あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

青々

遠距離大変だね私だったら寂しすぎて耐えられない~みたいなことを死ぬほど言われるけど、もちろん楽しいことも山ほどある。ビデオ通話をつないで同じ本を読んだり、手紙に紅茶のティーパックを忍ばせて送ったり、絵本が送られてきたり、通話しながら金曜ロードショーを一緒に観たり、それぞれ手元にあるお茶を淹れてゆっくり飲みながら話したり、そもそも「楽しいこともある」というか、楽しいことばっかりである。私たちは工夫を凝らして楽しむ天才なので、毎日が新鮮で思ってた以上に寂しくない。むしろ近距離恋愛よりもマンネリ化しなくていいのではという気すらする(あるいはそう信じたい)。本当はこうだったらいいのにと思わないこともないけど、現状お互い楽しめているから、うるせえ外野は無視することにする。遠距離の唯一のデメリットは「外野が知った顔してやいやいうるせえ」ということかもしれない。私らのラブラブ具合も知らないくせに遠距離というだけで可哀想がってくる人のほうが、よく聞くと幸せじゃない恋愛に首突っ込んでたりして、不幸の比較対象に私を使ってオナるなよと思ってる。隣の芝生が青いも枯れてるも関係ないのだ、私らと君らはまるで関係ない。そう心を強く保つことにする。そろそろ涼しくなってきたので春に貰ったワンピースがまた着れるようになる。

 

煙しみる風呂場で

温冷浴を繰り返すように洋書と和書を交互に読んでいる。英語に疲れたら、短編をひとつ読む。異なる国の言語が肌に浸透していくようだ。日本語は解像度の高い優れた言語であり、ゆえに生まれる複雑さを私は愛している。読んでいたのはハリーポッターなのに、読書のあいまに挟んだ昼寝でとんでもない淫夢を見た。筋肉隆々の男と、年端もいかない女の子が風呂場で致しているのを俯瞰で見る夢。筋肉隆々の男も危ういシチュエーションも全然好きじゃない。なんなんだ。夢の割り当て、誰か他の人と間違えてるんじゃないのか。最近よくキーボードを叩いている。文章を綴ることは救済であって快楽でもある。水面下より、ただ水面で揺れる蓮の花を仰ぎ見ている。虎視眈々、こんなんで満足していられる女じゃないので、いつだって下克上を狙ってる。

結婚願望のはなし

結婚の話を最近よくする。結婚願望における価値観についての話、をバイト先でいろんな人とする。元同僚が長年付き合った彼女と同棲をはじめるけれど、彼女はともかく本人には結婚願望がない、というのが毎日のように話のネタに上がるから。私が元先輩と付き合っていることも、付随してからかわれる。その話は必ず拡がって、自分の結婚観はどうなのか、という点に終着する。うちの職場は極端なので、結婚願望が異様に強すぎるひとか逆に全くないひとの2種類しかいない。私も彼氏も前者。

 

私は元々結婚願望が強かったが、どうしても結婚して幸せになりたい!子どもをもうけて素敵な家庭を築きたい!といった類の一般的な結婚願望とは少し違った。自分よりも大切なひとが存在するって、そしてそのひとと人生を歩んでいけるってどういうことなんだろう、という興味関心の元にある欲求であった。ただ、自分よりも大切かもしれないひとに出会ってしまった今、結婚観は変わりつつある。

 

今抱いている結婚願望は、ひとことで言えば「好きだから結婚したい」ということになるんだろうけど、大好きだから四六時中一緒にいたい!みたいなお花畑めいた欲求とは違う。同棲や結婚をしたら一緒にいれてハッピー、という考えは短絡的に過ぎる。生活リズムが違う人間と生活を共にするのは実の家族であろうと辛い。実際、父や弟と暮らすのですらしんどい。

 

なんていえばいいんだろう。好きだから一緒に幸せになりたいというより、好きだから一緒に不幸になってもいいなと、共に生活することで生じるデメリット諸々を背負ってもいいなと、思ったのである。2年ほども直属の後輩としてスパルタ指導を受けていて、付き合う前から嫌なところはごまんと知ってる。恋に目がくらんでデメリットが見えなくなるフェーズなんてとっくに過ぎている。

 

私は彼氏の特別じゃなくて日常になりたいし、なってほしい。今のところ抱いている感情を言葉にすると、それに尽きるのかもしれない。私の愛するコブクロが「みんなにとって日用品のような音楽になりたい」と言った理由が、今ならわかる。まかないで作ってくれていた胡椒のきいたパスタとか、バレンタインにあげた熟れたバナナのパウンドケーキとか、土曜の朝の二度寝とか、邪魔されながらする化粧とか、そういうの全部、特別じゃなくて日常になればいいと思う。この先また考えが変わっていくかもしれないけど、今はそう思っている。

 

でもこんな長ったらしく小っ恥ずかしいことを同僚や友達に言えるわけもなく、なぜ結婚願望がそんなに強いのか問われて「だってもうあんな面白い男と出会える訳ないし」などと言い訳めいたことを口走ってしまうこと、それも本心ではあるけど、やめないとなあとは思ってる。思っては、いる。

 

