あおいろ濃縮還元

虎視眈々、日々のあれこれ

邂逅譚

初対面は雷門、お互いの顔も知らなかった。

 

北海道とは違い、東京はそこかしこで金木犀の香りがする。用事を済ませた私は都営浅草線に飛び乗った。少し暑いのも気にならなかった。知り合って半年ほども経つフォロワーにようやく会えるのだ。便宜上フォロワーとは言ったけれど、友人というかライバルというか相棒というか、彼女とはとにかくそういう関係である。本名も声もどんな文字を書くのかも全部知っていたのに、初対面だけがまだ済んでいなかった。なんつーバグ。

 

人力車の客引きと幾多の観光客にごった返す夜の浅草寺で、顔も知らない相手を探した。私にしたって黒髪だということしか教えていない。だけどなんだか会えばすぐにわかるような気がしていた。一瞬、人探しをしていたらしい女の子と目が合ったけれど、お互いに(こいつではない)という視線を交わして離れた。見つければわかる自信はあったが、案外探すのは困難だった。

 

いやなんかもう緊張どころじゃない、無事に会えるのだろうかと思いはじめたとき、ふとある人のブーツに目が留まった。あっ、と思った。靴、ボトムス、トップスと徐々に見上げていって、顔を見る前にもうこの人だという確信があった。

 

ライトアップを受けて赤く輝く雷門、溢れ返る人波、時が止まったような出会い、頭のなかでは『逃避行』が流れていた。

 

 

密度の高い半年ほどの交流を経て、ようやく私たちは初対面を果たした。

 

 

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仲見世通りを並んで歩く。初めて会った人の隣を歩いているのは不思議な気分だったけれど、十年前から知っていた気もする。こんなこともあるんだなあ、と思っていた。生まれ育った場所や環境も年齢も違うのに、導かれるように出会ったこと。こうして並んで同じ景色を見ていること。夢のなかを歩いてるみたいだ。

 

フィーリングで参拝をすると、ふらっと見つけた居酒屋で乾杯した。モツ煮込みがめちゃくちゃ美味しかった。好きな人間と飲むビールはもっと美味しかった。懐メロばかり流れる居酒屋の隅でひそやかに、ありとあらゆるワクワクする話をした。

 

カラオケに行って、ホテルにチェックインして、また部屋で呑み交わす。私が浅草寺で手を合わせてなにを願ったのか、黄緑色の部屋で私たちがなにを話したのかは秘密だけど、なんだかビックバンでも起こせちゃいそうな気がしていた。

 

赤い夜も青い昼でもいつでもどこでも、私たちが揃えば超新星爆発のひとつやふたつ起こせる。そんな気がした。してる。いつか燃やす世界の真ん中に座りこんでふたり黒ラベルを飲んだ。尽きることのない話と私たちを結ぶ音楽とが混ざり合って夜に溶けた。これから紡がれていく長い物語の、プロローグのような邂逅だった。

 

ねえ、退屈な世界になんて、笑って火を点けてしまおうか。

 

 

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終日どこにも出掛ける予定がなかったので朝っぱらから餃子を食べた。柚子胡椒もつけた。課題図書に飽きたら小説を読んで、それにも飽きるとノートをつくって、またまた飽きのサイクルがくると小説を読んだ。普段聴かない音楽を取り込みたいと思ってサカナクションCreepy Nutsを流してみた。フォーマルな学問とEDM、牧歌的な小説とラップ、ちぐはぐな無秩序さが妙に良かった。いまは途方もないインプットのタームにどっぷり浸かっているのだと思う、聴いたことのない音楽と読んだことのない本と行ったことのない場所と、どんどんどんどん、余すことなく吸収して私の血肉になればいい。なんでもかんでも丸ごと飲み込んで下す人間にはなりたくないの、好きも嫌いも咀嚼して味わったうえで星を付けたいといまは思ってる。こうやって地面の下に潜って、すべてのものを取り込もうとしている期間がないと羽ばたけもしないわけで、必死でこさえた踏切板にも気づかないで高く跳べていいねなんて指くわえてるのなら一生見物席で見ときなって思ってるよ。きっと沸々とした気持ちでいるのはホルモンバランスのせいだから、温めた豆乳でも飲んだら湯船に浸かることにする。

