全員バキバキにキメ顔で、カッコつけてんのが最強に様になってて、シビれて膝から崩れ落ちそうになった。何そのかっこいいやつ。アベンジャーズか?

 

大大大好きな『愛されたいピーポー』を生で聴けただけでも溶けそうなのに、続いて繰り出される『正常な脳』で完全にガンギマリした。脳みそ沸騰するわこんなの。

 

ビートに五十音を載せて自在に操るゆきてるさんの歌い回しもさることながら、生演奏もバッキバキにかっこよくて。圧倒的なステージングを見せつけてきたかと思えば、「どうもBUMP OF CHICKENです」 「藤くんやで~」 とテキトーなこと言って観客の心をどんどん掴んでいく。フロム大阪も伊達じゃない。

 

ツアータイトル 「明転」 にかこつけて、「今日はボイガルよりも明転って言おうと思う」 とゆきてるさん。「俺が明って言ったら転って言ってな」 とのフリから始まる謎のコールアンドレスポンス。

ゆ 「明!」

客 「転!」

ゆ 「明!」

客 「転!」

ゆ 「空きっ腹にー!」

客 「酒ーー!」

楽しかった。「(転!って言うときに)手もつけたらかわいいよ」 と斬新な切り口で拳突き上げるのを促してくるのかわいかった。

 

 

空きっ腹に酒が北海道で初めてライブをしたのは、THE BOYS&GIRLSとの対バンであったという。

ゆ 「打ち上げで空きっ腹のメンバー内で本気で喧嘩してな…(隣の西田さんに向かって)聞いてる?」

西 「チューニングしてて全然聞いてへん」

ゆ 「昨日食べたサーモン美味しかったなって話」

西 「ああ、美味しかったな」

ゆ 「本当に聞いてない…(笑)初対バンの打ち上げで喧嘩したって話。そんで止めてくれたのがTHE BOYS&GIRLSでした。『まあまあ、仲良くしようぜ』みたいな感じで全然止めれてなかったけど。でも友達の門出を祝うのは当然だろってことで大阪からわざわざ来ました」

わざわざ、としきりに強調するのは空きっ腹なりの祝辞なんだろうな。

 

 

シンゴが好きな曲を2曲やりますと言って始まった『夢の裾』。バキバキの演奏とリリック大連射のABメロを乗りこなし、耳馴染みのいいサビへ導く曲の流れは空きっ腹の得意技なんだろうなと思った。「僕ら夢の裾にしがみつく 今が全てさ」 という歌詞が染みる。

 

フリースタイルラップも披露する。大阪から来た空きっ腹に酒です、札幌のノリ方最高、みたいな内容をきちんとかっこよくラップにしてくれた。わっと起こる拍手に、「次バラードなんやけどな」 と笑う。

 

(次の曲、ラップで始まって、1人でいたくない~的なサビのバラードだったと思うんですけど、タイトルわかる方いたら追記しておくので教えてください)

 

 

「僕がインザハウス!って言ったらインザハウス!って返してください。インザハウスっていうのは主役って意味です。今日の主役はカルマでも、空きっ腹でもボイガルでもなくて、お前らだよ」 そう言って始まった『夜のベイビー』。

 

心地いいリズムに乗り、煽られるがまま手を上下させていると、ゆきてるさんが客席に降りてきた。「二階席(の対バン相手や関係者)には見せん!」 と言ってフロアど真ん中、柵の上に腰掛ける。

 

私はちょうど柵のあたりにいたもので、すぐ目の前にゆきてるさんの背中があって、何がなんだかわからなかった。手を伸ばせばたやすく届く距離だった。手を上下させながら、インザハウス!と歌いながら、シャツの模様と髪の毛を交互に眺めていた。あんなに近いと顔とか見れないよ。

 

初めて見た空きっ腹に酒のライブ、めっっっちゃ良かった。あまりにかっこよくて、開演する前空腹に流しこんだビールが雲散霧消してしまった。ご馳走様でした。

 

 

 

空きっ腹に酒 / 正常な脳 - YouTube

 

