あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

蛇口

除雪車の唸る音で目が覚める。カーテンの向こうに明けきらない空。インスタントのコーンスープの湯気、頬を裂くようなつめたい空気が沁みる朝。もう冬だ。土曜なのに平日よりよっぽど忙しいの、笑うしかないけど、こういう朝を過ごせるなら悪くないかもしれないって思いたい。

 

 

 

綺麗なものをめいっぱい映えさせるより、なにげない美しさを切り取ることのほうが難しくて、好きだ。高校のとき写真部に入っていた友人が撮った一枚を忘れられない。早朝の校庭、まどろむ朝日に照らされて宝石みたいな雫をたらしている蛇口の写真。ありふれたワンシーンのなかで輝くその美しさ。

 

友人は写真でそれをしたけれど、私は言葉で同じことをしたい。日常に埋もれているハッとするような美しさを言葉で掘り起こしたい。

 

 

 

昔は本を読んでいるあいだだけ、違う世界に飛びこんでいられた。あまり読書に時間が割けない今、現実とそうでない世界とを隔てるのは音楽だ。『DAY DREAM BEAT』を聴きながらそんなことを考えていた。

 

先日ライブを初めて観てから、ハンブレッダーズが頭にこびりついて離れない。ライブには手を挙げたりいろんな楽しみ方があるけど、音楽っていうのはバンドとお客さんひとりひとり、1対1の世界を作るもの、みたいなことを言っていたのが忘れられない。音楽を聴いているときにだけ生まれる1対1の世界。"ヘッドフォンの中の宇宙" を大事にしたい。

 

 

まとまらなくなってきたのでこのへんで。あおでした。

 

セーフティバントツアー

6/9、ロックの日My Hair is Badを観た。

 

「〇〇ホームランツアー」 と冠したライブをやってきたマイヘアが次に繰り出したのは 「セーフティバントツアー」。急に守りにきた。

東名阪+札幌を巡るゼップツアー。チケットをさばくのが難しいことで有名なゼップのなかでも、Zepp Sapporoは最も売り切るのが難しい。そんなハコを東名阪にプラスしてくれて嬉しいし、そんなツアーを "セーフティバント" だと言ってのけるの度胸あるなあ。

 

 

【6/9 セットリスト】

  1. アフターアワー
  2. グッバイ・マイマリー
  3. 革命はいつも
  4. 接吻とフレンド
  5. 復讐
  6. 元彼女として
  7. 最愛の果て
  8. 真赤
  9. 運命
  10. 悪い癖
  11. 彼氏として
  12. 卒業
  13. 告白
  14. mendo_931
  15. ディアウェンディ
  16. 元彼氏として
  17. 燃える偉人たち
  18. フロムナウオン
  19. 戦争を知らない大人たち
  20. いつか結婚しても
  21. 夏が過ぎてく

En1. ドラマみたいだ

En2. 熱狂を終え

En3. クリサンセマム

 

 

 

 

 

『アフターアワー』で開幕。いきなり全開だ、マイヘアも観客も。あっという間に熱狂が沸き起こる。Zeppのよく似合うバンドだなあ、と思った。青臭さが削げ落ち、研ぎ澄まされている。前までは飢えるようなギラついた感じだったけど、程よく落ち着いたというか。

 

かと思えば前列の女の子を 「ん?化粧落ちたって?いいよいいよかわいいから」 とたらしこんだり。「痴漢はだめですよ、ありえない」 と強く言い切ったかと思えば 「俺がラブソング歌ってる目の前で女の子触るなんて許さないからな!むしろ触れるべきは俺だから!」 と結んで笑いを誘う。

 

ライブハウス初めてな人ー?と聞くと、前列真ん中のひとたちが一斉に手を挙げる。さすがに椎木さんも 「え、大丈夫?…いや、いいけどね、大丈夫じゃなかったら言ってね」 と驚いていた。案の定将棋倒しがひどかったけど 「具合大丈夫じゃなかったら言って」 「大丈夫?じゃない顔してるね?通してあげて」 と全力でフォローしていて、ぐっときた。

 

「ライブハウスに楽しみ方なんてない 俺らにだってやり方なんてない 弾き方だってあるようでない‬」 と "自由に楽しめ" ってことを暗に示してくれる。「俺が手上げろって言ったら上げるの?」 と問いかけてたやつすごく良かった、「自分次第だ」 って。