 

よふかしのうた

よふかしのうた

 

ローリング

クラフトボスの甘いほうとイヤホンから流れるTHE BOYS&GIRLSをお供にしてキーボードをひたすら叩く、生まれてこのかた視力は良いけれどブルーライトをカットする丸眼鏡を掛けているから、たまに画面にオーガニックとチルミュージックを好んでいそうな女が映って笑ってしまう。たとえ課題であろうと書かなくてはいけないと思ってしまうと途端に文章は色褪せてしまうので、書くことは楽しいなあって自分をちょっとずつ騙しながらエンター、デリート、シフト、スペース。救いにも呪いにもなってしまえる強い言葉が欲しい。花束も銃口もいっぺんに手向けちゃいたいのだ、鮮やかな花弁で脳天ごと撃ち抜いてしまいたい。数ヶ月ぶりに会った親友が根拠もなく「あおはそのうち絶対なにか大きなことを成し遂げると思うよ」と突然言い出したことを、なんとなく信じたくなったりしている。楽しそうなことに「楽しそう」という理由だけでえいっと飛び込めば物事は案外良い方にだけ転がっていく、それを実感しているところ。朝が明けきってしまう前に無事眠れたなら帰りにビールを買おう、発泡酒じゃなく。

 

せーので歌うバラード

せーので歌うバラード

  • THE BOYS&GIRLS
  • ロック
  • ¥250

 

UMIMOYASU in 仙台 ~後編~

フレデリックがゲストにキュウソネコカミを迎えた対バン「UMIMOYASU」in 仙台。

 

(前編、キュウソのレポはこちら→UMIMOYASU in 仙台 ~前編~ - あおいろ濃縮還元

 

 

キュウソの出番が終わるとあっという間に楽器が撤収され、フレデリックの機材が続々設置されていく。さっきはなかったエフェクターボードやお立ち台が運び込まれ、同じバンドでも全然違うんだなってじっと転換タイムを眺めた。楽器とか全然わかんないけど違いを探すのは楽しい。

 

スタッフさんに紛れてしれっと武さんが出てきたのには驚いた。普通に来て、ドラムを叩いて音を確かめると普通に帰っていった。

 

 

 

 

後攻、兵庫は宝塚より、フレデリックのターン。

 

 

 

 

 

フレデリック

  1. 飄々とエモーション
  2. シンセンス
  3. スキライズム
  4. ビビった(キュウソネコカミカバー、1番のみ)
  5. ナイトステップ
  6. NEON PICNIC
  7. アウトサイドの海
  8. オワラセナイト
  9. KITAKU BEATS
  10. エンドレスメーデー
  11. オドループ
  12. VISION

En1. 夜にロックを聴いてしまったら

En2. イマジネーション

 

 

 

 

 

SEはシンセンス。「フレデリック、始めます」と健司さんの声が告げ、4人が現れる。

 

前編でも述べたように、キュウソのライブは今年イチを更新する楽しさだった。いくら大好きなフレデリックといえ越えられるのだろうかと思っていたけれど、「人生最高の夜にします」と言って始まったライブが最高にならないわけなかった。

 

 

初っ端から『飄々とエモーション』『シンセンス』と、主役級を張る曲たちを惜しみなく投下してくるフレデリックに、今宵の本気度を垣間見た。これは、本気で海を燃やすつもりだ。熱いライブのさなか、背筋がゾクッと凍る。

 