愛されたいピーポー

愛されたいピーポー

  • 空きっ腹に酒
  • ロック
  • ¥250

 

 

 

 

 

 

【THE BOYS&GIRLS】

〇うろ覚えセットリスト(なにもかも曖昧)

24

一炊の夢

少年が歌うメロディー

ただの一日

階段に座って

陽炎

すべてはここから

パレードは続く

陽炎

 

 

 

いざTHE BOYS&GIRLS。サポートメンバーには Gt.ふるした、Ba.三角、Dr.ポルノ大岡の御三方を迎えた今回の布陣。

 

ボイガルがステージに登場した瞬間、炎が吹き出すように観客のボルテージが一気に上がった。鳴らす1音目から力強く拳が突きあがる。

 

ボイガルの歌詞からは、札幌の情景が薫る。『24』の 「4プラ近くをぷらぷら」 は大通にある4丁目プラザというファッションビルのことだし、4プラ近くにはTSUTAYAやピヴォ(タワレコの入ってるビル)だとか本当になんでもある。「階段降りたらただの地下街」 はポールタウンのことだろう。

『階段に座って』の 「新川通りを一人進む」 もそうだし、『パレードは続く』の 「雪虫が飛ぶ街を歩いた」 なんて道民が聴いたらゾッとする歌詞もある。

 

 

「明転」 ツアーに込められた意味を『少年が歌うメロディー』に垣間見る。照明の落とされたステージで、ピンスポットのみがシンゴさんを照らした。

「ゆづき見てると、いいとこ見せなきゃなって思う。空きっ腹見てると、もっと頑張らないとって思う。ふるした三角ポルノ見てると、お前ら最高だよ、いいやつやろうぜって思う」

 

暗さを知っているからこそ光が際立つ、みたいな、ツアーテーマの確信に触れるようなことを言う。初めてのライブの時からやっている曲を、と告げて歌い始めた。「あれからどれくらい経ったかな」。ゆっくりと零される 「大人になるってなんだろね 確かなことってなんだろね」 という歌詞ひとつひとつが雨粒のように沁みていく。

 

最初はシンゴさんのみを照らしていた照明が徐々にステージを照らし、間奏で強い明かりが灯りはじめたとき、明転していくTHE BOYS&GIRLSの姿を目の当たりにした気がして泣きそうになった。

 

 

『階段に座って』が始まると客席はさらに沸騰した。「ボロボロと涙が止まらないのは カーテンの向こうで強く歌い続ける あなたがやってるロックバンドが優しかったから」 という熱いサビで居てもたってもいられなくなったダイバーたちが、続々とリフトしては頭上を飛び交う。突きあがる拳の合間から、シンゴさんが 「あなたがやってるロックバンドがいてくれてよかった」 と歌っているのを見たとき、胸が熱くなった。

 

ツアーの核となる新曲、『陽炎』。最初の一音から会場の雰囲気が変わるのがわかった。「揺らめきながら 煌めきながら 儚くも美しく 頼んだよ陽炎」。この歌の存在感に、熱量にぐんぐん引っ張られて一体感が強まっていく。ダイバーも転がってはシンゴさんと拳を突き合わせてまたも飛ぶ。

 

 

根室ハイワットホールという、パチンコ屋を改造して作った北海道の端にあるライブハウス。その店長をしているカズマという友人が、若くして癌になったのだとシンゴさんは話す。

「そのこと俺の誕生日に告げられて、誕生日になんて発表してくれたんだと思ったけど…(笑)俺は金もないし治してやることはできないけど、ノートを持ってきてるので、頑張れとかなにかひと言書いてくれたらあいつも喜ぶと思います。全員書いてたら4時までかかっちゃうから、並んでたら気持ち込めるだけでもいいし」 とのことで。道民とはいえ根室なんて異国の地みたいに遠いけど、良くなるといいな、伝わるといいなって思った。

 

 

確か『すべてはここから』で本編が終了した。はず。アンコールを求める手拍子でまた4人が現れる。

 