 


‪爪弾くギターに乗せて 「まだ少し春の残る札幌で‬」 とつぶやく。6月になっても涼しいこの街は、確かにまだ春の面影を残している。「春と夏のあいだ 赤と青のあいだ‬」、そう言って始まる『真赤』。

 

春、恋に落ちて」 というサビが印象的だけれど、「夏の匂いがした」 とも言っているから、この曲って初夏の歌なんだなと思った。春と夏のあいだの。ちょうど今ぐらいの。

 

『悪い癖』の冒頭部分、いつもは 「朝のニュースとキスの音だけが響いて それを幸せと呼んだ」 とけだるい幸福感に満ちた描写をするけれど、今回は 「寝ぼけながら引き寄せてキスをした」 みたいなことを言っていて、独りよがりな印象を受けた。

 

ステージで元カノのことあんまり吼えなくなったと思ってたけど、今日は 「恋人から友達には戻れないと俺は思う‬ 恥ずかしいけど‬」「ごめんね 戻れない‬」 「忘れてくれよ」 ってなんかすごい引きずってた。

 

でもマイヘアのそういう人間くさいところが私は好きで。「この感じ久しぶりだ」 と椎木さんも言ってたように。がむしゃらに元カノやロックバンドについて吼えてるこの感じが観たかったのだ。

 

「収入上がったし 好きな服が買えて好きなことができて 金を払えば風俗にも行ける‬」 「音楽と酒と女‬のことしか考えてない」 だとかさらっと言っちゃうあたりも。

 

「先頭を切っていきたいと思うこともあったけど 俺はヒーローでもロックスターでもなくて My Hair is Badの椎木知仁だ」 と言っていたのにもしびれた。売れてもてはやされ出すこの時期にも、きちんと地に足ついている。

 

『mendo_931』、「女の子の日? 先に言え!もう払っちゃってるんですよこっちは」 と歌ったあとに言った 「タクシー代出すから!別日で!‬」 が最高にクズすぎて笑った。ガチでドン引きしてるバヤさんの表情も含めて好き、このくだり。

 

そういえば下手のほぼ最前列で観ていたんだけど、バヤさんのベースプレイかっこよかった。客席にお尻向けてフリフリしたり、キュートでもあった。

 

椎木さんが男の子から 「ずっとそばにいたいです」 とDMをもらって満更でもなかったって話(もっとそばにいたいです、だったかな?)。一緒にしゃべってたバヤさんに 「俺はずっと(もっと?)お前のそばにいたいよ」 と言って黄色い悲鳴を浴びていた。

 

銀に染めてばしっと上げていたやまじゅんのヘアスタイル、椎木さんが 「田舎のヤンキー」 とか茶化すからそれにしか見えなくなった。深夜のドンキにいそう。とにかくこの3人、馴れ合いすぎるでも冷めすぎでもなく、ちょうどよく仲いいな。

 

 

「奇しくも6月9日 ロックの日 92年3月19日に生まれた俺は 恥ずかしながらミュージックの日に生まれた」、そう言ったのは『フロムナウオン』あたりだったろうか。

「でも ロックってなんだ?ロックバンドってなんだ?」

 

「ロックはわがままで従順だ」、「ロックは自分勝手で人ったらしだ」。だとしたらロックって椎木さんにちょっと似てる。

 

「ロックは、生き様だ」

 

「ロックバンドを透かして何が見える?」

 

ロックの日にマイヘア観れてよかった、と思った。がむしゃらな泥臭いかっこよさを、私はいつもMy Hair is Badに透かして見てる。ロックが何かなんてわかんないけど、マイヘアが正真正銘のロックバンドだってことはライブを観ればわかる。

 

 

この日に聴いた『戦争を知らない大人たち』を、一生忘れられないと思う。「俺らはいつか終わる。来年にだって終わるかもしれない」 そう椎木さんが言って、照明が落ちて、演奏も止んで、

 

あんなにも熱に包まれていたライブハウスが静止する。光も音もなく。たった一筋のライトが椎木さんを照らし、


「だから、今だけだ」

だれもが息をのんだ。一筋照らす光の下で、張りつめた静寂に放たれた言葉を、その重みを、忘れない。

 