キュウソのステージで生まれた一体感は『飄々とエモーション』のコールアンドレスポンスにまんまと掻っ攫われた。塗り替えてやると言わんばかりのいいとこ取り。『シンセンス』、真上に飛ぶ健司さんと横にステップを踏む康司さんが対照的で良い。『スキライズム』、毎度ながら「あなたのそういうところが嫌いです」と笑顔でコーラスする康司さんに心臓わし掴みにされる。

 

 

と、先ほど聴いたイントロが流れる。『ビビった』のカバー。

本来セイヤさんが「よっしゃ来いやー!!」と叫ぶところ、少し溜めてから「…いける?」と言っていて腰砕けた。紛れもなくこれは三原健司の、そしてフレデリックの『ビビった』だ。

 

最初、心なしかタクロウさんに寄せたベース(音色ではなく、表情や動き)を弾いていた康司さんは、自分でおかしくなったのかすぐやめてニコニコ笑っていた。さらにヨコタさんのパート、「ルーツがないとか言われても」「リスペクト パクリは同じかな?」も本家に寄せた感じでしっかりと歌う。それでも自分の色はきちんと保つバランス感覚。

 

ファッションミュージック鳴らせないと生き残れないこの世界では 俺が何か叫んだ所でキャッチーじゃないと誰も聞かない」という曲をフレデリックがやるの、ものすごく刺さる。カバーは1番のみ。最後、健司さんは「ビクター」と歌い終えると「ビビった?」と笑った。ビビるもなにも腰砕けるから……。

 

 

 

「新曲『ビビった』でした。キュウソには『トウメイニンゲン』に引き続き『ビビった』までカバーして頂いて……」とジョークをかます健司さん。

袖にて、確かにフレデリックのほうが上手いな!と素直に関心する先輩たちに「いや、確かに上手いな、じゃない」と笑う。

 

健司さんは「6年前、神戸でヤバいバンドがいるぞと言われてて。どうやらライブで段ボールが出てきたり、筋斗雲に乗ったり、ヤンキーこわいって歌うバンドがいると」と話す。ざわざわと笑いが広がる。

 

「みんなが知ってるキュウソと全然変わってないでしょ?キュウソは昔からほんとに変わってなくて凄いんですよ。"付かず離れずメンヘラ" なんて歌詞がラジオから流れてきたり、みんなにとっては普通かもしれんけど、当時俺らにとっては有り得んかったから」

 

セイヤさんも「フレデリックはあのまま売れてすごい」と言っていたように、誰も開拓していなかった自分たちのスタイルを切り拓き、新たなスタンダードを打ち出したキュウソもフレデリックも物凄いんだなと改めて気づいた。どちらのバンドも互いを称えあいながら、それでも馴れ合わずライブは手を抜かない。理想の関係性。

 

「同じステージに出られるだけでも名誉だったキュウソに6年前、仙台のイベントに呼ばれて。そのとき俺らのお客さん4人しかいなくて、キュウソが集めたお客さんを前にライブやらせてもらって。いつか恩返ししますって言ってから1年経って2年経って、6年経って今日やっと叶います」

 

あたたかい拍手が起こる。感慨深いよなとしみじみ頷く健司さんに、康司さんは「やっと、やってやったな、って感じするな」と満面の笑みを浮かべた。そういう言葉を笑顔で選ぶのずるい。

 

 

 

『ナイトステップ』。しっとりと甘く濃い夜へ、4人の音色に手を引かれていく。歌に、音に、徐々に酔わされていくのがわかる。かなしいうれしいの健司さんみたいに、康司さんが間奏でスッと顔の横に手を掲げて手拍子を煽っていたの、なんか新鮮で良かった。オラオラ煽るのでなく静かに求める感じ。

 

 

余韻を残したまま『NEON PICNIC』へと繋いで夜を渡り歩く。最初はなんの曲かわからなかったけど「NEON PICNIC」と歌い出して卒倒しかけた。健司さんの艶めく声と、康司さんの透き通る声が交われば、ライブハウスに甘い風は吹き抜ける。