水面ひときれ

エアコンのない温室のような自室と、エアコンはあるけれど家族に無限に話しかけられてひとりの時間が持てない居間。そのどちらにも疲れて適当な装備で飛び出すこと、この夏は何回かあった。近所のパン屋でコーヒーだけを買うのは忍びないから、塩パンとアイスコーヒーで210円。それさえあれば公園のベンチに2時間ほど居座れる。噴水の音、中学生が球技をする音、時折おじいさんに連れられて散歩している犬の鳴き声、それぐらいしか聞こえないので心が安らぐ。話しかけられるたびに一時停止をかけて全然集中できなかった映画の大団円を観る。トートに突っ込んできた連作短編集を1章読む。思い出したように啜るアイスコーヒーは遅遅として減り、陽が落ち、噴水の稼働が止まる。家に帰るとやかましく責め立ててくる女房に疲れて、サラリーマンが喫茶店で休日を過ごす理由が、なんとなくわかる。暗いレイヤーがかかり始めた空に、薄く半月が浮かんでいる。あんなに涼しそうに煌めいていた池の水面は抹茶羊羹みたくどしんと深い緑をしている。暗くなったからでも涼しくなったからでもなく、飲み干したアイスコーヒーが膀胱を刺激してきてはじめて帰ろうと思う。

くろぐろ

あーあもう何もかもがめんどくせえな、と思ってなんとなくルナルナを開けば生理が近いことがわかって、からだに流れゆく女性ホルモンの恐ろしさに打ち震えた。全部めんどくさい、振り出しに戻った就活も、学生時代の友人にハブられていることも、男友達がときどき送ってくるDMも、私の将来について詮索してくる家族や隣のおばさんも、もう全部めんどくさい。ハブるならハブるで私の知らないところでやればいいのに、みんなで遊んでいるその日にインスタフォローしてきて、見れば私以外の全員がはしゃいでいる楽しげなストーリーを更新していて、わざわざこういうことしてくる子と仲良くしてたのなんだったんだろうってものすごく哀しくなった。もうほっといてほしい、誰とも関わりたくないめんどくさい、って声を殺して泣いてる時に限って「泣いてると思って」なんて彼氏が電話を掛けてきて、腐り切るタイミングを逃し続けている。そんな昨夜のことを思い出して、ふたたび泣かないように赤城のチョコミントアイスを食べた。めんどくさいけど生きなきゃいけない。爪を切って、鬱陶しい前髪を留めて。あーあ。

鮮烈トライアングル

例年のような夏らしいことはあまり出来ないまま、私の好きな夏という季節はあっけなく終わりへ向かっていく。いつも通りに花火大会があったとしても、遠方に住む彼氏と参加することは叶わなかっただろうからこれでいい気もする。そう言い聞かせる。せめてもの手持ち花火をした。友人と、見知らぬベトナム人男性と、私との3人で。公園で花火を楽しむ私たちを、遠くから物珍しそうに眺めている外国人男性がいた。一瞬身構えたけれど、私たち、ではなくて、花火のみを熱心に眺めていることはすぐにわかった。あまりにも無害そうだったから友人が声をかけた。片言の日本語を話す彼は、目を輝かせて差し出した線香花火を受け取った。手に持つほうと火をつけるほうを教えて、3人で円になってしゃがみこみながら、線香花火の揺らぎを見つめた。夏休みのおもいで、という題の作文を出されたら、このことを私は真っ先に書くだろう。

 

部屋の扇風機はうんともすんとも首を振らなくなった。つくことにはつくが、首振りモードを押しても無視を決め込んでストレートに風を吹き付けてくる。友人に言われた「首寝違えたのかもね」という言葉がなんとなく気に入って、寝違えたんならまあしゃーないか、と思いながらスイッチをつけている。エアコンのない北海道の夏をしょぼい扇風機だけでは乗り切れそうもなくて、ハンディファンの購入を検討していたけれど、さあFrancfranc行くか、というその日に涼しくなってきた。夏の就活のために買った半袖のシャツも結局一度しか着ていない。夏が過ぎてく、とイヤホンのなかで椎木知仁が歌う。とっくに食べ終えたバニラバーの棒を未練がましく咥えている。私の愛してやまない夏が、今年もこうやって閉じていく。

 

 

桜咲かす

わかってたよ、だって合否を告げる封筒、前に合格を報せてきたそれと比べてやたら薄っぺらかったから。第一志望に落ちてわんわん泣いた数分後にはもう立ち直って次すべきことについて検索していた。大事な局面に立たされるほど研ぎ澄まされる。イチからというよりゼロからはじめる。どうにでもなる。なんにでもなれる。なるようになるんじゃなくてなりたいようにするのだ、他でもない私が、この手で。バイト先に向かいしな聴いていた曲の「これから映りこむその全ては 君の世界だ」という箇所がやけに響いて2回リピートした。間延びしたショートヘアを整えるため美容室を予約する。落ち込む暇もないほどバイトは立て込んだ。ピザを延々と焼いてたら気持ちも紛れた。退勤後、"どうにもやるせなくて気持ちを切り替えたいときは300円くらいするコンビニスイーツを買ってもいい" というマイルールに則ってわらび餅を選ぶ。また振り出しに戻ってしまったけれど、いまにも喉笛から飛び出そうとする絶望感や焦りはもうない。走り出す動機が不純だっていいよね、もう火は点いてしまったんだから今更引き返すつもりはない。生半可な覚悟で手を取ったわけじゃない。バッドエンドも紡ぎ続ければハッピーエンドになること、物書きの私が1番よく知ってんの。