ああ、私の好きな音楽は、こんなふうにいつ鳴り止んでもおかしくないのだ。心の中ではわかってた。だけど実際にどういうことか見せられて初めてゾッとした。音も光も熱も、いきなり止むということ。熱狂の渦が一瞬で消え去ることが、こんなにも恐ろしいと。

 

ほんとうに、今しかないんだ、と強く思った。今。6月9日、Zepp Sapporo、今この瞬間は二度と訪れない。今後ものすごく売れてチケットが手に入らなくなるかもしれない。突然辞めてしまうかもしれない。人波に揉まれながら拳を突き上げていられるこの瞬間が、どんなにかけがえのないものであるか。

 

解散を考えているとかそういう話ではない。「27、28、29、30、40になってもこの歌を歌い続けたい」 とも言ってたから。この先何が起こるか誰にもわからない、というニュアンスだったのだろう。それこそ戦争のように。だから、何が起こるかわからないから、今を全力で生きるしかない。


私の好きな音楽はいつ終わってもおかしくない、ということを、最前線を走り続けるバンドに突きつけられてハッとした。今この瞬間も、次のライブも、ひとつひとつ大事にしたい。

 


‪「夢でよかったな 夢がよかったな‬」 とゆっくり歌いだす。「あなたがよかったな そんなふうに思える あなたでよかったな‬」。しんと凪いだ空気をほどく 「真夜中に目覚めちゃった なぜか泣いてしまった」 という優しい歌声。『幻』。


‪「あの日みたいに笑ってた‬ あの時みたいに話してた」 って歌詞を 「あたしはあなたが好きだった‬ あなたはあたしが好きだった?‬」 と歌い替えていたの、ずるかった。椎木さんが女性目線で歌う曲って、生々しすぎて苦しい。なんでこんなに女性のこと "わかってる"んだろうって怖くすらある。

 

「北海道ではこの曲するの初めてかもしれない‬。この曲があったから俺たちがあるんだと思う‬」 と始まった『声』。最後の一滴まで絞りだすように力をこめて歌う 「声は届くか」 のところ、胸に迫った。

 

 

あっという間に本編が終わる。

 

バヤさんのTシャツが筋肉でピチピチだって話。「俺、ツアTならMサイズでもいけるからね?!」 なんて言ってたけど、普通にLでいいと思う。腕モリモリじゃん……

 

『熱狂を終え』、ライブで聴くとじんとくる。「巨大迷路を彷徨え 揺れる決断を楽しめ ここからが面白い ここからだ」。岐路に立たされたとき、どうしようって立ちすくむんじゃなくて、これは面白くなってきたなって笑える人間になりたいな。

 

エモーショナルな空気を一瞬で変える『クリサンセマム』。みんなパッと笑顔になって、全力で飛び跳ねる。「君がなんか嬉しそうで 僕は嫌だった」 で締めくくるのニクい。

 

長い長いセーフティバントは、マイヘア史上もっとも短いラブソングで終幕を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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電子チケで入場する際にもらえる思い出チケット。お洒落なグッズを売りさばくバンドのものとは思えないクレイジーな絵柄、最高。

 

 

 

書きたいことがありすぎて、まとめらずにいたら半年もかかった……。これでもだいぶ絞ったけど4000字超えです。ちょっとしたレポート。

 

椎木さんが言ったことなんかは一字一句同じなわけじゃないし、私の捉え方がそもそも間違ってることもありうるので、大体こういうこと言ってたんだな~ぐらいに軽く読み流してください。

 

ロックの日に聴いた『戦争を知らない大人たち』と、あのときの雷に撃ち抜かれたみたいな衝撃は一生忘れられないです。よいものを観た。

 

あおでした。

プールの底を歩きたい

このごろ、将来についてよく夢想する。あんなに大人になりたくないと思っていたくせに、いざ大人に差し掛かってみるとやりたいことがいっぱいある。

 

社会人になってお金に余裕をもてるようになったら、モードにキメたい気分のときはHARE、シンプルにいきたいときはniko and…のお洋服を着て、休日のたびにどこかへ出かけたい。ひとりで出歩くならば居心地のいい喫茶店、整然とした美術館、気まぐれにレイトショーにも行ってみたい。誰かと一緒のときは小洒落たカフェや、あるいは大衆居酒屋がいい。