 

最後、「夜明け前の 向かい風の中」と歌う箇所。「向かい風~のな~~……」と伸ばし、健司さんは目をつむって上を仰ぐ。じれったい沈黙。張りつめた空気を味わうように目を閉じていた康司さんは、永遠にも思える沈黙のあと、健司さんが息を吸ったのを察知して「かぁ~~~~」と歌いきるところへ瞼を閉じたままコーラスを被せた。文字通り息の合った離れ業。

 

 

程よく凪いだフロアに妖しいイントロが鳴る。『アウトサイドの海』だった。理解が追いつかなくて、頭の芯がすっと冷えた。ステージを見上げれば「UMIMOYASU」というツアータイトルが掲げられている。

 

UMIMOYASU。海燃やす。

アウトサイドの海、燃やす。

 

背筋が凍った。さらに真っ赤な照明がステージをいっぱいに満たす。燃えるような赤い照明が。『アウトサイドの海』を赤く燃やすことで、「UMIMOYASU=海燃やす」を聴覚でも視覚でも観せてきたフレデリックに心底おののいた。本当に海を燃やしてる、この人たち。

 

妖しげな音に、赤いライトに、じっくりとなぶるように炎で全身むしばまれていく。「痛みなら分かち合える」とコーラスしながら眉間を寄せ、「幸せならアウトサイダー」と微笑む康司さんにもまた個人的に燃やされた。海を焼け地にしながら「あの海の大きさを僕は知ってるよ」と歌う健司さんにも。

 

 

 

いったん海を燃やし尽くしたところで前半は終わる。ずっと赤頭さんがギターの音を確認するように鳴らしていて、てっきり調整かなにかだと思っていたら、そのまま旋律が奏でられていった。ゆったりアレンジされたイントロに、「オワラセナイト」と歌うようなタイトルコールが被さる。

 

「ここから後半戦」と健司さんは言った。あ、と思う。わざとだ。"海を燃やし" てすべて "終わらせ" てから後半戦をはじめるの、絶対にわざと。

 

終わらせないとなにもはじまんないからもったいない」。海を燃やすというのがこの対バンイベントの趣旨ではあるけれど、燃やしたらそれで終わりではない。海を燃やす、つまり不可能なことを可能に変えてからが本当のはじまりなのだと、提示されるようだった。

 

 

『KITAKU BEATS』、幸せそうに音を鳴らす4人が微笑ましい。場所チェンジすると見せかけて康司さんの後ろをついて回り、気づいて逃げられるとぐるぐる追いかける赤頭さんが楽しそうだった。この曲のときかは忘れたけど他にも、ボーカルパートを歌う康司さんのもとへじゃれに来たり、健司さんのスタンドからピックを取って投げたり、とにかく楽しそうでなによりだった。

 

 

スピーディーに駆け抜ける『エンドレスメーデー』、前にライブで聴いたときよりも力強く聴こえてグッときた。普段からだけどこの日は特に、康司さんが雄々しく食らいつくようにコーラスしていたように思う。

 

 

キュウソのステージに心から踊らされたあとで聴く『オドループ』は過去イチ沁みた。「踊ってない夜を知らない 踊ってない夜が気に入らない」って歌詞が、こんなにも実感をもって響いたことはない。「踊ってたい夜が大切なんです」とはまさに今日のような夜をいうんだろう。

 

 

本編ラストは『VISION』。少し歌いはじめたところで、健司さんが手振りで演奏をストップさせた。「歌詞間違えた……」とのこと。張りつめていた空気が一気にゆるく弾ける。

 

「あの……俺、キュウソがトウメイニンゲンカバーしてくれたときからずっとソワソワしてて……」と我慢しきれない様子で言う。

 