「そういえばツアーファイナルの発表ってしてないですよね?」 とシンゴさんが言い出し、会場がきょとんとする。「あ、いま発表されてる最後の公演は仙台、マイヘアとの対バンだけど、実はあれがファイナルじゃないんですよ。……ツアーファイナルは、12月13日金曜日、ペニーレーン24でのワンマンです」

 

「バンドメンバーが辞めるってなった最後のツアー。ペニーレーン550席のチケットに1000通を越える応募がありました。ああ、最後って凄いんだ、あいつらって凄いんだって思った。今日のチケットは完売しなかった(※350キャパ)けど、ファイナルは絶対に!最速チケットは本日の物販から手売りで買えます、ボイガルは手売りを大事にするバンドだから!予定なんてわかんないかもしれないけど、半年後には知らない曲だらけになってるかもしれないけど、来てほしい!」

 

そしてアンコール。一体感をもってじんわりと染みていく『パレードは続く』のあとは、なんと二度目の『陽炎』。曲が始まった瞬間、今日イチで会場のボルテージが高まった。全身全霊をかけたステージは、それこそ陽炎が揺らめいてしまいそうに熱かった。

 

 

THE BOYS&GIRLS - 「パレードは続く」 MUSIC VIDEO - YouTube

 

陽炎

陽炎

  • THE BOYS&GIRLS
  • ロック
  • ¥250



 

 

最高の音楽体験だった。どのバンドも三者三様にかっこよかった。どのバンドも違うベクトルのアツさがあって、そのどれもに痺れた。カルマは手持ち花火、空きっ腹はジッポーライター、ボイガルは焚き火みたいな熱さ。新生ボイガルのお披露目として、こんなにもアツい火蓋の落とし方がある?

 

 

 

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3バンドともまた絶対に観たい~~!

 

 

あおでした。

夢をかなえた話

長年の夢が叶いました。

 

6月28日発売の ROCKIN' ON JAPAN 8月号、ジャパンレビューという読者投稿欄に、このたび私の書いた『フレデリズム2』のディスクレビューが掲載されます。

 

今はこれ以上のものは絶対にできないってぐらい本気で書きました。フレデリック愛と文章力のすべてを注ぎこんだ最高傑作なので、読んでほしいな。

 

立ち読みでも図書館でも、最後の一文だけでもいいから目を通してくれたら嬉しいです。買って手元に置いてくれたらもっともっと嬉しい。

 

私の夢をひらたく言えば 「活字になって誌面に載ること」 だったけれど、もちろん載るのがゴールではないので。ようやく掲載されたこの文章は、だれかに読んでもらって、あなたに伝わって初めて実を結ぶんです。伝わらないと意味がないから。

 

私が音楽雑誌を買うときの決め手は、「手元に残しておきたいと思うかどうか」。深いインタビューやハッとするフレーズ、なにかひとつでも 「手元に残したい」 ってものがあったら買うようにしてます。

 

思わず手元に置きたくなるような、永久保存版の文章を書いたつもりです。

 

ちなみにタイトルは フレデリックを聴いてしまったら ──『フレデリズム2』に彩られ、春」 としました。存分に愛をしたためました。どうかよろしくお願いします。あなたに読んでほしい。

 

 

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バンプ表紙です

 

 

(※最後のほうにもまだちょっと続くので、個人的なエピソードはいらないよって人は次のキリトリ線が出てくるまで読み飛ばしてね)

 

 

 

 

 

 

 

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宣伝はここまでにして、夢の話をする。

 

物心つく前から文章を書くのが好きで、10歳のときには、自分の書いたものが活字になって出版されることを夢見てた。

 

邦ロックを知った高校生のころ、ロッキングオンジャパンのレビュー欄に載ることを夢見はじめた。自分と大して歳の変わらない人たちの圧倒的なレビューが掲載されているのを泣きそうになりながら見てた。

 

心の底から羨ましかった。悔しくて妬ましかった。負けたくなかった。私だって本気で書けば、って思ってた。でも思ってただけだった。

 