 

 

平日は仕事から疲れて帰ってきて、ちゃちゃっと雑なご飯を作って、でも湯船にはきちんと浸かったりして、文庫本を読みながら寝落ちしたい。もしくは続きが気になって眠れなくなりたい。

 

休日はアラームをかけずに寝て、朝と昼のあいだぐらいに起き、好きな服を着て気ままに出掛ける。だらだらスーパーに行って、実験的にちょっと手の込んだものを作る。そんな暮らし、たぶん12%くらいしか叶えられないだろうけど、夢想するだけならタダだ。

 

 

港町に憧れがある。地元にも海はあるけれど、海開きの時期にしか入れない海水浴場じゃなくて、思いついたとき電車でふらっと見に行けるぐらいの気軽な海がいい。海水浴客でにぎわう真昼のぎらぎらした海よりも、早朝や夕暮れ時に凪ぐしずかな海がいい。しずかで気軽な海のある街に、いつか住みたい。

 

 

結婚することがあれば、成人したとき父にもらったティファニーのネックレスをつけたい。成人式用に贈ってくれたつもりだったみたいだけど、当日あまりにバタバタしすぎてすっかり忘れていた。父自体も忘れていたからまあいいんだけど、サプライズのサの字も知らないような男が用意してくれたからには、日の目を見せてあげなくては。

 

 

ちょくちょく旅にも行きたい。何があるのかはよく知らないが、金沢に行ってみたいと思ってる。21世紀美術館の、あのプールの底を歩いてみたい。あと台湾。夜市。女だから普段危なくてできないけど、夜に出歩くのがすごく好きなもので、だから夜市なんて絶対楽しいにきまってる。NEON PICNICを聴きながら歩きたい。

 

 

やりたいことは無限にある。小さな夢はそりゃもう星屑みたいにたくさんある。死ぬまでずっとワクワクしていたいね。それで最後は、あーもう好きなこと全部やり終えたなって言って死にたい。それが人生の最終目標です。

 

あおでした。

 

ぴあフェス2018

新木場でフレデリックを観るのが夢だった。

ライブ映像や音源で健司さんが 「新木場ァ~!」 と煽るのを何度となく耳にしたせいだろうか。それだけで、九段下より新木場のほうが私にとっては憧れの地であった。

 

夢を叶えるべく、新木場・若洲公園にて開催されるぴあフェスに足を運んだ。

(ほんとは新木場STUDIO COASTが本命だったけど、外観を拝めたのでよしとする)


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新木場ァ~~!!!

 

 

雨のなかユニゾン(『流れ星を撃ち落せ』聴けた…!)と岡崎体育とSHE'Sを観て、昼過ぎにはやくも限界を迎える。

浸水してぐちゅぐちゅ鳴るスニーカー。裸足で沼地を歩いてるみたいだ。マフラータオルもダメにしてしまい、MMMタオルを買い足す。うちに同じのもう1枚あるのに。

 

 

 

 

 

武さんと隆児さんがステージに現れたのは14:30、本番50分前だった。早すぎ。

4人が揃い、手始めに鳴らす『ディスコプール』。フェスで聴けると思っていなくていきなりテンション上がった。

 

フレデリックを観るのは1年ぶりだったのだけど、風格が備わってきたというか、洗練された印象を受けた。あと全員から色気を感じた。ボーカルだけならともかく全員だよ?30代を前にしてこの色気、末恐ろしい。

 

1番のみ終えると、まさかの『ディスコプール』をもういちど。今度はきっちり本腰で。

またやるなんて思ってなかったので、イントロが鳴った瞬間めちゃくちゃ顔を輝かせてしまった。こっちを向いていた健司さんが、口の端だけでふっと笑った。絶対これ私見て笑ったよね…?