「リハのときタクロウさんがずっとオドループのベースライン弾いてて。いやいや、と。いや、ベースといえどさすがにオドループって分かるで、タクロウさんの天然が出てるんやろうな(笑)と。オドループカバーすると思ってたらトウメイニンゲンやるから……。俺サプライズに弱いんよ……」と健司さんは頭を抱える。そんな冒頭から本編ラストまで今までずっとソワソワしてたのも、隠してたのも凄い。

 

ラスト曲をやり直し、なんてハプニングも飲み込んでしまうぐらい、新曲とは思えないぐらい『VISION』は良かった。サビへ向けて徐々に高まり、上がりきったと思ったところからさらに弾ける曲は、てっぺんまで昇りつめてから急加速するジェットコースターみたいな気持ち良さがある。「ずっと譲れないVISION 理想以上の世界を 掴み取るんだ 今はただ」。だれにも譲れないスタイルを貫き通すふたバンドがぶつかり合ったこの夜に、ふさわしいナンバーに思えた。

 

 

 

 

 

アンコールは『夜にロックを聴いてしまったら』。The bandのときも同じようなことを思ったけれど「夜にロックを聴いてしまったら春がはじまった」なんて、私に春を咲かせてしまったバンド張本人が歌うの、ずるいんだよ。フレデリックのおかげで春がはじまってしまったというのに。最後、春が芽吹いたようにいちめんピンクに染まったステージを見ながら泣きそうだった。

 

 

どこか血に飢えたようなギラついた雰囲気を醸し出しながら「音楽好きな人両手を上げて」と健司さんは客席を煽る。あの、首筋を逆撫でされるようなイントロが音源そのままに鳴って、ゾクッとした。『イマジネーション』。

 

海どころじゃない、私たちすら、この曲に跡形もなく燃やされた。色っぽさとパワフルさを自在に歌い分ける健司さんの表現力。ひずみきった音。今までのフレデリックにはなかった尖った攻めの音楽に、立ち上がれなくなるほどめいっぱい殴られた。

 

さぁ イマジネーション イマジネーション」と合唱する箇所だけでなく、コーラスのない部分もオフマイクで大きく口パクしていた(口ずさんでいた?)リズム隊が印象的だった。こんなにもひずんで前のめりな、ギターソロ然としたソロを弾く赤頭さん、初めて見た気がする。

 

健司さんは「俺たちから一生目を離さんとってください」と言った。そんなの。こんな、ずっと見ていたって初めて知るような新曲で殴りかかってくるようなバンドから、目離せるわけがないんだ。ずるい。最後までずるいな。

 

 

 

そうして、灰になるまで燃やし尽くされて、UMIMOYASUは終焉を遂げた。海も骨も丸焦げですよ、こんなの。

 

 

 

 

 

 

 

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私の視界ヤバくない?20代で死ぬのかと思った

 

 

 

 

 

 

ビビった

ビビった

「…いける?」「ビビった?」じゃないのよ三原健司

 

アウトサイドの海

アウトサイドの海

燃えたねえ、海

 

なんの曲か忘れたけど、健司さんのお立ち台にギター組がいっぺんにのぼってて、片足乗っけたところでふたりが降りたから何事もなかったようにニコニコしてた康司さんが愛おしくてたまんなかった。それだけ。長々と読んでくれてありがとうございました。

 

UMIMOYASU in 仙台 ~前編~

10月18日、フレデリックキュウソネコカミを観た。

SEASON3にあたる今回の対バンツアー「UMIMOYASU編」、仙台のゲストはキュウソネコカミ

 

ちなみに「UMIMOYASU」とは「海燃やす」のローマ字読みで「海を燃やす、っていう有り得ない事を現実に変えるイベントを作りたい」というメンバーの意思のもとインディーズ時代から行われてきた対バンイベント。

 

神戸の先輩にあたるキュウソネコカミと、仙台の海を燃やすバチバチの一夜。私はフレデリックを好きになる前からキュウソのファンだったので、この2組での対戦カードを観られるのは夢みたいだった。