何度も書こうとしたけど、何度やっても自分の思ったような色が出なかった。完成する前に諦めては嫉妬に狂うだけの年月を重ねた。「載りたい」 という気持ちで頭でっかちになりすぎていた私は、「伝えたい」 って思って書いた言葉じゃないとなにも伝わらないことにずっと気づいてなかった。

 

2017年、1番好きだと思えるバンドに初めて出会えた。フレデリックに出会って、世界の色が変わって見えるようになった。

 

私にとって『フレデリズム2』は革命だった。歌詞もメロディーも演奏もアートワークも、こんなに隅々まで好きなアルバムが存在することにクラクラした。感想を呟いても、ブログにまとめても足りなかった。私がどんなにこのアルバムを好きだと思っているか、語っても語っても指のすきまからこぼれ落ちていくようだった。

 

ちゃんと伝えたいと思った。ツイートでもブログでもなくて。もっと不特定多数の見知らぬだれかに、願わくば本人たちに届くようなところで、いままで培ったものすべて費やして『フレデリズム2』の素晴らしさを綴りたいと思った。投稿するしかないと思った。載ることがゴールではなく、「伝えたい」 がために 「載りたい」 と初めて思えた。

 

4月から構想を練り、納得のいくものを書き上げたころには5月になっていた。これ以上は書けないと思えるほど自信作だった。これでダメなら潔く諦められると思ったけど、だからこそ怖かった。すべてを費やしたこの文章が、通用しなかったらどうしよう。ここまで本気で書いても伝わらなかったら、二度と筆を取れなくなるかもしれない。怖かった。

 

JAPAN JAMでの健司さんのMCレポと本人のツイートを見て、そんな気持ちも消えた。健司さんが仰っていたことと趣旨は違うけれど、私がフレデリックを聴いて思ったことを形にして、それに触れただれかがまた違ったことを感じられたなら、そんなに素晴らしいことってない。私のエゴなんてどうでもいい、ただ伝えたいと思えて、送信ボタンを押せた。

 

1ヶ月後。掲載が決まった。

 

何年もずっと抱いてきた夢が叶って、それこそ夢のなかにでもいるような気分だった。こんなことあるんだ、長年の夢が叶うなんてことが、ロックスターでもなんでもないただの凡人の私に起こりうるんだって思った。

 

たまに文才あるねみたいに言われるけど、私のこれは生まれ持った才能じゃなく、骨身を削る思いで10何年もかけて手に入れた努力の結晶で。たくさん悔しい思いをして、伝わらないことに絶望してきた。そうやって積み重ねてきたすべて、この日のためにあったのかなあって思えた。22年生きててやっと、本当にちょっと、報われた気がした。

 

ということを、夢を叶えた話を、ひとりじゃ受け止めきれないほど嬉しいからこうして書いた。でも今は夢が叶ったことよりも、少しでも好きなバンドの素敵さを伝えられることが嬉しい。綺麗事みたいだけどほんとだよ。

 

 

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ものすごくハードルを上げてしまった気がするけど、どうかよろしくお願いしますね。

 

『フレデリズム2』リリース当初、感想を書いたんだけど(フレデリズム2 - あおいろ濃縮還元)これが鉛筆でサッと描いたラフ画だとして、2ヶ月聴きこんで愛を熟成させた今回のレビューは奥行きも陰影もつけまくったガチの油絵です。

 

この感想とか、あのミッドナイトグライダーに関する文章とか、ちょっとでもいいなって思ってくれた人には絶対に後悔させない出来だと思う。

 

普段こんなこと言わないけど、たくさん広めていっぱい感想ください。他でもないあなたに伝わってほしくて書いたので。空リプでもなんでも拾いにいくから。

 

どうかよろしくお願いします。あおでした。

 