 

2列目にいたので全員ばっちり見えた。ビジュアル5億点。康司さんの開襟シャツとか、武さんのパーマあてた髪を耳にかけてるやつとか全部どストライク。

 

『ナイトステップ』をリハでやる贅沢さ。本番さながらの盛り上がり。ところで康司さんの 「奥の奥の奥の方へ」 が、いつも 「僕の奥の奥の方へ」 に聞こえてしまう。

 

リハを終え袖へ。最後に健司さんが残り、「気合いの入ったセットリスト持ってきました。30分後、ものすごく楽しみにしててください」 と言い残して去った。なにその宣戦布告。30分後息の根止められる……。

 

生きた心地もせず開演を待つ。と、5分前から急に土砂降りに。あまりの激しさにざわついていると、円陣を組む掛け声が響いてきた。オイッ!!みたいな体育会系のやつ。

 

 

 

 

 

15:20、ガチャッと家のドアを開けるような音。『飄々とエモーション』のインストが流れ、「フレデリックはじめます」 と健司さんの声が告げる。

 

1曲目から『オドループ』。こんなの、コース料理の冒頭からフィレステーキぶち込んでくるようなものじゃん。

 

「格の違い見せつけにきました」 と不敵に言う健司さんからも、3人からも、リハとは比べものにならない風格と色気が漂う。「踊ってない夜を知らないぴあフェス」 と煽られ、ばっちり揃ったクラップハンズは 「はい1200点!」 とお褒めにあずかった。

 


『KITAKU BEATS』。「だから今夜は帰りたくない Beat  帰りたくない Mid Night」 のあとに手を叩くたび、水しぶきが散る。

 

健司さんが 「"雨なのに" "雨だけど" じゃなくて、雨だからこそ楽しもう」 と言っていたように、雨じゃないと生まれない楽しさがあった。濡れた髪を乱しながら飛び、しぶき散らしながら手を叩くのなんて野外フェスじゃないとできない。不利な状況も言葉ひとつでプラスに変えるバンド、好きになってよかった。

 

ところでベース弾きながらず~っとニコニコしてた康司さん、「素敵な夜のダンスナンバー」 って歌いはじめたとたん男の顔になるのずるい。康司さんがオラついたとき、鼻筋あたりがくしゃって寄るあの顔がたまらなく好き。あの、くしゃっ、に挟まれて息を引き取りたい。

 


「遊ぼうぜ」 と悪戯っぽく挑発する『シンセンス』。関西のイントネーションで 「跳べない?」 と言っていたのにぐっときた。飛べ!じゃなくて飛べない?って、丁寧さが滲み出てていいな。思い思いに揺れる客席はさながらダンスフロア。

 


フェスで『愛の迷惑』が聴けると思っておらず、イントロが鳴った瞬間に息をのむ。私がフレデリズムの虜になったきっかけがこの歌だった。曲間で 「新木場のみなさん」 「俺はあんたら大好きなんです」 と吼える。

 


あんなに激しかった雨が、『オンリーワンダー』のころには徐々に止みはじめていった。この曲のサビのところ、シンプルに拳を突き上げる人とリズムに合わせて両手を振る人とが共存するように混じり合っていて、その奇妙な調和が好きだといつも思う。

 


『飄々とエモーション』。新曲にもかかわらず、もうしっかりとフレデリックのものになっていたし、観客にも浸透していた。歌えますかとやさしく煽られ、おーおーおおー、の部分をみんなで声張り上げて歌った。

 

ボーカルよりも声量のあるシンガロング、というのは今までミスチルのライブでしか聞いたことなかったけど、これはいい線いってた。

 

雨のすっかり止んだ新木場の空に響き渡るシンガロングと、その上を突き抜けていく健司さんのロングトーン。「最後の最後に生まれ変わって また始まったとしても この時間は忘れられそうにないな」。

 

忘れられない40分一本勝負は、晴天のうちに幕を閉じた。

 

 

 

 

メンバーがはけたあとも、健司さんだけ何か言いたげに舞台上に残っていた。なんだろう。最後の夏フェスで言い残したこととか、告知とか、あるんだろうか。かすかに空を仰ぐ姿をぐっと見つめる。

 

健司さんは笑って、

「雨、止ませといたんで」

とだけ言って、歓声と拍手を受けながらステージをあとにした。

 

 

 

 

 

 

…………え、なにそれ、ずるくない?いまので恋に落ちない人いる?