 

 

学生のうちに東北旅行をしてみたかったこともあり、北海道から前乗りをした。空港に向かうバスのなか、飛行機に揺られながら、仙台駅へと走るJRで、逃避行を聴きながら初めて降り立つ街に思いを馳せた。

 

初めて来たとは思えないほど仙台は優しい街で、つめたい風はそれでも北海道のものよりは柔らかい。栄える商店街のなかに仙台Rensaはあった。

 

 

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Rensaはビルの階段を上って7階にあるため、ライブ前にそこそこHP削った。途中で給水ポイントまであった。私たちはオンリーランナーか?

 

10番台という神整番の甲斐あって最前列ゲット。もちろん上手、康司さん側。ステージは手伸ばしたら届きそうなくらい近い。康司さんセレクトと思われる、グッドセンスなBGMが心地よい。柵につかまり、目と鼻の先にあるタクロウさんのマイクをどきどきしながら眺めていた。

 

 

 

いざ先攻、フロム西宮、キュウソネコカミ

 

 

 

キュウソネコカミ

  1. トウメイニンゲン(フレデリックカバー)
  2. ビビった
  3. メンヘラちゃん
  4. 推しのいる生活
  5. ピクピク
  6. MUKI不MUKI
  7. 役立たず
  8. ギリ昭和 ~完全版~
  9. DQNなりたい、40代で死にたい
  10. ハッピーポンコツ
  11. The band

 

 

 

最前列は初めてじゃないけれど、Rensaのステージと柵の距離は初めてってレベルで近すぎてクラクラした。歓声とともに登場し、持ち場についたメンバー5人全員がはっきりと見渡せる。とんでもないハコに来てしまった、と思った。

 

セイヤさんが「街を駆け抜けるずっと誰にも見えない自分が」と歌いはじめていきなり腰抜けた。1曲目から『トウメイニンゲン』カバー。

あまりにもキュウソの音になっていて舌を巻いた。「大事なことは本人に言えよ」というサビの歌詞、キュウソの曲にあっても違和感ないぐらいメッセージ性強いんだなって改めて気づく。この曲をキュウソが選んだの、意外だったけどものすごくわかる。ファントムヴァイブレーションに通じるものを感じた。

 

 

点火した会場に油を注ぐ『ビビった』。わっと拳が突きあがる。東北のお客さんってシャイなのかなと勝手に思ってたけど、全然そんなことなかった。

ファッションミュージック鳴らせないで 口ばかり達者になりやがって グダグダ言ってるヒマあるならリスナーの耳をこっち向けろ」。フェスブームの最前線で一発屋だとか色々言われてきたキュウソが、同じ立場を切り抜けてきたフレデリックとの対バンでこれを歌う意味。胸が熱くなる。

 

 

キュウソなりのラブソングだという『メンヘラちゃん』。『推しのいる生活』を推し同士の対バンで聴ける幸せといったら。この一連のキラーチューン祭りに『ピクピク』を織り交ぜてくるところもニクくて好き。

 

 

MCの話も。冒頭でカバーした『トウメイニンゲン』について、セイヤさんは「いやーこの曲好きなんよね」と嬉しそうに言う。フレデリックには内緒ということで、リハーサルでも一切見せなかった隠し球らしい。

 

「トウメイニンゲンが好きすぎて、キュウソがもしフレデリックっぽい曲を作ったら、というコンセプトで出来たのが次の曲です!フレデリックからしたら、先輩ら何言ってんねん全然似てないやんって思ってるかもしれんけど(笑)」

 

そうして始まったのは『MUKI 不MUKI』。言われてみれば、サビを終えると余韻も残さずすぐ「打たない投げない蹴らない転がさない回さない」と耳に残るフレーズを畳みかけてくるところとか、ほんのりフレデリズムを感じる。2%ぐらい。

 

 