ともしび

死ぬことだけを生き甲斐にしている友人にかける正解の言葉はちゃんと見つけられないでいるけど、誰にも言えないでいる死にたいと思ってることを私にだけ言ってくれているうちは間違ってはないはずで、でも死んでほしくないって縋ることはあの子を苦しめるってわかってるから、また茶化して返して、少しだけ込めた本音に気づいてくれることを祈ってる。いくらでもバカみたいなこと言って笑わせてあげるから、明日あいつと遊ぶからまだ死なないでおこうってずっとずっと思っていて、そしていつかどうでも良くなっちゃえばいい。授業サボってシャボン玉吹こうよとか、駄菓子ありったけ買って公園で食べようとか、そんな突拍子もないこといくらでも言って飽きないようにしてあげるから、あいつが悲しむからまだ生きてようかなって思ってほしいんだよ。私が引き止めることなんてできないのはわかってるからせめて繋ぎ止めさせてほしい。こないだ読んだ 「さよなら、平成くん」 という本の主人公と私の気持ちが驚くほど似ていて、胸がぎゅっとした。ねえ、私はあなたのお葬式より先に結婚式に行かせてもらわないと困るんだよね。

薄紅

女の子が朝の支度をするワンシーンが好き。寝間着にすっぴんで初期装備といった感じの女の子が、メイクやヘアセットを施してみるみる女性になっていく姿が、花開いていくみたいで美しいと思う。お泊まり会でもすると特に思う。手馴れた様子でさっと髪を巻き、膨大なコスメをてきぱきと順に塗っていく、朝。無駄のない動きが美しくて、自分もアイシャドウをのせながらつい横目で見たりしてしまう。KITAKU BEATSで康司さんが 「僕の隣でそっとそっとささやきあったりマスカラ塗っちゃったりしていて」 と歌詞を書いた理由がわかる気がする。女性がいつもの顔を作るためにこんなにも色を塗り重ねていること、男性ももっと知ればいいのにとも思うし、知らなければいいのにとも思う。そんな取り留めのないことを考えながら跳ねあげた睫毛にマスカラを塗った。

『逃避行』の横顔

フレデリックの曲を聴いていると、ピカソの絵みたいだな、と思うことがある。

私にも書けそう~とかそういうことじゃない。ピカソの画法とフレデリックの作風に通ずるところがある、ように思う。

 

 

 

後期ピカソの 「泣く女」 を見ると、目や鼻の描き方が独特なことがわかる。これはキュビズムという手法で、いろんな角度から見た姿をひとつの画面に収めてしまおうというもの。ピカソは人物の横顔、正面から見た顔、それぞれを切り取ってひとつの顔に落とし込んでいる。ちょっと難しいね。もう少しわかりやすく言うと、

 

 

もっと知りたいピカソ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

顔を正面から見ているのに、輪郭は明らかに横顔みたいな描かれ方をしていたり、横向きのまぶたの中にもうひとつ正面を向いた目が入っていたりするの、わかります?正面からの絵、横から見た絵をわざわざ何枚も描かなくても、この1枚でどの角度からの表情も見られちゃうよっていうのがキュビズム

 

 

私はフレデリックの曲にこのキュビズムを感じる。ひとつの物事を描いているようでいて、いくつもの光景が見える。切り取る角度によってラブソングにも応援歌にも聴こえるフレデリックの曲は多角的だ。

 

今回は、私の愛してやまない『逃避行』が見せるふたつの表情について語る。

 

 

フレデリック「逃避行」Music Video / frederic “Tohiko” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release- - YouTube ←MVはこちら

 

逃避行

逃避行

 

 

 

『逃避行』は駆け落ちする男女を描いたラブソングとして聴くこともできるし、フレデリックというバンドの歩みを描いているようにも捉えられる。

 

私は、「フレデリズム2」 のトレーラーで初めてこの曲を聴いたときは後者だと思ったし、初めてフルバージョンを聴いたときは前者に思えた。1曲でふたつの表情を楽しめる『逃避行』は、キュビズム的なんじゃないかなあと思う。

(と私は思ってるけど美術に詳しいわけじゃないから間違ってたらそっと指摘してね)

 

 

 

私が見るひとつめの顔は 「ラブソングとしての『逃避行』」。

 