 

最後まで心臓わしづかみにされっぱなしだった。ずるい、フレデリック

 

 

【セットリスト】

リハ1. ディスコプール

リハ2. ナイトステップ

  1. オドループ
  2. KITAKU BEATS
  3. シンセンス
  4. 愛の迷惑
  5. オンリーワンダー
  6. 飄々とエモーション

 

 

 

 

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最高だった!楽しかった!!またくるよ新木場ァ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ところで『愛の迷惑』のとき 「俺はあんたら大好きなんです」 って言ってたわけですが。愛の迷惑、っていうからには 「大好きなんです」 より 「愛してるんです」 のほうが自然なわけで。

 

健司さん、岡崎体育のステージ観てたらしいんですよ。だから岡崎体育が 「フレデリック夜の本気ダンスストレイテナーも み~んな4分割さ!」 って言ってるのも聞いてただろうし、

 

 「お客さんに対して『みんな愛してる』っていうのは比較シュッとしてるアーティストが言って初めて成立するやつやからな!!」 

 

って言ってたの絶対聞いてたんだよね。それ気にしたのかな???フレデリックほどシュッとしてるバンドもいないと思うけど。

 

いや、深く考えて言ったわけじゃないと思うけど、もし気にしてたらめちゃくちゃ愛おしいなと思って。それだけ。

 

 

ほんとはユニゾンの『流れ星を撃ち落せ』で 「ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ」 が聴けたこととか、多幸感たっぷりの『ライドオンタイム』とか、雨を浴びつつ聴く『君の瞳に恋してない』の 「嵐の中濡れるぐらい 構わないからバスタオルは任せた」 が最高だったこと、最後の夏フェスの最後の曲に『シャンデリアワルツ』をもってきたニクさとかについても語りまくりたいけど!このへんで!

 

読んでくれてありがとう。あおでした。

 

いちばん好きなバンドのはなし

小学生のときコブクロに惚れて音楽のすばらしさを知った私は、中学生で back number を好きになったのをきっかけに邦ロックにのめり込む。

 

back numberをはじめとし、アジカンを聴き、派生してKANA-BOONにハマり、ゲス乙女もキュウソもドロスもフォーリミも、流行りのバンドはなんでも聴いた。ユニゾンやマイヘアを観て、ライブハウスの本当の楽しさを知った。

 

でも、「どんなバンド聴くの?」 「どのバンド好きなの?」 って聞かれたときに、これという答えを出せなかった。ずっと。

 

だって私は 「back numberが好きな人」 であると同時に 「マイヘアが好きな人」 でもあるわけで、かといって 「ああメンヘラ系ね」 とカテゴライズされるのもなんだか違って。キュウソやヤバTみたいなアホなバンド(褒めてる)も好きだし、ドロスみたいなバキバキにかっこいいやつも全部好きなのだ。

 

括られたくなくて、「最近はマイヘアが好き!あっでも流行りのバンドは大体聴くし、ミスチルとかも好きだよ~!」 みたいに曖昧に濁す、ということを数年続けてきた。

 

そしていま、ようやく胸を張って好きだと言えるバンドに巡り会えた。

2018年11月現在、私はフレデリックがめちゃくちゃに好きである。

 

『かなしいうれしい』リリース前あたり、去年フレデリックを好きになってから、自分でも戸惑うほどの勢いでのめり込んできた。こんなにも熱中したのはコブクロとback numberを好きになったとき以来だった。フェスに行き、サイン会に行き、ワンマンライブに行き、ポストカードのお渡し会にも行った。フェス遠征もした。

 

好きな理由はいろいろある。まず曲が好きだし、ライブも好きだし、アートワークやグッズも好みだし、4人の温かい人柄も、仲がいいところも、バンドに対する熱量やスタンスも、ほんとうに全部好き。(あと康司さんが熱烈に好き。めちゃくちゃ推し。)

 

私のなかに 「コブクロが1番好き」 っていう一生揺るがないであろう柱があって、それは揺るがせないにしても、今まで出会ったバンドのなかでフレデリックが1番好きだと胸を張って言える。数ヶ月前に 「どんなバンド好きなの?」 と聞かれたとき、初めて 「フレデリックが好き!」 と答えた。ものすごくしっくりきて、ああこれだ、と腑に落ちた。

 