キュウソとフレデリックは6年前からの付き合いであるという。それこそ仙台で、同じイベントに出場していたのが最初みたいなことを話していたと思う(ごめんあんまり覚えてない)。個性が席巻する神戸のバンドシーンのなか、セイヤさんは当時、健司さんに相談されたことがあると話した。

 

「6年前健司に、自分らこのままでいいんですかねって相談されて。言い方悪いけど、あいつら音とか気持ち悪いままで売れたからほんとすごいよ!」

もちろんこの「気持ち悪い」とは、王道に媚びないあのフレデリック独特のスタイルのことを指してくれていた。最大級の褒め言葉。

 

「もっとこうした方がいいよって先輩ぶって言うのは簡単やけどさ。先輩面して変にアドバイスしなくてよかったーーー!!!変なこと言ってたら俺らもあいつらもここにいなかったーーー!!!!」

 

健司さんが相談したのが、誰にも真似できないスタイルを当時から貫いていたキュウソで良かった。キュウソとは違うベクトルに唯一無二の柱を打ち立てられたから、こうして同じステージで戦えているわけで。

 

当時よくやっていた曲を、と『役立たず』。売れる前に抱えていた真っ黒いフラストレーションの絵の具を、そのままキャンバスにぶちまけたような歌だと思った。

 

 

『ギリ昭和』。ばっちり年号コールが揃って気持ちいい。生み出された一体感をそのままに『DQNなりたい、40代で死にたい』へ。途中セイヤさんが、服をバッとまくってヨコタさんにお腹を見せる謎の行動をとっていた。ヨコタさんが首をひねると、満足そうに何事もなかったように戻るセイヤさん。なんなんだ。

 

ヤンキーこわい」のコールアンドレスポンスとともに、セイヤさんは観客の上に乗って中央へ歩を進めていく。キュウソ慣れしていないフレデリックのファンを慮ってか、そろそろと歩く。

 

客席の中央、天井に吊り下げられたミラーボールのところへ届く。キュウソとフレデリックのファンに文字通り支えられ、セイヤさんはミラーボールに片手をかざしながらレスポンスを求めた。ミラーボールの下、観客の上、セイヤさんのもとへ一極集中する歌声。誰のファンとか関係なく垣根を越えてひとつになってるこの感じ、じんときた。

 

 

『ハッピーポンコツ』。「友達だけれど保護者みたいな "お前ら" に恵まれ」と歌詞を変えて歌う。汗でぐちゃぐちゃの前髪もシャツも、モッシュも何もかもまるで気にならなくて、いま今年で1番楽しいなって心から思えた。「あなたのおかげで楽しい」。「ハッピーポンコツトゥーザワールド」で拳を上げれば、多幸感にまみれて泣きそうだった。

 

 

楽しくて、幸せで、カンストしきっているところにヨコタさんが「君たちはフレデリックを信じてついてけば大丈夫だから」と叫んでくれてさらに涙腺がゆるんだ。後輩には負けねえって吼えたっていい立場なのに、自分たちのことは二の次で。なんて優しい先輩なんだろう。

 

 

そこからのラスト曲『The band』は、涙腺を壊しにかかってきたとしか思えなかった。ずるい。カッコ良くてずるい。前に武さんも好きだと言っていたこの曲、本当に歌詞が良い。

 

染み付いたイメージは中々拭い去れず 少し逸れただけでも昔を求められる そこで意地を張るのか 流行に乗り換えるか」。6年前のエピソードを聞いたあとに聴くと、沁み方が尋常じゃなかった。

 

やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね」って、ライブハウスという大好きな場所で、大好きなロックバンドが歌っているのを生で聴ける感動。「リアルタイムで出会えたから ライブが見れるの最高だね」。

 