ここからすべて妄想で補完して書くので、こういう意図で書かれたかはわかんないよ。私にはこういうストーリーが見えてるってだけだから、私が見てるのと同じ物語を見てみたいってひとだけ覗いていってね。

 

 

この曲をラブソングとして聴くならば、「見つめあったのは起点と終点の二人」 という歌詞から、ここに登場するふたりの男女は遠い地に住んでいることがわかる。それもきっとJRとかじゃなく、新幹線の起点と終点レベルの遠さなんだろう。これは勝手な推測だけど。

 

溢れ返るターミナルに向かって」 走る終点の彼女は、なにを思うのかふと立ち止まる。

 

それを見る起点の彼。そして、「立ち止まった君をずっと待っているのに 絡み合った手を掴んではさ連れさってしまったんだ」。か、駆け落ち~~!!!ヒュ~!!この箇所で私のなかの逃避行夢女子が暴れだすのはまた別の話。

 

そこから 「ばっくれたいのさ」 というサビへ。ばっくれるとか逃避行ってマイナスなイメージで使われることが多いけど、ここでは未踏の場所を求めて駆け出していくプラスのイメージに満ちた言葉として使われている。

 

このまま正解不正解掻っ攫って」 「このまま現在過去未来掻っ攫って」 という思いで彼女の手を取る彼。この逃避行が正解でも不正解でもいい。君の今も昔のこともこれからの未来もまとめて連れ去ってしまいたい。ということなんじゃないかなって聴きながらいつもニヤニヤしてる。後先の考えなさは置いといて男前だ……。

 

2番Aメロから、1番ではあまり語られなかった彼の心情が垣間みえる。

辿る前例の中には誰が見えているのか 分かち合ったのは自分の安心のくせに」。ここ、彼が彼女に対して 「僕にやけに前の男の影重ねて不安がってるみたいだけど、今そいつと僕は関係なくない?そいつのこと好きだったのは自分じゃん……」 って悶々としてる姿を描いてるように私には見えた。

 

続けて 「とても文学的にはなり切れない僕でも思い当たる気持ちを裏切れますか」。妄想アクセル全開で意訳すると 「歯の浮くような言葉とかロマンチックなことは言ったりできないけど、そいつみたいに不安にさせたりはしないから、思い出塗り替えてもいい?」 ってことなんじゃないかな!ウワーッッ!!て思ってる。

 

トレーラーで初聴きしたときは 「ばっくれたいのさ 退屈をしらばっくれたいのさ」 という箇所が切り取られていたから思い至らなかったけど、「君とばっくれたいのさ」 という歌詞を知って初めて、これはラブソングとしても捉えられる曲だと感じた。

 

 

 

 

そしてもうひとつの顔は 「バンドの歩みとしての『逃避行』」。個人的には、ラブソングとして楽しめるように作りつつもこちらの意味合いも強いんじゃないかなって思ってる。こちらでは登場人物を 「遠距離恋愛中の男女」 としてではなく、「バンド(≒フレデリック)とリスナー」 の関係性に置き換えてみる。

 

先ほども取り上げた 「立ち止まった君をずっと待っているのに 絡み合った手を掴んではさ連れさってしまったんだ」 という歌詞は、なんらかの要因で立ち止まっている私たちリスナーの手をぐっと掴んで走り出すバンド(≒フレデリック)の姿にも思える。

 

君とばっくれたいのさ」 「ばっくれたいのさ このまま まだ見ぬ街へ」 といったサビの歌詞も、リスナーをまだ見ぬ街へ連れていきたいという意気込みに聞こえる、私には。

 

さっき騒ぎ立てた2番Aメロの歌詞だって、バンドとリスナーに置き換えて読むとするなら 「とても文学的にはなり切れない僕(たちの音楽)でも、(あなた=リスナーの)思い当たる気持ちを裏切れますか」 って言ってるようにも聞こえるし。これはただの願望で塗り固めた私の妄想だけど。

 

そして最後、歯切れよく終わる 「始まった 始まった 始まってしまったんだ まだ見ぬ街へ 君と逃避行」 という結び。まだ見ぬ知らない街へと一歩踏み出していく、バンドとしての高みへの逃避行に、私たちリスナーも連れていってくれるんだと思ってもいいですか。