フレデリックは、ファンの言葉をすごく大事にしてくれる。新曲がリリースされたときや、ツアーが発表されたとき、ライブの様子を配信したとき、ファンからのコメントやリプライに対して 「届いてるよ、ありがとう」 といったことを十二分に示してくれる。

 

だから私も届けたいと思った。普段フレデリックを聴いたときにどう感じて、曲にどうやって救われたきたか、どういう色で日々を彩ってもらっているか、ちゃんと伝えたかった。

 

ライブのときに手紙を書いてプレゼントボックスに入れたりはするけれど、こんなにも強く 「伝えたい」 と思ったのはこれが初めてだった。

 

お渡し会のときに少しだけ伝えることができて、でも全然足りなくて、近くの雑貨屋で急いでポストカードを買ってよれよれの走り書きで思いをしたためた(快く受け取ってくださったA-Sketch の方に深く感謝しております)。走り書きじゃ足りなくて、丁寧に書いたはがきを雑誌に送ったりもした。新曲があまりにすばらしくて、居てもたってもいられなくてラジオにお便りを送った。

 

つい2日前、ラジオに宛てたメールを読んでもらえた。心から伝えたかった新曲についての感想。ちゃんと届いているんだ、ということがなによりも嬉しかった。

 

さらに今日、「ポスター在中」 と書かれた小包が届いた。MUSICAからだった。前に送ったメッセージが採用されたらしい。実際に内容が本人に届くかどうかはわからないけれど、想いをちゃんと受け取ってくれた人がいたんだって、やっぱり嬉しかった。

 

言葉は使いかた次第でナイフにも花束にもなりうる。大好きな音楽を聴いたときに生まれる感情を、そのまま束ねて贈り続けたい。まだまだ伝えきれていないこと、たくさんある。それをまた受け取って、頑張ってよかったなって一瞬でも思ってもらえたらいいな。1番好きなバンドを、これからも私のやり方でめいっぱい愛する。

 

 

 

 

 

 

 

って感じに結んだけど2日連続立て続けにいろんなことが起こってキャパオーバーです実際。

とりあえずMUSICAとポスター(サイン入りでした泣きそう)サイズの額縁買えばいい……… …?

 

ああだめだ。落ち着いて紅茶でも飲みます。あおでした。

 

晴々

私の大好きなコブクロが結成20周年を迎えた。21歳で結成してから20年。21歳、いまの私の年だ。

 

大阪で生まれ育ち、専門学校を卒業したのち各地を旅人のごとく放浪していた黒田俊介。故郷の宮崎を離れて関西トップの営業マンとして働き、すでに家庭も持っていた小渕健太郎。交わるはずのなかったふたつの点と点が、堺東商店街という地で線を結んだ。

 

互いの音楽的センスに惹かれあい、『桜』を作ったことがきっかけでコブクロを結成する。黒田さんは 「3年やってダメなら一生音楽はやらない」 と言い、小渕さんは仕事をやめる。辛く険しい第2の人生を、ふたりは歩み始めることになる。

 

平坦な道ではなかった。それこそ何もない荒野を切り拓くような。やっと日の目を見たと思ったのも束の間、一躍日本の音楽シーンに名を刻んだコブクロは、いちど歩みを止める。活動休止という名目ではあったけれどのちに黒田さんは、あのときコブクロをやめるつもりでいたと語った。

 

いちど完全に止まった歯車は互いに突き動かされてまた噛み合い、ゆっくりと動きはじめる。あれからまたいくつもの壁を乗り越え、今年の9月に晴れて結成20周年を迎えた。

 

 

 

 

 

 

ベストヒット歌謡祭、御堂筋の真ん中で『桜』『晴々』を歌うふたりを見ていたら涙が止まらなくなった。いちばん最初に作った曲と、20周年の歴史を織りこんだ新曲を歌うなんて。

 

コブクロふたりの軌跡についても思いを馳せたし、同時に、現在21歳の私は20年後どんな大人になれるだろうと考えさせられた。

 

一生かけて追いたい夢も、守るべき人も、大切にすべきものに出会ったときに全て投げ捨てて飛びつける勇気も、いまの私にはどれもない。人それぞれ違うわけで、それでもいいんだろうけど。

 