キュウソにもフレデリックにも出会えて良かったな、仙台まで来られていろんな人とも出会えて良かったなあって、笑いながら泣きたくなるような幸福感に、ぐしゃぐしゃの頭のてっぺんからスニーカーの爪先まで満たされていた。ほっぺたが痛くなるほど笑って、泣きそうになって、手を振って踊って飛び跳ねて、心の底から幸せだった。すごく、幸せだった。

 

全力でやり切ったのか、最後の最後、セイヤさんの弦が切れて飛び出していた。

 

大団円、という感じにキュウソネコカミのステージは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

本当に、今年イチってぐらい最高に楽しくて、いくら大好きなフレデリックといえどこれを越えられるのだろうかと思った。舐めてるわけじゃないけど、これを越える幸福感なんて想像もつかない。

 

でもきっと、この120%のライブを150%で呑み込んでしまえる自信も実力も、いまのフレデリックにはあるんだろう。生ぬるい馴れ合いで海が燃えるわけなんてないのだ。ありえないことをステージ上で形にしてしまうのが、今日、この夜なんでしょ?

 

 

 

次回、後編に続きます。

 

 

 

 

トウメイニンゲン

トウメイニンゲン

1音下げてのカバー。セイヤさん「健司声高けぇ!」

 

The band

The band

「誰かと幸せになったって」のとこでヨコタさんが結婚指輪見せびらかすくだり大好き

 

(後編→UMIMOYASU in 仙台 ~後編~ - あおいろ濃縮還元

 

 

 

果肉

果肉という言葉の響き、なんだか艶っぽいなあと、苺がふんだんに入ったアイスを食べながら思う。ところでアイスって最初は美味しくて有難いけど、中盤からもうただ平らげる作業として無心で口に運んでしまうというか、早々に賢者タイム来ないですか。しょうもないことしか言ってないのは風邪のせいってことで大目に見てもらえないですか。

 

猫みたいだね、とじっと目を見て言われたそれだけのことを、溶けた飴玉を舐め転がすように反芻している。黒猫みたいって何度となく言われてきた。自分でもそう思うし。私が黒い服ばかり着ているせいか、黒髪のせいか、切れ長の目元なのか、それこそ猫のような性格のせいなのか、きっと全部なんだろう。この人よく私のことわかってんなと思うし、何もわかってないなあともどっちも思う。本当に全て預けきった大好きな人間には馬鹿な犬よろしく尻尾を振ってしまうこと、知らないんでしょう。いいよ、知らないままがいいよ。なんて言わないで、そうでしょよく言われるって笑ってた。知らないほうが乙なこともあるのだ、私が好きな人間にしか優しく/厳しくしないこととか。だから私のことを優しい/厳しいともしあなたが思っているのなら、それは。

 

 

 

哀しみロック

哀しみロック

  • マカロニえんぴつ
  • ロック
  • ¥200

これ引用する箇所は選べないんだけど、めちゃいい感じのとこ切り取れたので聴いて

 

水平

男女の友情は成立すると私は思っているが、成り立たない派の人がたぶん圧倒的に多い。だとすると最適解は「男女の友情は、成り立つと思っている人たちの間でのみ成立しうる」である、というのが私の持論だ。私がよく遊んでいるグループは男女混合だけれど、奇跡みたいなバランスで友情が成り立っている。媚びまくる女も、変な下心のある男もいないからこそ色恋沙汰もなく友達でいられているのだと思う。健全すぎて不健全なのではないかと思うこともあるけれど、私はこの非常に令和的な調和を愛している(不本意に韻を踏んでしまった)。性別も年齢も関係なく、ただ人間として好きだから友達でいるという理想形のような関係は、理解されなくたってだって現に成立してるんだからしょうがない。ただ、もし、誰かが少しでもバランスを崩してしまえばたやすく壊れることにも薄々気づいている。もしも誰かの針が振れてしまったらこんな、駅のベンチで震えながら始発を待つような関係には戻れないんだろうな。どうかこのまま、ずっと今のまま、水平線のまま。