 

 

 

 

 

というように、ここでは特に私の大好きな『逃避行』を取り上げたけど、フレデリックの歌はたった1曲取ってもいろんな角度からの見方ができるキュビズム的な曲だと思っています。パッと見はラブソングや応援ソングだけど読み解くとバンドの歩みが伺える、みたいな。

 

ほかにもこういう多角的な曲はたくさんあるので、お気に入りのナンバーを探していろんな角度から眺めてみてください。

 

では。あおでした。

 

幸福で頭がくらんでぼうっとしている。今日、長年の夢がひとつ叶った。詳細はまだ言えないけど、時が来たらこれでもかと騒ぐのでほほえましく見守ってくれたら嬉しい。今月中には言えるから待ってて。

 

心臓が飛び出そうってこういうことを言うんだと思った。呼吸が浅く、涙腺が熱くなって、どうしていいかわかんなくなった。小さな夢はいくつも叶えてきたけど、まあ大きな夢ってほどでもないんだけど、とにかく長年言い続けてきたことだから感慨深い。

 

高校生の頃くらいからあたためてきた夢を叶えて、それこそ夢のなかでも歩いているみたいで、やけにふわふわしている。気づいたら2コマの授業が終わっていた。いつものカフェに寄って、いつもは選ばない洒落たケーキセットを頼んで、ささやかにお祝いした。ちいさなフォークで芸術品みたいなケーキをつついてたら、ぶわっと実感が湧いてきてまた泣きそうになった。

 

でも、なんで長年夢見てきたかって、長い間ずっと踏み出す勇気がなかったからだった。全力で当たって砕け散ったらもう立ち直れなくなりそうだった。そんなことがずっと怖くて、自分に絶望したくなくて、ただ指をくわえて憧れてたからこんなにかかってしまっただけ。一歩踏み出した先の景色がこんなにもいい見晴らしだったなんて知らなかったよ、ねえ。

 

シャッフルで再生していたウォークマンから流れた『TOGENKYO』がモロに刺さって困った。「妄想なんてそんなことわかっちゃいるけど掴みたいな」 って、ずっとずっと思ってて、現にこの曲にも支えられてやっと掴めたわけで。「望遠鏡ばっか見てたら妄想で終わっちまうな もう全部作っちまうさ」 なんて歌詞に勝手に背中押してもらってたから。泣きそうだ。

 

いままでのすべて、私が積み上げてきたぜんぶ、今日この日のためにあったんじゃないかな。そう思えた。この気持ちを忘れたくないって思ったからこうして残してる。まだ言えないんだけどさ。待ってて。

 

つめたいあかり

新しいバイト、慣れないことばかりで心の使ったことない部分がやたらとすり減るけど、死ぬほど向いてないんだろうけど、好き。

 

コンビニすら23時で閉まる中途半端な田舎で生きている私にとって、繁華街のど真ん中で働くなんてセンセーショナルな出来事で。店を閉めてひとたび踏み出せば、煌びやかな街が口を開けて待ち構えている。もっとも煌びやかなのは看板に灯るネオンだけで、酔っ払いとキャッチでごった返している繁華街はちっとも綺麗じゃないけれど、都会の人ごみにひとりで紛れるのが好きなのでなんか落ち着く。

 

都会で働けばバイト帰りにマックに寄ることもできる。そんなことで背徳感に痺れるくらい私は田舎に飽き飽きしてる。すすきのマック、2階席、窓際。有名なニッカの看板と、交差点にごった返す人波を眺めながら安っぽいハンバーガーを食べているとなんだかすごく落ち着く。

 

田舎の薄暗い夜道が嫌いで、だから夜の街を走り抜けるネオンにどうしようもなく安心する。都会の煌めきに憧れてドキドキするとかじゃなくて、都会のつめたさに心の底からほっとするのなんてどうかしてるけど。

 

つめたく灯るネオンを思って今日は安らかに眠れそうな気がする。