ただ、20年後の自分に恥じない生き方をしたいと思った。20年後、どんな大人になりたいのか。そのために何ができるか。何を選んで何を捨てるか。きっといま私は人生の岐路に立っている。どの道を選んでも後悔しないように全力で生きたい。そしてその道中で、ふたりの曲を大切に聴き続けたい。

 

あおでした。

ライジングサン2018 ⑪

キュウソのあとはエレカシとマイヘアを観てベボベで締める、つもりだった。

 

テントで仮眠をとり、目が覚めると尋常じゃなく具合が悪かった。アドレナリンでごまかしていたぶん一気に火を噴いたのだろう。ああ、エレカシ聴きたかったな。そんなことを思いつつ半ば意識を失うように眠る。

 

ところで私らの取ったテントサイトは、奇跡的にSUN STAGEに激近だった。音漏れどころか普通に歌もMCも聞ける。超聴きたかった『俺たちの明日』と『今宵の月のように』のときだけ目が覚めた。さあがんばろうぜ、という声で起きる贅沢。

 

マイヘアだけはどうしても見たくて、レインコートを着て外へ出た。雨に打たれつつ歩いていると猛烈な吐き気がして、ドロドロの地面にうずくまりながら諦める決断を下した。なんせRED STAR FIELDまで20分以上かかる。このときばかりは北海道の広大さを呪った。

 

ライブでは 「諦める決断」 が重要になる。フェスで倒れて本命のライブを見られず、救護室で泣く泣く音漏れを聴いたこともある。ライブハウスで倒れてしばし意識を失い、死を覚悟したこともある。普段はクソ頑固な私だけど、ライブのときばかりは自分の身を最優先に動く。倒れたら元も子もないのだ。

 

眠ったり起きたりを繰り返しながら聴いたDragon Ashもかっこよかった。それまで声すら知らなかったけど。

 

そこからは泥のように眠った。スカパラベボベも観たかったけど、もうどうにでもなれと思った。ただ、おぼろげな意識のなかで『白と黒のモントゥーノ』の 「燃やせ~!!」 が聞こえた気がのは夢じゃないよね。まどろんでいても届く斎藤宏介のロングトーン

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ますと、夜はすっかり明け切っていた。時計を見る。朝8時。

 

朝8時?サンが完全にライジングしてるじゃん……。

 

ベボベ観れなかったどころか、朝焼けまでばっちり見逃してしまった。「ライジングサン」 だけに朝日が昇るのを眺めるところまでが醍醐味なのに。またここに来る理由ができてしまった。

 

顔を洗い、歯を磨いてぼんやりテントサイトへ戻っていると、冷やしパインを売り歩いている子たちがいた。自分と母にひとつずつ買おうと思ったが、財布をテントに置いてきていた。

 

ねえさっきパイン買おうと思ったんだけどさ、って話そうとしたら、母が冷やしパインをふたつ持っていたので大爆笑してしまった。考えてることが同じすぎる。冷やしパイン、この3日間ライジングサンで食べたもののなかでいちばんおいしかった。

 


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ライジングサン、総じて楽しかった~~!!

雨だったけど、雨だからこそ『君の瞳に恋してない』の「嵐の中濡れるぐらい構わないからバスタオルは任せた」 のところ楽しめたし、体調崩したのにエレカシも『白と黒のモントゥーノ』も聴けた。好きなバンドはより好きになり、初めましてのバンドの魅力を知れた。

 

sumika 片岡さんは 「日本全国いろんなフェス行かせてもらってる中でライジングサンほどバックヤードが充実してるフェスはない」‬ と、GENさんは「数あるフェスの中でもライジングサンは本物のロックフェス」‬ というようなことを言ってくれた。どのバンドもべた褒めしてくれてうれしい。地元の誇りです‬。

 

楽しかったなあ。地元を離れることになっても帰ってきたいし、家庭を持ったとしても子供を連れてきたい。3日間だけ現れる私のもうひとつの故郷だと思ってます。ほんとうに大好きなフェス。また来年も行きたいな~!!

 

 

3ヶ月に渡ってダラダラ書いてしまったのですが、読んでくださってありがとうございます。今年中にはぴあフェスで観たフレデリックと、ロックの日(6月……!)に観たマイヘアのレポ仕上げたいと思ってる。思ってはいる。

あおでした。

 

ライジングサン2018 ⑩ - あおいろ濃縮還元